第2話 白雪姫を守る者たち

さっき言った通り、俺は1人でも戦えるから、ほとんどの敵は能力を使わなくても倒せるんだけど……


「おっわッ! 真剣かよ⁉︎」

「貴様こそ素手で戦おうなどと、いい度胸をしているじゃないか」


時々、明らかに強そうな相手で、俺自身だけの力じゃ勝てないことがある。


そんなときに俺を守ってくれるのが、俺たち白雪姫の子孫が使える能力だ。


俺は箱からさっき買った林檎を取り出して、一口かじった。

わざと小さめのサイズを買ってある。


すると最初に現れたのは……


「どうしたってんだよッ!」


怒りん坊の赤小人。



–––––––白雪姫が恐ろしい森を抜けると、そこには7人の小人の住む家がありました。事情を聞いた赤、青、黄、水色、緑、桃色、紫の小人たちは、白雪姫のことを守ってあげると言うのです。



「ルークスをいじめるんじゃねぇッ!」


そう言って赤は爛々と燃える炎でできた剣を取り出した。


「ハイっ、これつかって、たたかっていいから!」


そう言って赤は消えていった。


いや……掴むところまで燃えてたら掴めないじゃん……


ええい、もう一口と俺はまた林檎をかじった。


すると現れるたのは……


「ひぇええ……こわいですぅ〜……」


泣き虫な水色小人。

俺は敵の斬撃を避けながら水色に話す。


「赤が残していった炎の剣が掴めないんだ! どうにかしてくれ!」


水色は涙目になりながら答える。


「そっ、それでこまってるんですね……? わかりました、わたしがなんとかします……!」


水色はたくさんの水を頭上に召喚すると、それを炎の剣に向かって放ち、鎮火させ、満足げな笑顔を浮かべて消えていった。


……おいおい………勘弁してくれって………


「得意の能力も空回りしているようだな!」


襲いかかってきたアイツが、また失礼なことを言う。


……もういいや、こいつイラつくし、完食しちゃおう。

そのための小さめ林檎なんだし。


俺は林檎を5回かじった。


すると現れたのは……


「アンタほんとひとりじゃダメね」

ツンデレな紫と


「なんてことするんだ!」

優しい桃色と


「だいじょうぶ⁉︎」

心配性の緑に


「わぁ! あぶないね!」

無邪気な黄色と


「ボクをおよびかな?」

自信家の青。


合計5人の小人だ。


『スチャッ』


敵は、殺気がヒートアップしてきたようで、とうとう銃まで使い始めた。


そいつの相手をしながら、俺は小人に語りかける。


「流石に俺と赤と水色じゃ倒せない! お前らが怪我をしない程度に援護してくれ!」


「「「「「りょうかい!」」」」」


返事と同時に紫は毒で敵を苦しめ始めた。

それでも敵は微動だにしない。


そして次に、黄色が敵の撃った弾丸を光の塊に変えて、敵の方向に返していく。


レーザーのようになったそれは、何発か敵に命中した。


「その程度で勝ったつもりか? 私はまだ戦えるぞ!」

「んなこたぁわかってるよ!」


言葉を交わしている間に青が俺を宙に浮かばせる。

そして緑が大木を作り出す。

俺がその木に蹴りを入れると、すぐにミシミシと音を立てながら倒れ、敵の頭に命中した。

脳天のカチ割れた敵は、見事に気絶したようだ。


「ごちそうさまでしたっ!」




小人がみんな、じゃあね〜と言いながら消えていく中、紫だけが残って俺に尋ねた。


「なんでアンタはいつも、さいしょからアタシたちをぜんいんよばないのよ? あぶないじゃない、いのちがけなんでしょ?」


俺は、さっきの蹴りの反動でまだ息切れが続いている中で答えた。


「だって君たちが危ないでしょ?怪我したら大変だし……」



このときの俺は、呑気にそんなことを言うので精一杯で、気がつけなかった。



「死ねェッッ!」



気絶したはずの敵が、後ろから襲ってきていることに。



そしてそんな俺を……



「全く物騒じゃないですか! 無防備な少年を後ろから狙うなんて、あなたにはプライドってものがないんですか?」


金色に光り輝く竹が守ってくれた。


「何者だ貴様は! 人類の夢を守る邪魔をするな!」

「人類の夢を守る……とっても素敵ですが、他に正しい守り方があるはずです。例えば……」


声を発していたのは、竹ではなかった。


「これから育まれる、この少年の人生という物語の邪魔をしない、とか」


今では本当に珍しい和服を着ている、藤色の髪をした、俺より少し身長が小さい女の子が、俺の前に降り立った。


「わたしの名前は『天竹あまたけサクヤ』! かぐや姫の子孫です!」

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