苦労人編
第27話 白雪姫は苦労人(前編)
退院してから2日経った。
最近の医療はすごく進化してるって話、知ってるか?
欠損箇所復旧手術っていうのがあってね。
ちょっと特殊な技術を使えば、俺が負ったぐらいの大怪我なら、3日でその箇所を復旧できる。
しかも俺は小さい時から怪我してきた人間だから、かなり丈夫になってる。
そのおかげで、俺はすぐに復学できた。
ただ、死にかけで跳び箱に詰まってたっていうのは明らかにおかしいだろ?
でも、サティの話なんてできっこない。
だから、学校側に事情が説明できなかったから、他校生徒の間で喧嘩したっていう言い訳をして、停学処分をくらった。
相当久々な学校だ。
俺はS組の自動ドアを通る。
「ル・ー・ク・ス! 久しぶり」
「ひェッ⁉︎」
後ろからユータが飛びついてきた。
ビックリすると変な悲鳴をあげてしまうのは俺の悪い癖だ。
「なんだよ! いつもはこういうことしてる奴ら見て『こんな遊びお香のサイトだ〜』みたいなこと言ってるじゃん!」
「僕はお香のサイトなんていう馬鹿っぽいことは言ってないからな。『あんな遊びは
「そんなこと言われたってもっとよくわかんねぇよ!」
ったくこいつは人が一応は真剣に悩んでたってのに……
「で、何? ご用件は?」
「いや……なんかちょっと前に心理学の勉強始めたんだけど……」
「それがなんなんだよ? 難しい学術書の話なら理解する脳はあいにく持ち合わせてないんだけど。お前だってわかってんだろ?」
「わかってるよ。だから今日は違う話をしにきたんじゃないか」
「は?」
こいつが勉強とアザミさん以外の話を……?
あ、よく考えたらいつもしてたっけ。話の面積が少ないだけで。
「参考書曰く、今のお前なんか、負の感情が渦巻いてる、みたいな、そんな感じっぽかったから、こうしたら元気が湧いてくるかと思って」
「え……」
……こいつは……いつもいつも
イラつくやつには正解でも嫌な言葉で返してやる。
「まぁ、それに近いかな? 間違いじゃないけど、オマケで⚪︎にしてやるよ。」
俺が笑顔でそう言うと、ユータは一瞬にやけた顔になってから作ったキレ顔で
「んだと⁉︎ お前は……やっぱ馬鹿だから、その頭じゃ人が心配してやってるっていうのはわかんないみたいだなぁおい可哀想でちゅね〜凡人が」
こう言い放った。
それからしばらくたって、昼休みになったときだ。
「あっああああの⁉︎ ルークスくん?」
めちゃめちゃ緊張した様子でアザミさんが話しかけてきた。
後には何名かの女子がおり、その中の一名に背中を押されてる。
「ぅあ! あの! お弁当、いいいいいいっしょに食べませんか⁉︎」
……なるほど、なんとなくシチュエーションはわかったかもしれない。
好きな人カミングアウトした瞬間にその人のところに押し出す系の人間がアザミさんを引き摺ってきたわけか。
「うん、いいよ。ただ……」
俺は後ろの席を振り返った。
前の席の人が呆然としているのはわかっていたが、クラス中の人間がこちらを見ている。
なんならみんなで飼ってる亀でさえもこっちを向いてる気がする。
人目は避けるに越したことはない。
俺はアザミさんの耳元で小さな声で言った。
「10分後、屋上でいいかな?」
「ううぇ⁉︎ いいいいいいいいいいね! そうしよう!」
「じゃ、ちょっと解散してからまた会おう!」
「はっ、はい!」
そう言ってアザミさんから離れた瞬間、ユータがあまり力のない拳で俺に殴りを入れてきた。
「おっっっっっっっ前……よくもあんな至近距離で……!」
「え?」
なるほど。
こいつは俺があの人に耳打ちしたのを見てキレてるのか。
弁当いっしょに食べることじゃなくて至近距離で話したことの方がこいつにとっては都合が悪いのかもしれない。
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