第2話

 赤いキツネと緑のタヌキに関する噂の調査を報告会議概要は、以下の様なものだったらしい。


 (出席者)

 第三者機関。

 文科省。厚生省。経産省の各省の役人が、課長一名及び研修中の男女各二名の、計九名。

 もちろん発売元の東洋水産は、社長以下各カップ麺の開発責任者が一名ずつ。

 他に、女子に、力ずくで食べさせられた男子が、未だ登校拒否の高校の校長とその担任の教師。

 何故か、食中毒事件の会社社長も参加していたが、この件には関係なく、つまみ出された。

 

 第三者機関は、この二種のカップ麺を食べた後、初めて見た相手に好感持つという噂を否定した。


「この噂は、正確ではありません」

 

 この否定は、彼らが行った、検証実験。根拠とする。


(検証実験概要)


 参加メンバーは、高校生。

 髪サラサラの、美しい女子高生が、三名。

 目がクリクリのとっても可愛い女子高生が、三名。

 そうでもない女子高生が、四名。


 男子高校生が、十名。


 それぞれ男女各一名ずつをパーテーションで、区切った部屋で、赤いキツネ五組、緑のタヌキ五組に分かれ、同時に食べて貰った。


 結果、第一回目の実験で、八組のカップルが、成立。他二組は、一組が、男女共にセクシャルマイノリティーな方々だったようだ。もう一組の男女は、共に転入したばかりで、お互いの事をあまりよく知らなかった事が、障害になり、恋愛感情の発生を阻害したようだ


(過剰共感反応を起こす条件とトリガー)


 信頼関係が、既に出来ている事が、過剰な共感反応を引き起こす前提条件となる。


 トリガーになるものは、赤いキツネか、緑のタヌキを食べた後、もしくは、食事中、高い確率で言及される言語。


「美味しい」


 その一言が、トリガーになり、通常より強い共感が生まれ、恋愛感情と勘違いする。


(補足)


 ある程度の信頼関係にある場合、お互いの強い共感が、恋愛感情と、勘違いする。

 高校生の場合、男女間の友情関係を持つ可能性が高い。

 友情関係が成立している男女は、特に恋愛感情との入れ替わりが速い。


「トリガーについて、質問します。その言葉を使わなければ恋愛感情は、生まれないという事ですね。では、『美味しい』という言葉を発しない様に国民に周知徹底させれば、解決ですか?」


 厚生省の役人の言葉に、販売元の東洋水産の社長が、あわてた。


「待ってくれ、強力なライバルが多数存在する業界で、そんな制約を付けられれば、売れ行きに影響する」


 第三者機関は、両者を制した。







 






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る