白を纏う者たちの後悔
最初にその場に片の膝を付いたのは、ルカだった。
それから白服を纏う騎士たちが、一斉にその場の床に跪いたのだ。
「オリヴィア殿。此度の件は、すべて我らの不徳の致すところです。長きに渡り苦しませることになりまして、本当に申し訳ありませんでした」
「「「「申し訳ありませんでした」」」
ルカに遅れて重なり響いた野太い男たちの声には、さすがのよく訓練してきたオリヴィアも固まった。
「あ、あの……」
「おい、ルカ。今すぐ辞めろ。妻を困らせるな。そういう誠意は無用だ」
ルカは顔を上げて、ぷぅっと頬を膨らませてみせた。
いや、いくつだ、お前は。とレオンは心の中で罵る。
隣に妻がいるからと、甘えた顔を見せるな。お前の妻ではないぞ。
レオンは鋭くルカを睨み付けた。
「そんなことを言うけれど。君だって奥さんには謝ってきたのだろう?」
「当然だ。土下座ならすでに数えられぬほどに済ませている」
「いや、それだって奥さんを困らせてきたんじゃ……」
「俺はいいのだ。とにかく、もう辞めろ。オリヴィアは聖剣院に何も思っていない」
それはそれで、心に来るものがあるルカであったが。
これにオリヴィアも同意して頷いた。
「お詫びをせねばならないのは、私の方です。伯爵家のことで皆様のお手を煩わせることになりまして、本当に申し訳ありません。私が何も出来なかったばかりに、皆様には多大なご迷惑をお掛けする運びとなりました。この通り、心よりお詫びいたします」
今度はオリヴィアが腰を折って頭を下げた。
すぐに、ここは皆様と同じく膝を付いた方がいいのでは?と考えたようだが。
オリヴィアのその場に座ろうとする動きを、レオンが腕を押さえ止めている。
「いやいやいや、オリヴィア嬢もやめてくれる?」
今度はルカが慌て出した。
この第三王子は、王子らしいことをしてこなかったせいか、気を抜くと本当に王子に見えない。
「さっきからころころと呼び方を変えるな。それ以前に俺の妻を名で呼ぶ許可は与えていないぞ」
「なんだい、レオン。細かいなぁ。悋気かい?結婚したばかりから器の小さいことをしていたら、すぐに愛想を尽かされて奥さんに捨てられてしまうかもしれないよ」
「なんだと!」
「捨てません!捨てられるとしたら、私の方です!」
急ぎ言ったオリヴィアに、この部屋にある全員の視線が集まった。
と思えば、すぐにその視線はレオンへと移る。
軽蔑の意を強く含んだ冷たい視線の集中に、今度はレオンが慌てた。
「何を勘違いしているのだ!俺がオリヴィアを捨てる日など来ない。そうだな、オリヴィア」
「あ、はい。あの、そういう意味ではなくて……ただ私が旦那様を捨てられる立場にはないと言いたかっただけなのです」
落ち込んでしゅんとしたオリヴィアにまた視線が集まると、レオンは吠えた。
「俺の妻をじろじろと見るな!それ以上見るならば、切り捨てるぞ!」
「レオン、それはないよ。聖剣院が物申す案件になる」
「うるさい。俺を捕えたいなら、そうすればいい!だが、そのときはオリヴィアも一緒だ」
「……もうめちゃくちゃだな」
「オリヴィア、もう邸に戻るとしよう。今日はよく頑張ったな」
「いえ。え?あの?」
「待った、待った。少しは話をさせてくれ。あぁ、皆は先に帰すから、僕一人ならいいだろう。ねぇ、奥さん?」
「何も良くないし、妻に同意を求めるな。お前なんぞを妻には近付けたくない」
「えー。聞いていた、奥さん?レオンはいつも僕にはこんな風に酷いことばかり言っている薄情な男でね」
「やめろ。オリヴィアに話し掛けるなと言っている!」
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