第5話、金髪縦ロールの名前を知った。
次の日、俺こと、市倉優希は、いつもと同じ時間に起きる事に成功した。と言うか……目覚まし時計のセットした時刻に起きたんだから、これで起きられなかったら、目覚まし時計の意味がないしな? まあ……学校があるし、遅刻とか嫌だしな……今日もというか、あと六日間は、姉貴がいないので、姉貴の代役で、今日もメイド喫茶にいかなきゃならね~んだよな……
ああ……憂鬱だ……本当に憂鬱である。
姉貴の代役。直ぐに辞めたいんだがな……?
そう思いながら、着てる服を脱いで、学校の制服に着替えた。着替えが終わり、リビングに行くと
「あ、優希、朝食出来てるわよ」
そう言ったのが、俺の母親で、親父は、じ~っと新聞を読んでいた。うん、俺が姉貴の代わりをしている事を、この両親は気がついていないみたいなので、そこはちょっと安心した。
俺は、椅子に座り、今日の朝食を取る。
今日は、味付け海苔に目玉焼きに納豆だった。
俺の好物でもあったので、あっという間に食べ終わり、学校指定の鞄を持って、家を出る。
今日の天気は、どんよりとして曇っていて、涼しげな風が吹いていた。通学路を歩いて、通っている高校辿り着く。自分のクラスの中に入り、自分の席に着いて、ぼ~としていると
「よう、優希」
そう話してきたのは、俺の悪友でもある、真吾だった。
「おはよう、真吾」
「優希、今日暇か?」
「何でそんな事聞くんだ?」
「いやな……一緒に遊びにいこうと思ってな? で、暇なのか?」
そう言ってきたので、俺は了承しようとしたが、今日も姉貴の代役として、お店にいかなきゃいかんので
「すまん、実は暇じゃない」
俺がそう言うと
「そっか……じゃ、いいや、また誘うぜ」
あっさりと引き下がっていった。もうちょっと誘ってくれてもいいんじゃないか? と思ったが、まあ、いっか……と思い、授業を受ける事にした。授業内容は、比較的というか、結構簡単で、ま、黒板の文字をノートに書き写すだけでOkじゃね? と思ったので、その作業を実行、あっという間に時間が過ぎていき、放課後になった。俺は、一度、家に戻って、鞄やら制服を脱いで、私服に着替える。
もし、この制服のまま、お店に行ったら、男だって丸わかりだったからだった。
私服に着替え終わり、外に出ようとすると、母親が
「あら、出かけるの?って、優希よね……?」
っげ、母親が怪しんでいる。
まあ、今の俺の格好が、ウィッグを装着して、姉貴みたいな感じになってるしな?
俺は、とっさに姉貴の声で
「私、一旦忘れ物したから、戻ってきたの、じゃあ、お母さん、行って来ます」
「忘れ物……? 一体何を忘れたの?」
「えっと、必要な物をね? とりあえず、それは持ったから、じゃあ、行って来ます」
母親にこれ以上追及されると、ボロが出そうなので、素早く外に出る事にした。
うん、これで大丈夫だろうか……大丈夫だと思いたいぜ……俺は、そう思いながら、メイド喫茶、マイ・ドリームに辿り着く。
今日も、姉貴として、頑張るかな……と思って、お店の中に入り仕事をする事にした。
男の俺がメイド服って、癖になったら嫌だな……ほんと。しかも今の姿って、姉貴にそっくりだから、男に見えないのだと思われる。
更衣室に入り、ロッカーを開けて、メイド服に着える。着替え終わった後、鏡で身だしなみをチェックする。鏡に写りこんでいるのは、メイド服を着た俺の姿で、正確には、ウィッグを付けているので、姉の市倉由紀にそっくりというか、瓜二つだった。
「はっきり言って、姉貴ってかわいいと言うより、カッコイイ感じなんだな?」
そう呟いてから、姉の声に似せるように、発生練習する。
「あ~あ、こんな感じかな?」
出した声は、姉の声にそっくりになった。
男言葉にならないように、気をつけて話す事にするか……そう心に決めて、ホールに出る事にした。ホールに出ると、結構な数のお客がいる。しかも、全て男で、店員に対して「萌え~」とか言っている危ない奴等もいた。
俺って、こいつらと同類なんか? なんか嫌だな……と、内心思いながら、接客する事にした。
「ユキちゃん~」
そう言われたので、そのお客の所に言って、こう言う。
「ご注文は何でしょうか?」
「じゃあ、ユキちゃんで」
うわ、キモ……素でそんな事言うなよ!
