第47話 【番外編6】5人の家路
そんなこんなで日がくれ、彼らは家路についた。
「じゃ、また明日」
「ちゃんと買ったお菓子食い切れよ」
「言われなくてもそうするわ」
「宿題終わらせてから学校来いよ」
「えー、写させてくれないの?」
「お断りだ」
ティミーとフォンスは西へ。
ナーサ、トレーネ、アムールは東へ。
ここで家の方向が分かれた。
「ねぇ、今日ティミーが買ったグミ、もしかして妹に?」
「そう。あいつ好きだから」
「エイミーか。元気にしてる?」
「ちょっと病気がちだけど、昔と比べたら元気だよ。最近は塗り絵が好きらしい」
「そうかそうか」
西に向かった2人は、隣り合った家に向かって歩く。
ティミーには、先の会話の通り、病気がちな妹がいる。
小さい時は月に一回は熱を出していたし、何度も入院と退院を繰り返していた。
それに、今も入院している。
そのせいで、母にも父にも、甘えることはできない。
けれど、妹を妬ましく思うことはなかった。
なんなら、お菓子や花、絵、おもちゃ、面会の時に何を持っていっても目を輝かせて喜ぶ、そんな妹が大好きだった。
今日も、彼女は、そんな大好きな妹の元へ、次行くときのためにグミを買っていたのだ。
「あ、今日、帰った後、一緒にゲームしない?」
「トレーネに宿題やれって言われてたじゃん。お前、最近きた転校生並に頭悪いんだからちゃんとやっといた方がいいよ」
「それはティミーも同じだろ」
そして、ティミーは楽々浦の表札がある一軒家に、フォンスは橘花の表札がある一軒家に。
結局、2人は家に帰ってからも、遊んでいたらしい。
そして、東に向かった3人。
「アム、お前本当に味覚バグってるんだな」
「まぁね。でも、今日、もしハズレ食べてたんなら末期だよ。全く味感じなかったもん」
「え、じゃあ、普段食べてるご飯の味とかわからないの?」
「そう、だね。強いやつはわかるけど、普段のはわかんない」
「……ガチか」
「心配しないで。味は感じなくても栄養は取れてるから。それに、ご飯食べるのもめんどくさいから、味を感じたくて無駄に調味料かけるとかもしてないし」
「……いや心配だよ」
「あ、でも、苦手な味とかがないから、好き嫌いないよ! だから今日のトレーネみたいになることもないし」
「恥ずかしいから言わないで」
「じゃ、俺はここで」
「また〜」
一番最初に離脱したのはナーサだった。
親に買い物を任されていたようで、家の近くのスーパーに寄ってから帰る。
「えっ……と、ミルクとパンと牛乳……これは牛乳2本ってことでいいのか?」
メールで渡されたメモを見て、首を傾げる。
ナーサの家は、周囲のS組の家と比べて、本当に一般的な家だ。
母と父、そして兄が1人。
平和な家。
ちょっと天然だけれど、家に帰れば温かい食事を用意している母。
いい成績を取れば、頭を撫でて褒めてくれる父。
ベタベタしてきて時々邪魔に感じるけれど、自分を気にかけてくれる兄。
恵まれた環境だなぁ、と、ナーサはつくづく思う。
だから、メモにわけがわからないことが書いてあっても、気を悪くするようなことはない。
「この感じだと、今日の夕飯はシチューか?」
そんなことを思いながら、ナーサは涼風家のドアを開けた。
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