闇に光を照らす者たち 前編
「キャー‼︎‼︎」
今日も、どこかで誰かの悲鳴が響き渡るこの時代。
「どうした?!?」
「さ、さっき、そこに不気味な男たちが迫ってきてっ・・!」男爵夫人は、前方を指差して、恐怖で怯えていた。
「不気味な、男たち?・・・」周りを見渡すも、誰か怪しい人物がいる様子はない。
「確かに、そ、そこにいたんです!」男爵夫人は、助けてくれた男性に嘘ではないと必死に伝える。
「いや、信じるぜ。」男が、男爵夫人に向かって優しく笑いかけると、夫人は、少し頬を赤らめる。
「ありがとうございます。助かりました。」夫人は、礼儀正しく謝辞をして、列車に乗り込んだ。
「おい、ハーヴィ。何、人妻を口説いてたんだ?」そこへ、タバコをいつも通り吸っているチャーリーがやってくる。
「は?!!口説いてねーよ!人助けだよ、人助け!!」ハーヴィは、弁解するが、チャーリーは全く聞いていない。
「どうなさいました?ハーヴィ、チャーリー。」チャーリーに続くように、エドワードとデイヴィッドがやってくる。
「いや、さっき夫人が誰か不気味な男たちに迫られたって悲鳴を上げたから、俺が助けただけだ。」ハーヴィは、さっきの一部始終を説明する。
「さっき読んでいた新聞に載っていたが、最近市民が謎の者たちに見境無く襲われているらしい。」デイヴィッドは、先ほど読んでいた新聞の記事を思い出しながら言った。
「見境無く、ですか。」エドワードは、考え込んでいた。
「どうするよ、エドワード。」ハーヴィは、確信の目をエドワードに向けるが、皆エドワードが考えていることが分かっていた。
「そうですね。今回も、罪のない市民達が誰かに襲われているとするならば、僕たちが動かざるを得ません。その誰かが組織とは無関係であるならば、警察にお任せするのでいいでしょう。しかし、組織の仕業であるならば、僕たちが鉄槌を下さなければなりませんね。」エドワードは、誰かが困っているならば、絶対に手を差し伸べ助ける、そんな人であった。彼は、昔から、誰よりも傷つく者たちの気持ちがよく分かる優しい人だった。
「そうと決まれば、チャーリー。ベンに一通電報を送ってくれ。帰るのが遅くなるとな。」デイヴィッドは、チャーリーに電報を送らせる。
「了解。じゃあ、この切符は要らねえな。」チャーリーはそう言って、帰りの切符をビリっと破る。
「久しぶりの平穏かと思いきや、またまた事件か。ま、それも悪くねえか。俺たちは、そうやって生きるんだからな。」ハーヴィは、不満を漏らしながらも、ニッと笑った。
そうして、エドワード達は、目の前に来た本来乗るべき帰りの列車を背にして、そこから立ち去る。彼らの今後の運命は、もしかしたらこの列車が分かれ道だったのかもしれない。
──────
とある倉庫にて。
「旦那!これで24人だぜ!」
「そうですか・・。24。」
「ああ!言われた通り24人集めた!だからよぉ、報酬はいつ・・」卑しい男は、鼻孔を少し膨らませながら話していたが、言葉は遮断される。
「うっ・・!!」
「私は、確か”25”だと申し上げたと思いますが?私は、切りの悪い数字が心底嫌いなのですよ。」旦那と呼ばれる男は、卑しい男の腹部をナイフで切りつけたのだ。
「でも、もう役者は揃いましたね。貴方が、25人目となってもらいましょうか!」
男の不敵に笑う声が、倉庫内に不吉に響いた。
────
「先日も、市民の一人が襲われたらしい。現場には、血痕の跡が残っていたみたいだが。」デイヴィッドは、いつも通り新聞を読んでいた。
「だけどよ、死体がないってことは、どっかに遺棄してんのか?普通犯人は、痕跡を残したくないのに、なんで血痕は放置しとくんだよ。」ハーヴィは、犯行の仕方について疑問を持っていた。
「血痕は残しておくのに、死体は隠す犯人・・。恐らく、事件は組織による犯行ですね。」エドワードは、少し考え込み断言する。
「同意見だ、エドワード。」デイヴィッドは、エドワードが言っている意味を分かっていた。
「どういうことだ?分かりやすく説明してくれ。」チャーリーは、タバコを灰皿に押し付けて、横たわっていた体を起こす。
