第43話 桃太郎の長い話……?

レント先輩と出会ったあの日から、一週間ぐらい経った。

時々廊下で見かけたら、挨拶したりしてる。


ちなみに、なんだかんだ言って、先輩はドルチェとは仲良くしてるみたいで、時々電話してたりする。


昔のこととか、あいつは聞いたんだろうな。


アマネさん……だったっけな。

どんな人だったんだろうなぁ……


窓の外で揺れる、ニセモノの彼岸花。

誰も乗ってないのに動きっぱなしのロープウェイ。


「ルークス、集会だ。ホール行くぞ」

「あユータ、ごめん」


ボケーッと窓の外を眺めていた俺は、ユータのあとをついていく。


「廊下は喋らなーい! 黙動! 静かに移動!」


相変わらず声のデカいクソ教頭。


「何故、彼は全く同じ意味の言葉を幾つも並べているんだろうか。『粛に』とだけ言えばいいだろう」

「その方がわかんねぇよ」


相変わらず言葉の無駄に頭のいいユータ。


「…………」


相変わらずあんまり喋れないドルチェ。


……本当だったら、ティミーの後ろ辺りに、相変わらず可愛いサティが、並んでいてもいいとは思うんだけどな。



……まだそんなこと考えてんのか。

俺は、自分の右方に、ビンタを食らわせた。





「規則正しく、しっかりと夏休みを過ごすように」


今日で1学期が終わって、夏休みに入る。

その分集会が長くてかなりめんどくさい。


あのクソ教頭の長話聞くぐらいだったらユータのクソ難しい話を聞いてる方が面白い気がする。

『そーたいせーりろん』だの『たいへーてんごくのらん』だの、知らん言葉ばっかりだが、こっちの方がまだマシだ。


「続いて、生徒会長の話、生徒会長、お願いします」

「はい」


壇上に上がっていくのは、一つに束ねた黒髪が綺麗な、背の高い男の人。



……知った顔だ。知った声だ。


時々見かけるあの人だ。


「皆さんこんにちは。生徒会長の山桜桃です」


「「⁉︎」」


前の方にいるドルチェも目を見開いている。


「皆さんは、1学期の間、校則について考えたことはありませんか? 私は……」


あんまりびっくりしたもんだから、話の内容はあんまり頭に入ってこなかった。

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