第23.5話 血濡れの道化師
「こちら赤倖美、白雪姫の子孫の殺傷に成功しました」
サティは、意識を失ったルークスを跳び箱の中に詰め込むと、持っていたバッグの中からレシーバーを取り出し、冷静な声で言った。
この時代、レシーバーなど使う人間はなかなかいない。
軍部で使われている通信機器は、盗聴防止の施されたとても高度なものだ。
しかし、それに対しての対策は少しずつ進められていたりする。
盗聴防止のため、わざとローテクな機械を使うのだ。
新しいものができれば、人間はそちらにしか目が向かなくなる。
ルークスの足の、貫通した部分には、太い血管が通っている。
これ以上血は見たくないと思ったのだろうか。
サティは、ルークスの左腕に血濡れたハサミを突き刺して、跳び箱に蓋をした。
ルークスは意識を失っているため、ハサミを刺されても反応しない。
「そうか……わかった。約半年のあいだ、ご苦労だった」
通信先の人物もまた、冷静な声で言う。
「いえいえ、あたしも、色々と勉強ができたので。特に、人心掌握術とか。前の白雪姫でも勉強してたんですが、まぁまぁ引っかかりませんでした。だけど、今回の白雪姫はまんまと引っかかりました。きっとチョロいっていうのは彼のことを指してるんでしょうね」
サティはルークスの入った跳び箱を軽く蹴りながら、得意げに語る。
「そうか、わたしはてっきり、女装の技術を上げたのかと思っていたよ。こうして通信をしている間も女性として話すくらいなんだから。そろそろ一人称も僕に戻していいんじゃないか?」
「あぁ、そうですね」
サティはそう言うと、頭に手を置いた。
茶髪のツインテールが頭から消え、その下から、美しく光り輝く、短い銀髪が現れ、綺麗に整った、少し幼さのある男性の顔が現れた。
「変装技術が上がるのはいいことだ。違和感のない女装も、組織内で君にしかできないことだから。これからも精進してもらおうか」
そう言った通信先は、声のトーンが少し上がっていた。
「まぁ、兎にも角にも、君は本部に戻ってゆっくりしたまえよ。もちろんその前にもう一働きしてもらうのだが」
「自分の存在を知らしめない……わかっていますよ。僕がこの学校にいた形跡、僕の存在を知る者の記憶、全て消してから帰れということですよね? その点は問題ありません。既に部下に手配済みです」
サティがそう言うと、通信先の人物が、ニヤリと笑ったのがわかった。
「さすが、『
「いえ、悲しいことに、赤ずきんの血が半分入ってますから」
そう。サティの父は『赤ずきん』の子孫、母は『アルセーヌ・ルパン』の子孫であり、サティはどちらの血も受け継いでいる。
そして、包丁よりも切れ味のいい、猟師のハサミを操る赤ずきんの能力と、いつでもなりたいと思った姿になれるルパンの能力の後継者なのである。
サティは最初、その変装能力の高さから『
「まぁ、その能力を駆使して学校から抜け、あとは部下に任せればいいだろう。ご苦労だった。わたしからは以上」
「了解」
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