第12話 お隣さんとの散歩

──あの母子とは仲良くしよう──


じゃあそうしよう。


「…またなんか言った?」

私は目を覚まして犬神様にそう訊いた。


「わん」

そんな事はどうでも良さそうに嬉しそうに吠えた。


朝の散歩に出るとお隣さんも出てきた。


「あ、ども」

私はぺこりと頭を下げる。


「ああ、先日は失礼をしまして…」

奥さんは恥ずかしそうに頭を下げた。そうだ誘ってみよう。


「もし良かったら一緒に犬の散歩に行きますか?」

夢の啓示だか何だかが後押ししてついそんな事を言ってみた。


「…よろしいのですか?」

奥さんは驚きつつも嬉しそうにそう言った。頷くといそいそと準備をした。


「ぼくもいく!」

男の子もそう言って元気よく出てきた。


「犬が好きなんですか?」

私はなんとなく訊いてみた、が。


「え、ええ」

どうもそうではないらしい。


「すいませんです…」

謝ってばっかりだなあこの奥さん。


「…実は、夫と別れたばっかりで…」

それでちょっと気分が塞いでまして、と言った。


「あら、こちらこそ失礼を」

別に聞いたわけじゃないんだけど意外な言葉にちょっと気まずくなった。


「あの、もし、で結構なのですが」

都合が合えばまたこうして一緒に散歩をしたいと言った。ええいいですよ。


「…本当に、不躾な話ばかりで申し訳ありません…」

奥さんは本当に申し訳なくそう頭を下げた。何か結構大変そうだった。


「いぬがみさまーまってー」

男の子は犬神様と一緒にぱたぱたと走って遊んでいた。

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