最強の告白文句
@ajisawa-0410
第1話
とある高校、校舎裏。
夕方五時。
男女。
「あの、えっと……」
「はい」
「その、その……」
会話しているのはポニーテールの快活そうな女子生徒と、身長は170はあるであろうと思われる男子生徒。
「俺、実はあなたに言いたいことがあって……」
「うん」
「お、俺と、その、俺に……」
「俺に?」
「俺のために赤いきつねを毎夜作ってくれませんか!?」
「いや味噌汁じゃないんかい!!」
『俺ために味噌汁を毎朝作ってくれ』じゃないんだね!?
「あ、味噌汁は作るの大変なんでいいです」
「いや優しいんかい!亭主関白じゃないんだ!?」
この人のキャラが掴めない……!
「亭主関白で許される時代は終わりましたよ」
「うん現代にマッチしてて良い価値観だと思うよ!」
「あとあなたの家って合わせ味噌派ですよね。俺、赤味噌派なんで……」
「すごいどうでもいい!!」
「よくないですよ!誰が作っても同じ味になるのが大事なんですよ!」
「なるほど……?」
――――っていや、納得できるか!!
だめだ私惑わされたら!
「って待ってなんで私の家が合わせ味噌派って知ってるの?」
「…………」
…………。
…………通報するのが一番かな!
「そんなことはどうでもいいんですよ!『赤いきつね』を作ってくれれば俺は!」
だめだこの男。
「そもそも私『緑のたぬき』派だから。ごめん」
「だめだこいつ」
「お前に言われたかねぇわ!」
フゥ、と呆れたように嘆息する男。こいつ……!
「そもそもなんか料理できそうな見た目してんじゃんあんた」
「オタクじゃなさそうな優しい顔面した陰キャのこの全員料理できると思ってません??」
「ツッコミ所ありすぎて何処から言えばいいか分かんないから黙ってくれないかな?」
「俺料理できないんすよ……。そこで、家庭的そうなあなたに……」
「しっかり労働力として考えるじゃん。……そもそも私が家庭的に見える?」
「……」
スポーツ選手に間違えることはあっても、まさか家で「ウフフ、アナタおかえり(はーと)」なんて言うタイプには見えないと思うんだけど。
「――――え、家庭科部二年佐藤さんですよね?」
「え、テニス部二年佐藤ですけど」
…………え?
「もしかしてあんたが言ってる佐藤って、私の隣の席の佐藤さんじゃない?」
「えぇ……」
「あと佐藤さん彼氏いるから」
「…………」
あ、撃沈した。
「ま、まぁ元気出しなよ」
「ぐっ……、ま、まぁあなたが俺のために赤いきつねさえ作ってくれれば全ての問題が解決するんですよ!」
「何も解決しないやつ!赤いきつねをあんたが好きなのと作るのが簡単なのは分かった!けど!いつ私が自分でお湯を沸かせると言った!」
「は!?」
「言っとくけど、私はまっっっったく料理できないから!」
私がそう言い放つと、静かになる。
「お湯を沸かせるだけで作れる赤いきつねは、お湯を沸かさないと作れないの」
「…………せん」
「え?」
「あなたとはお付き合いできません!」
「こっちから願い下げだわ!!」
最強の告白文句 @ajisawa-0410
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます