第41話 鬼たちから見た話
じゃあ、僕たち鬼側から見た話をするね。
でも、これはボクが実際に聞いた話じゃなくて、捨てられた時に持たされたUSBに入ってた情報をサクヤさんに教えてもらったものだから、合ってるかはよくわからない。
まずは、第一次桃鬼大戦の話ね。
イザナミが死んじゃったあと、イザナギが黄泉の国に来てくれたの。
愛する人が来てくれて、本当に嬉しかったんだけど、イザナミは、今の自分はすっごく酷い見た目をしてるってわかってたから、ちょっと待っててって言ったのね?
でも、イザナギが無理矢理入ってきちゃったうえに、目があった瞬間に逃げ出されたから、もうブチギレちゃったわけ。
それで、イザナミは鬼と化け女たちに、イザナギを追いかけさせたの。
そこで、鬼たちは近くにあった桃の実を投げつけられちゃって、イザナギに逃げられちゃったんだ。
これが、
1人目の鬼は、イザナミ。
そのイザナミの産んだ鬼や
僕たち鬼にとって、人間は家畜と同じ。
人間が豚や牛を美味しく食べてるのと同じで、ボクらも人間を美味しく食べる。
温羅は、百済っていう国から来た鬼で、そりゃあもうデッカかったんだよね。
人間のことを食べるってことは、心が汚いんでしょ?
みんなから見れば。
だから、温羅の心はすごく汚かったから、悍ましい見た目になっちゃったんだろうね。
家畜を殺して肉を食べるのは当たり前のこと、でしょ?
だから、温羅は何が何だかよくわからないまま退治されちゃった。
これが第二次桃鬼大戦。
それで、第三次桃鬼大戦のことだよね。
最初の話はそこの桃太郎さんの話と同じ。
けどね、一つ文句が言いたいな。
こっち側から見ればね、あいつは気高くもなんともないよ。
苦しくないように皆殺しにして帰るのと、全員半殺しにして中途半端に痛いように殺すのだったら、どっちの方が苦しいと思う?
半殺しに決まってるじゃん。
鬼たちはしばらく後遺症で苦しんだんだ。
だから、桃太郎に復讐をしようとしたけど、敵わなかった。
でも、桃太郎が1人で都に旅に出たっていう話を1人の鬼が持ってきてね。
犬猿雉、誰もいないなら勝てるかもしれないって思ったらしい。
それで、鬼ヶ島で一番人間に近い見た目をしてた、青鬼の娘を桃太郎のところへ行かせたんだ。
彼を暗殺するために。
でも、その鬼の娘は第二次桃鬼大戦の後に生まれた子だったから、自分の親たちがどれだけ苦しんできたかとか、そんなことは知らなかった。
『決して桃太郎を許してはならない』って小さな頃から教え込まれてたけど、大人たちは理由を教えてくれなくて。
それで、何も知らずに桃太郎のもとへ行って、惚れちゃったらしい。
一回、娘が鬼ヶ島に1人の子供を連れて戻ってきたとき、鬼たちはその子供を殺そうとしたらしいけど、必死に守り通したんだって。
それが桃太郎との間に生まれた子供だったからね。
最悪だよ。
つまり僕にもあの悪魔の血が流れてるんだ。
まぁ、それはいいとしてね。
その娘は、親たちに迫害されて、桃太郎に助けを求めたんだって。
そしたら、あいつは味方をしてくれなかった。
『あの鬼どもと同じか』ってね。
それで、ご先祖様は、耐えかねて自害しちゃった。
でもやっぱり鬼っていうのは自分勝手な生き物だからね。
あれだけ迫害しておいて、死んだって聞いたら、桃太郎の一族に強力な呪いをかけちゃった。
それが『愛するものにその言葉を伝えれば、その相手が自害する呪い』……でしょ?
それに関しては悪かったね。
本当に。
これだから鬼は嫌いなんだ。
でも、どうかなぁ?
鬼たちだって酷いことしてきたんだろうけどさ。
愛もなく家を繋げてきたっていうのはちょっと酷くない?
それこそ鬼、だと思うけど。
僕らは人間になる努力をしてきたよ。
小さい頃の記憶であんまりよく覚えてないけど、お父さんにはまだ少し凶暴なところがあったと思う。
人を傷つけてはならないっていう家訓は意地でも守ってたみたいだけど。
僕らは攻められる存在だから昔の自分の行いを悔いながら生きてきたんだよ。
けどね、桃太郎は英雄として讃えられたから自分が何をしたのか知らないでしょ?
どれだけ僕らが苦しんだと思う?
戦争で勝った国の人殺しは英雄だけど、負けた国の人殺しは大罪人って前に聞いたことがある。
それと同じじゃない?
っていうかね、桃太郎がいなければボクたちはまだ鬼としてこの世界で生きて、普通に人間食べてたと思うよ。
だってそれが鬼の本質だからね。
君らが肉食べるのと同じだよ。
自分たちの行いを棚に上げてさ、自分が同じことされたらキレんの?
人間も大概自分勝手じゃない?
正直こっちから見ても許せないかなぁって言うのが、ボクの言い分、です。
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