「もちろんです。まず、なぜ犯人は、死体を隠すのに血痕は残すのか。それは、犯人が、その場所で何か事件があったとバレても良いと思っているからです。そうに考える人物は、組織の人間以外いないでしょう。事件が起きたとしても、世間に自分が犯人だと明るみに出るとは思っていないでしょうから。」エドワードは、分かりやすく皆に自分の推理を話す。
「確かにな。普通なら、察なんかに捕まりたくねえから、必死に血痕も拭き取るし、現場に何一つ証拠なんて残しておかねえな。」ハーヴィは、頷きながらエドワードの推理に同感する。
「そうだ。犯人の目的は、市民を襲ってどこかに連れ去ることらしいからな。」デイヴィッドは、一連の事件の共通点を見出す。
「今までの事件の被害者は、殺されずに連れ去られていると考えるのが筋でしょう。
致命傷を負わせない程度で、市民を襲っていると見て良いと思います。」エドワードは、さらに新聞から見られる情報から推理する。
「致命傷を負わせない程度?それまたどうしてだ。」チャーリーは、眉を顰める。
「何らかの目的のために、市民達を集めていると思います。被害に遭った市民達は、不特定多数です。性別、年齢不問の市民達が襲われている。それは、誰でもいいから人を集めたいという表れです。」
「それが返って、犯人への糸口となるかもしれんな。」デイヴィッドは、そう言って新聞を畳んだ。
────
「それで、ディランさん。25人集めたそうですが、例の”アレ”は届いたんですかー?」一人の少年らしき風貌の男が、ディランの座っている椅子に近づく。
「もうじき届きますよ、フイ。貴方は、あちらで私の子達を見張っていてください。」ディランは、パソコンで何か作業しながら、フイと呼ばれる少年に告げる。
「私の子って気色悪っ‼︎僕さあ、誰かに命令されるの、嫌なんだよねー。」フィは、嫌そうに駄々をこねる。
「口が過ぎますよ。これは、ロードからの命令です。貴方もわかっているでしょう?ロードの命令は、絶対です。」ディランは、フイに忠告する。
「わかってるよー。僕たちは所詮組織の人間だからねえ。ロードに従うほかないよ。
あ!このお菓子ちょうだい!」フィは、ディランのテーブルにあった数個のお菓子から、一つを取ろうと手を伸ばす。
「・・フイ。貴方殺されたいのですか?」ディランはさっきの温和な表情から、冷徹な顔つきになり、懐から銃を取り出し、銃のセーフティバーまで解除する。そして、フイの頭部に、銃口を当てる。
「っ‼︎・・はあ。わかってるよ。ごめんごめん。取らないよ。」フイは、諦めたのかその場から立ち去り、ディランに言われた通り、25人を見張りに行った。
「ふぅ。10個ある菓子から、9個にされては切りが悪い数字になる。全く、世の中の人間は、なぜこうも中途半端を好むのか。私にはさっぱり理解できません。」ディランは、10個あるお菓子を5個同時に食べる。
────
「さて、ここが最終被害に遭った方の事件現場ですが。ここを最後に、市民を襲う被害は無くなっています。」エドワードたちは、数日後、事件現場に来ていた。
「ああ。だが、血痕の痕以外は、何も証拠は残されてなさそうだな・・。」ハーヴィは、事件現場の倉庫を隈なく調べる。
「・・・・」エドワードは、倉庫内をじっと見つめた。
「確か、ここの倉庫、No.25組織の所有地だよな?もしかして、その組織が犯人じゃねえか?」チャーリーは、思い出したかのように皆に伝える。
「なるほど。被害にあった市民も25人、組織No.も25となると繋がりがありそうだな。」ディヴィッドは、チャーリーの言葉に同意していた。
「何馬鹿なこと言ってんだよ!チャーリー、てめえそんな簡単なわけあるかよ。」ハーヴィは、チャーリーの単純的な推理を疑ってかかった。
「いえ、あながち間違ってはいません。先ほど気づきましたが、この事件にはとある方式が存在したんですよ。」エドワードは、全てが繋がったかのように、犯人特定への方式を見つけた。
「「「!!」」」3人共同時にエドワードの方を向く。
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