お湯屋番のバイト
浴場までの廊下の奥にある扉をくぐり、ロッカールームとは少し違う狭い小部屋へと入る。ここはお風呂関連の備品と、お湯の温度管理するバイトが使う二脚のパイプ椅子と一台の長机が置いてあるほぼ物置部屋。
今日の仕事のために、まず眼鏡の曇り止めを
眼鏡をかけなおしたところに、今日の相方がやってきた。
「おはよーさん。今日は外国のツアーないんだってさ」
「あら、じゃあ温度管理と軽めの掃除だけかいね?」
「何も無ければ。天気も良かったから、測るのも難しくないね」
外国さん達が来たら、仕事が増える。文化の違いで、ツアーで来る人たちは大体バスタオルを巻いたまま入ろうとしたり、携帯電話を持ち込んで撮影しようとしたりするから。靴を脱がせたり、バスタオル脱いでもらったり、携帯電話取り上げたり・・・・・・温度管理の時間が若干前後する。
今日は国内ツアーと個人のお客さんだけのようで、温度管理と洗面台周りの掃除中心の予想。個人の外国さん達は、温泉のために来日するような人が多いため、注意することもなく日本人のように自然と温泉に入ってくれるからこちらにとってもありがたい。折角お風呂に来てるのに、嫌な思いさせるのも、させられるのも嫌だからね。
温度計と計測用の紙、鉛筆を二つずつ出して、今日の日付を
書き終えたところに、準備ができた相方が弁当箱を広げた。
「今朝入ってた別の仕事が大変でね・・・・・・お昼が今になっちまったよ」
「おや、そっちの仕事は繁忙期かい?」
「いいや、ただの納期遅れの発注が増えただけさ。全くもう・・・・・・」
ぷりぷり怒る相方も、話を聞く私ももういい歳だが、怒る相方がなんだか可愛く見えてクスクス笑ってしまった。
今日はゆっくりと温度の管理ができそうだ。
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