全身に鳥肌が立ってしまうぞ!?
「あの……私のご注文は、承っておりませんので」
「本当にだめ? 仕事終わったらさ? 遊びにいかない? 俺、何所でも連れてくよ? 金ならあるしさ~?」
なんか俺の事をナンパしてきた。じゃあ……
ここは、ちょっと不可能な事を言って見るか。
「じゃあ、海外でもですか?」
冗談混じりで聞いてみると、男は
「か、海外……分かった、何とかするから、何所がいいかな? 色々と手続きやら必要になって来るしね」
うわ、目がマジだ! マジで何とかしそうだぞ、こいつ……
「じょ、冗談です……本気にしないでください」
「そう、よかった。ちょっとやばい事に手を染めなくちゃならなかったからね?」
これ以上いるのはなんか嫌だったので
「あの、ご注文は? 私以外で」
「君をほしかったけど……じゃあ、これで」
そう言って、メニューを指差したので
「かしこまりました、少々お待ちください」
この客にそう言ってから、その場から離れる事にした。うん、品物は他の人に持って行って貰おうっと……この客を相手にしていると、なんか……身の危険を感じるしな?そんな感じに仕事をしてきて、時間が過ぎて、ロリ少女っぽい外見の店長が「ユキちゃん~あがっていいよ~ん」と言ってきたので、上がらせて貰う事にした。うん、本当にこの人、店長に見えない……
少なくとも中学生? いや、小学生に見えるしな……そう思いながら更衣室に入ると
「あ、ユキ」
そこにいたのは、下着姿の金髪縦ロールだった。うん……はっきり言ってこの状況、不味いのではないだろうか?
「ご、ごめん」
そう言って外に出ようとすると
「どうしたんですの? 別に謝る事はないと思うんですけど?」
そうは言っても目のやり場が……この金髪縦ロールは、俺の事を女だと思ってると思うしな?
けど、俺は男だから、これがバレたら非常に不味い状況だと言う事が解った。
俺は、なるべく縦ロールの方を見ない事にして、着替える事にした。すばやく私服に着替えて、外に出ようとすると
「あ、お姉さま~」
更衣室の中に入ってきたのは、黒髪のショートカットの萌だった。
「お姉さま、一緒に帰りましょう? 待っててくれます?」
そう言ってメイド服を脱いでいた。ちなみに……鮮やかな水色の下着だった。
っと、ジロジロと見てると、不審がられるな……と思ったので
「ごめん、用事があるから、じゃ、じゃあ」
「あ~ん、待って下さい~お姉さま~」
萌がそんな事を言っていたが、無視する事にした。更衣室から出た後、店長に
「……ユキちゃん、どっちがタイプ?」
とか言われた。は? 何言ってんだ? このロリ幼女は?
「どっちがって何が……」
「巨乳のカレンちゃんと、貧乳の萌ちゃんの事よ~」
あの金髪縦ロール、カレンと言うのか……初めて、名前知ったな……
それより、それって俺が答えていいのか?って感じなのだが……
「あの、店長は私の事、知っててそう言ってるんですか?」
「うん、あ、控室に入って、カレンちゃんと萌ちゃんの下着姿を見た事に関しては、私は何も言わないよ? あ、でも襲っちゃ駄目だからね? あ、でも……襲われそうなのは貴方かもね? 少なくとも、ユキちゃんの事好きっぽいし、あの二人」
「は、はあ……あの」
「何~?」
「もう帰っていいですか? 疲れたので」
「ええ、いいよぅ~、明日もよろしくね? 優希君」
「了解……」
そう言ってから、俺は帰る事にした。
あの二人のどっちが好みって言われてもな……
見た目に関しては萌の方が好みなのだが、どうもガチ百合っぽいしなあ……
姉貴も大変だな……と思いながら、家に帰る事にしたのであった。
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