ラプンツェルとの出会い編
第4話 生まれる疑問
『妙だなぁ……』
天竹サクヤは今、図書館の検索機器の前に立っていた。
とはいえ、時代が進んだため、図書館は、文化財とも言える昔の本を保存しておくための倉庫に過ぎない。
基本的に新しく出る物語は全てデジタルで完結しており、紙で出版されるのは、マニアのために準備された単行本ぐらいである。
しかも、デジタルの場合は、主人公の目線になって没入するVRムービーのようになっている物語も多い。
ただでさえ紙の書物の価値が上がっているというのに、50年ぶりに来た図書館は、以前来た時よりも書物が減っていた。
(おかしいな……時間が経ったら書物は増えるはずなのに。しかも減っているのは本物も偽物も含めて、全部童話ばかり。ルークスさんの言っていた話と同じ話が書いてある本も無くなってます)
サクヤは360年も生きているため、(無駄な)知識が多い。
そのため、ルークスに出会う前から白雪姫の真実を知っていた。
そのほかの物語の真実も、粗方承知済みである。
ちなみに、サクヤは『
そして、自分を日々襲ってくるのがその組織であることも。
しかし、一つだけ疑問に思っていることがある。
ルークスの能力についてだ。
何故ゼリーを出した時に、1人ずつしか小人が出てこなかったのだろうか。
昔読んだ本には、林檎を一口かじれば小人が7人現れると書いてあったし、その昔に出会った白雪姫の子孫はそうだった。
あのフルーツゼリーには、林檎、苺、マンゴーが入っており、話しながら林檎を目で追っていたが、一切れにつき1人の小人が出てきた。
何故だろう。
小人たちは、白雪姫の子孫を守っていくことに嫌気がさしたのだろうか。
ルークスが小人を呼ぶことに抵抗があるのか。
そんなことを考えている最中だった。
「なぁ……」
長い前髪で、片目の隠れた長身の青年が話しかけてきた。
濃い紫色のシャツの上に、白に近いほど薄い紫のワイシャツを羽織っている。
見たところ20代の美青年だ。
「どうされましたか?」
サクヤはいつも通りの笑顔で答えました。
「天竹サクヤって、あんたのことか?」
青年の質問を聞いても、サクヤの笑顔は揺らがなかった。
「はい、そうですが」
声色は、全く笑っていなかったが。
「よかった、言伝荘ってアパートの管理人、やってるよな?」
何故知っているんだろう。
その疑問に、サクヤの笑顔は一瞬で消えた。
わたしの私情を知っている。
その時点で、目の前のこの男は、
「よくご存知ですね。あなたのお名前は?」
「俺は塔ノ上っていう者で、入居希望者なんだけど……」
サクヤは笑顔だけを元に戻した。
心には、疑問が残っている。
入居希望者だからわたしの名前を知っていることは百歩譲って認めよう。
なぜ図書館にいることを知っているのだろうか。
「入居希望ですね! わかりました! じゃあ、手続きの方をさせていただくので、一緒に事務所までいらしてください」
サクヤの声は、体裁は良く、けれど近寄り難く感じるような声色だった。
「わかりました」
やはりこの人は
そんなことを考えつつ、背後を警戒しながら、塔ノ上と名乗るその男を案内しているうちに、言伝荘のすぐ隣にある事務所に着いた。
そこには、
こちらを笑顔で振り返り、ルークスは笑顔で言った。
「あっ、サクヤさん、お帰り! アルマさんも見つけたんですね」
他の人間に攻撃をしながら笑顔で言われても怖い。
「はい。あ、この方、塔ノ上アルマさんというんですか?」
「いや、ミドルネームがあって……塔ノ上アルマ=ヤンさんっていう人です」
ルークスがそう言うと、アルマは手を振って
「どうも」
と言った。
ルークスの口からフルネームが出てきたことで、サクヤはホッとした。
きっと、入居希望でやってきたアルマに、ルークスが大家さんは図書館にいると言ったのだろう。
そうして安心していると、ルークスがそばに寄ってきて、耳元でささやいてきた。
「実はあの人、ラプンツェルの子孫なんですよ」
「えっ⁉︎」
思っていたことと真逆のことをを言われ、サクヤは唖然とした。
しかし、また一つ疑問が生じた。
「どうしてアルマさんが子孫の人だってわかったんですか?」
「えっと、それはですね………」
ルークスは語り始めた。
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