仕事一筋バイトちゃん

 終バスに間に合いそうにないと思ったところに、浴場から出てきたバイト仲間。彼は確か車で来てた。同じ方向だし、乗せてもらえないかなって思い、お願いしたが――まさかそれだけのことで、赤面する羽目はめになるとは思わなかった。まだそれだけなら良かったんだけどね・・・・・・。


 家の前で降ろしてくれたんだけど、また腕をつかまれた。痛いわけではない。



「あ、の、進藤さん。その、今はバイトで一生懸命かもしれないけど・・・・・・俺の事、ただのバイト仲間じゃなくて、少しは男として・・・・・・見てくれないかな」



 すごい真っ赤な顔して言うもんだから、思わず見つめてしまった。はたから見たらバイトに一生懸命な彼に、そんな告白・・・・・・(だよね?)なんてされるとは思ってもみなかったから。


 彼は「じゃあ、また次のバイトで」と捨て台詞のように言って、真っ赤な顔のまま足速に車に乗り込み、帰っていった。



***


「お疲れ様です」

「おつかれー」



 正社員の人たちに挨拶をして、今日のバイトは終わった。シーズンオフだからお客様も少なく、バイトの人数が少なくても回った。彼も授業が夜まである日だったらしく、居なかった。そのおかげで、昨日のことはすっかり忘れていた・・・・・・お風呂に入るまでは。



「ねえ!昨日のドラマ見た?あのカッコいい俳優さん出てるやつ!」

叔母おばさん、また恋愛ドラマ見てたの?好きだよねー。私、刑事物の方が好きだから見てないわー」

「あら、ゆっこちゃん!恋愛はいくつになっても良いものよ?うちの旦那に出会った時なんてね・・・・・・」



 湯船に浸かりほっとしたところに、そんな話をする反対側で浸かっていたお客様達の声で、昨日のことを思い出してしまった。



(やばい・・・・・・今思うと、すごく恥ずかしい・・・・・・)



 帰ろうと掴まれた左腕、告白(?)された時に掴まれた左腕。同じ箇所が顔と共に真っ赤になってないかって言うほど、熱い。


 将来サービス業に就きたいから始めたバイトで、まさか起きると思ってなかったことに直面する。次シフトに入る時、どんな顔して接客すればいいのかわからなくなってきた・・・・・・。


 とりあえずのぼせる前に湯船を出て、着替えることにした。脱衣場に戻ると、憧れのフロントのお姉さんと時々レストランのお手伝いに来るパートさんが洗い場へ向かうところだった。



「顔赤いけど、大丈夫?のぼせた?」

「・・・・・・ちょっと熱すぎたみたいで・・・・・・」

「後でお水しっかり飲みなさいね?」



 心配そうな二人に大丈夫です、失礼しますと会釈えしゃくをして、そそくさ着替えに移った。思い出し赤面なんて、口が裂けても言いたくない。





 荷物を整理して、今日は時間に余裕があるので、ゆっくりと星空の中を歩いてバス停へと向かった・・・・・・無意識に左腕をさすりながら。

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