第37話 青鬼の興味

「あ、ああああああ、ルークスくん⁉︎ それに編入生の……どうしたの⁉︎」


ということで、俺たちは部活動見学にやってきた。


まずは、アザミさんのいるテニス部。

教室から一番近かったのがテニスコートだからね。


「これが、野球?」

「ん〜、まずはそこから勉強だな」


ドルチェは見慣れないボールとラケットに興味津々なようだ。


「やってみる〜?」


知らない先輩がドルチェに話しかける。


「は、はい」


話しかけてきたのは少しガタイのいい先輩。

ドルチェは少し不安そうだ。


ただ、それも杞憂だったみたいで、結局すごく楽しそうにしてた。



「おー、いらっしゃい。まぁ、ゆっくりしていきなよ」


テニスコートの次に近いのは、茶道室。


アムールがお出迎えしてくれた。

いつもは少しボーイッシュな印象があるけど、こうして和服を着ていると、完全に女の子だ。


「お茶はいいよ。心が休まる。あ、そこに正座してもらって。すぐにお茶たてるから」


ドルチェがすっと正座をする。

多分これに関してはサクヤさんに教えられてるんだろうな。


「はい、正面から失礼いたします」


手際が良すぎる。

気づいたら出来上がってた。


「……初めて飲んだ。美味しい」

「いや、これに関しては俺も初めて」


「嬉しそうで何より」


アムは満面の笑みだ。




茶道室をあとにした俺たちが次に行ったのは……


「さっき別れたあとなのに、もう来たか」

「いらっしゃーい」


ユータのいる科学部。

ちなみにここにはナーサもいる。


「じゃあ……そうだな。せっかくだし派手なのやりたいだろ」

「ナーサ、片づけが面倒な実験はダメだからな」

「じゃあ、あれは? 忍者のやつ」

「あぁ! それがいい。2人とも、二分だけ待っててくれ」


こうして彼らが桶に水を張ったり謎の粉を入れたりしているのを見ることぴったり二分。

さすがユータ。


「ドルチェくん、裸足になってくれ」

「え……はい、これでいい?」

「はい、今から君は忍者だ。この水面を駆けることができる」


「「どういうこと?」」


「この上で、走ってみたまえ」


ドルチェが水面に乗って走ると……


「え、すごい! 濡れないし落ちない……!」

「これで君も忍者さ」




ちょっと面白い実験を見せてもらって、俺たちは科学部をあとにした。


「あ、君たちか。音楽室にようこそ」


次に行ったのはトレーネが2年のくせに部長をやってる吹奏楽部。


「僕がやってるのはこれ。トロンボーンっていうんだけど」


なんだか長い楽器が出てきた。


「他にもあるよ。フルートとかトランペットは知ってるんじゃないかな? マイナーなのだとそうだな……ユーフォニアムとかパーカッションとかかな」


段々と知らない言葉になってくる。


「ルークス……ボク全部わかんない」


アルマさんのことは好きみたいだけど、楽器にはあんまり興味がなかったみたいで、俺たちは最速で音楽室から去った。





「ん〜……他にも色々あるよ。ティミーのバレーボール部に、フォンスのEスポーツ研究会……他にもまぁ、俺の縁が狭いだけで、クラスメイトはいっぱいいるし、他の部活とか行ってみる?」


俺たちは廊下で話していた。


「そうだなぁ……あ、これ、なんて読むの?」

「どれどれ? これはね、剣道部。剣道って言ってもフェンシングとかスポーツチャンバラとかもあるよ」

「……ちょっと気になるかも。何かあったとき護身できそうだし」


「じゃあ行ってみるか」



こうしてやってきたのは和式武道場。

剣道以外にも、柔道や空手なんかもやってる。

和風の武道はここでやってるみたいだな。


「面ッ!」「押忍!」


聞こえてくる声がカッコいい。


小学生のとき以来の雰囲気に、俺はちょっと楽しくなってきた。



「ドルチェ、どうだ?」


俺は、ドルチェに話しかけ……られなかった。




横を向いたら、あいつがいない。


「悪鬼……貴様……何をしにここに来た?」


そんな声がして、そちらの方に目をやると。


武道場の隅で、ドルチェが竹刀を首元に突きつけられていた。

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