第13話 お隣さんの事情
結局お隣さんとはほぼ毎朝一緒に散歩に行くことになった。
「本当にいつもありがとうございます」
相変わらず申し訳なさそうにそういうお隣さんだった。
「止めましょうよそういうの」
私は笑いながら言った。
「なんでそんなに申し訳なさそうなんですか?」
私は逆に訊いてみた。そんなに離婚で傷ついたの?
「…実は、離婚したわけじゃないんです…」
その理由を聞いて私は驚いてしまった。
「あの半年前の通り魔事件で!?」
なんと旦那さんはそれで亡くなったとの事だった。
「…それで、なんだか、もう、訳がわからなくなって…」
そりゃあそうだろう。私は強く同情した。
「悲しんでる余裕もなかったのですが…」
それが犬神様のアホ面を見たら一気に緊張が解けてしまったらしい。
「ありゃまあ…」
何だか申し訳ないような、それで良かったような。
「あの日、本当に久々に夫の夢を見ました」
申し訳ないやら、痛ましいやら、でもやっと泣けたと言った。
「本当に、何とお礼を申し上げていいのか…」
そう言うと奥様はまたもさめざめと涙を流した。
「重ねて申し訳ありませんが、これからも宜しくお願いします…」
そう言って奥さんは頭を下げた。いえいえこちらこそ。
犬神様はやっぱり神様なのかな。あんなのでも一応。
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