かぐや姫との出会い編

第1話 白雪姫は金欠高校生

 –––––––なんと、白雪姫は、王子様のキスで目を覚ましたのです!



いや、そんな話じゃねぇから。


昔からそう言ってるけど、原作を知らない馬鹿どもには、そんな言葉通用しない。

全く1930年代の人間は何を考えてたんだか。


王子のキスだって?

違う、違う。


毒林檎が喉に詰まって死にかけの白雪姫を嫌々運んでた王子の家臣が、『コイツ重いな』ってイライラして、白雪姫をぶん殴ったんだ。

そしたらビックリ!白雪姫の口からリンゴがポロリ!



……そんな、疑うような顔されたって……これが真実なんだよなぁ……


じゃあ、もっと教えてあげようか?


ラストのシーンは白雪姫の結婚式。

ただの幸せな式じゃないんだけどね。

そこには白雪姫を3度殺そうとした、女王もいた。


女王の前には真っ赤なハイヒールが用意されていた。


そして、そのハイヒールを履いた女王は、奇声を上げながら踊り始めたんだ。

その理由はハイヒールの素材にあったんだ。

ハイヒールの素材は、鉄。


さぁて問題。鉄をアツアツに熱したらどうなるでしょうか?


……ね?女王は真っ赤に熱された鉄のハイヒールを履いて、苦しんでたってだけ。


–––––––こんなこと知ってるのは、俺ら白雪姫の子孫だけだ。



あ、紹介が遅れたね。俺の名前は『白雪ルークス・フォンダン』。

名前から分かる通り、白雪姫の子孫だ。

このことを隠せば、日々金欠に悩ませられる、他の学生となんら変わりない高校生だ。


そして俺が金欠なのは、今、果物屋の前に立っているからだ。

そして、今から小遣いを全て使い果たすからだ。


「林檎一箱。」

「まいどっ!」


まいどって言うなら、ちょっと安くしてくれたっていいと思うんだよなぁ……


……あ、誤解すんなよ?

俺は林檎が好きすぎて小遣いを全て林檎に注ぎ込む食いしん坊ってわけじゃない。

林檎が嫌いってわけでもないんだけど……



俺が林檎を買うのには、れっきとした理由があるんだ。



「いたぞ!赤い目!黄のハイネックに青ベスト!女の子みたいな風体!おかっぱ頭の低身長!間違いない!白雪姫の末裔だ!」


あ、噂をすれば来たな理由!


「ホントのことだけど女の子みたいと低身長は余計だ!」


スーツ姿で仮面を被った失礼なこいつは、いつも俺のことを殺しにくる奴らのうちの一人だ。


で、なんでこんなことになってんのかっていうと……


なぜか俺は、いや、俺たち白雪姫の子孫は、いつも命を狙われる。

毎日がアニメの戦闘シーンなんだ。


そんな日々を生き抜くのはもーかなり散々だ。


けれど、俺たち白雪姫の子孫は、日々俺らのことを殺しにやってくる奴らに対抗するための能力を持ってる。

その能力を使うためのスイッチが林檎なんだ。


だから、俺が林檎を買うのには、殺されないためっていう、すごく重要な理由があるんだ。


ちなみにあいつらが襲ってくる理由は知らん。

まぁ理由はなんにせよ、とにかく、殺されちゃったら何もかも終わりだ。

だから、俺は能力に頼らなくても生きていけるように武術も習得したし、喧嘩も強くなった。


今も一応生命の危機で、丁度いい。

今から俺の能力、見せてやるよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る