二章③
各国の使者を
あれから毒の出所を探るため地道に聞き込みを続けたが、ついに進展と言える進展が何もないまま、使者を迎える日が来てしまった。
この数日で分かったことといえば、使用された毒の種類くらいだ。毒味役の女官の死体を
しかし犯人特定につながる情報はなく、
それでもなんとか明日には、毒味役死亡の件で
「では陛下、決まったお言葉だけをかけてくだされば問題ございませんので、くれぐれも失態はされませんよう」
耳に入ってきた言葉にそちらに目を向けると、憲征が小声で雪那に言い含めていた。
いよいよ使者との謁見が始まるらしい。わたしも気を取り直して、背筋を伸ばす。
謁見の間の
神子から五人分程度の空間を空けた反対側には重臣が、
玉座に座る雪那は、見るからに
雪那を見守りながら、わたしは
「恒月国の使者ご一行をお迎えいたします」
謁見の順番は、王の在位年数が長い順だ。
恒月国──現在存命中の王の中では、最も長い時代を築く王が統治する国だ。農業や漁業は
前世でわたしがお世話になり、一番
最後に見た恒月国の景色を思い出す。変化を好む『彼』の治める国だ、二百年も
不意に思い
どのみち、会いたいと望む資格なんてわたしにはない。
恒月国の使者一行が謁見の間に入り、雪那の
よく見えないが、服装は恒月国の高官の一人といったところか。使者の代表は先頭にいる者だが、一行の半ばにいるその人物からなぜか目が離せなくなる。俯いているため、茶色の髪くらいしか
顔を上げるようにという重臣の一人の声かけで、使者一行が全員
現れた瞳は、
紫苑だった。染めているのか
そしてほぼ同時に、無視できない存在に気づいた者がいた。
「……恒月国王?」
思わずといったように声をこぼしたのは、雪那の側で控えていた瑠黎だった。
瑠黎の声は、
「いえいえ、ここに王がいるはずがありません。この人は──」
「
紫苑の
「瑠黎、なかなか目がいいな」
この場の全員の注目を集めていることなどまるで意に
直後、場が
だが、きっとこの
「西燕国王、
進み出て来た紫苑が、玉座に向かって声をかけると、雪那がびくりと震える。
「恒月国王──」
雪那は何とか受け答えしようとしたが、言葉が
雪那が困ったようにわたしを見るのが分かる。そして、そんな雪那の視線を追って、強く
紫の目が
とっさに
次の使者が入室する前に、わたしは
今いる
「どう、して」
紫苑が息一つ切らさず、衣服も乱さず、立っていた。まずい、とわたしは無意識に
「どうして逃げる」
驚きと、
引き寄せられ、眼前に
「本当に、睡蓮なのか」
紫苑の目に
「恒月国王様ですね。どなたかと
表情筋
ごめんなさい、紫苑。今世ではあなたに関わる気はないの。それに、わたしはもう睡蓮じゃない。だからこそ、もう同じ立場で話すことはできない。
「な、にが間違いだ」
紫苑は、
「その顔、声。何よりも逸らすことを許さないその澄み
あまりにも真っ
「そう言われましても、わたしはあなた様とお会いしたことなどありませんので。どなたか、お知り合いと似ているのかもしれませんが、人違いではありませんか?」
他人の空似だと、
しかしどんなに
「人違い? 俺も死んだ人間が目の前に現れれば普段なら他人の空似だと考えるだろうな。だが、今、お前を前にして別人だとは欠片も思えない。どうしてそこまでして否定する、睡蓮」
──やめて、お願いだからその名前で呼ばないで。
紫苑に前世の名前で呼ばれる
わたしは花鈴。睡蓮は死んだ。紫苑とは関わらない。……揺らぐな、
「人違いです」
声を
瞬間、腕を
「……待って!」
神秘の力を使うつもりだ……! だが、わたしが
◆ ◆ ◆
続きは本編でお楽しみください。
千年王国の華 転生女王は二度目の生で恋い願う 久浪/角川ビーンズ文庫 @beans
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