夏休み編

学校の人々との思い出

第49話 白雪姫と鬼の1日目

夏休み。

それは男子高校生にとって『彼女』の次にロマンがある言葉だろう。


今年はどこへ行こうか、何をしようか。

ショッピングエリアは基本的にいつでも営業中。

ちょっと帰省するのもありか?

必死に頑張れば走って海まで行く、なんてこともできるだろう。


また去年みたいに、ひたすらゲームして1日が終わってそれを毎日毎日繰り返す、で、時々学校主催のゼミ旅行に顔を出す、なんていう生活は送らないぞ、と心に誓って生活を始めるんだ。


俺は中学生時代マジモンの陰キャだった。

あれは正真正銘の低身長陰キャだ。

だから夏休み中に友達と遊ぼうなんてこと、考えたこともなかった。


だけど。


今俺の膝の上にいるのは!


「ねぇねぇ、ルークス、どうしてボクを膝の上に乗っけたいって言い出したの?」


なんと、同い年のドルチェくんです!


そして俺はここ半年で少しだけ身長が伸びた。

159しかなかった身長が164まで成長したのだ。

ふっふっふ……お陰でこうやって小さなドルチェを抱え込んだ状態でゴロゴロ転がることができる。


「おぅ……おぅ……おぅ……転がされる……」


俺の部屋のグリーンのカーペットの上で、俺とドルチェは転がっていた。


「ボクたち随分仲良くなったね」

「そうだな。最初は俺のこと、廊下の隅から見てたもんな」

「最初はね。ちょっと怖かった。でも、一緒に学校行ったりしてるうちに慣れた」

「いやぁ俺は怖くないよ? だってやっぱドルチェは命の恩人だもんな。仲良くしたいもん」

「んふふ……そうか……じゃあボクたち、友達だね」

「そうだな」


……幸せなもんだな。

やっぱり、一回変身した姿は見たことあるけど、こいつが鬼の子には見えないんだよな。

普通に可愛いし。


こうして二人でゴロゴロしていたら、俺のスマホに通知が来た。

やっぱ嫌いだこのローテク機材。


俺はドルチェの前にスマホを持ってきて送られてきた文を読んだ。


『LENT:二人とも、今日から夏休みだが、予定は決まっているか? 私は遊園地に遊びに行きたいと思っているんだ。父の運営する会社の子会社が持っている遊園地だ。しかしその……一人でいくというのは寂しいだろう? 二人も一緒に来てくれないだろうか? もちろん、他の友達も誘って構わない。二人には氷室くんという友達もいただろう? 会長だからな。知っているぞ。よければ来て欲しい。よろしく頼む』


おぉ……レント先輩から見事な長文メール……

友達誘ったことないんだろうな……


「……やっぱりまだボク読めない。なんて書いてあるの?」

「うーんと……レント先輩から」

「レント……?」

「簡単に言うと、遊園地に一緒に行こうっていうお誘いのメールだよ」

「……天竹さんに聞いてみないと。行ってもいいかな」

「そうだな。確認しような」


俺はドルチェの頭に顎を乗っけた。


ちなみにユータは快諾だった。


『Himuro:遊園地⁉︎ 行こうじゃないか! 最近お前構ってくれなかったから、僕は孤独を極めてたんだぞ!』


ってね。


サクヤさんは……


「遊園地なら大丈夫じゃないですか? 人は多いですけど、しっかりと安全は確保されてる施設ですし、それに一度行ってみたらきっと楽しいんじゃないかと思います! いってらっしゃい!」


と、ドルチェにお小遣いまで渡してくれた。



ではいざ、遊園地まで!

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