正義の名の下に 



エドワード13歳の時。エドワードは、秘密裏にとある麻薬密売人の捜査を行っていた。エドワード達は、1年前ほどに一組織として独立していた。





「エドワード。今回、麻薬密売人の捜査をしているんだって?」デイヴィッドは、本来の仕事である郵便物を整理していた。

「ええ、個人的にですが。密売人の男は、客相手に喧嘩となり殺人を犯したみたいです。」エドワードは、デイヴィッドの手伝いをする。

「お前が動くということは、組織がその殺人を犯した密売人を匿おうとしているんだね。」デイヴィッドは、エドワードの行動の意味を察する。

「はい。組織にとって、その密売人が捕まってしまうことは、組織体制を崩す要因の一つになりかねませんからね。」

「なるほど。その密売人も組織に属す者だということか。それは、必死に隠すだろうね。」

デイヴィッドの手伝いが終わったところで、エドワードは、早速町へ出かける。






「エドワード坊ちゃん!今日も郵便配達しているのかい?」

町を歩くと、一人の男性に声をかけられる。

「はい!これが僕の仕事ですから。」エドワードは礼儀よく挨拶をして、仕事をする。



「全く貴族の子だと言うのに、こんな庶民がやるような仕事をするとは、変わった子だな。」男性は、珍しい子供だとエドワードを認識しながらも感心していた。

「エドワード坊ちゃんは、ホワイト伯爵家の養子だったと聞くよ。弱者の気持ちが理解できる子なんだよ。」男性の隣にかなり年老いたお婆さんが、エドワードのことを絶賛していた。






エドワードは、仕事をしながらも、密売人の行方を追っていた。



「(確か、この路地裏で、口論になった客を殺してしまった、だっけか。・・・

しかし、証拠となるものは、何も・・。)」

エドワードは、殺害現場に立ち入って、証拠がないか確認していた。



「ん?なんだお前は。」するとエドワードの背後から、若い男性の声がした。

エドワードはハッとして振り向く。


「子供がここで何をしている。」若い警察官が立っていた。そうこの男こそ、ハーヴィ・エバンズで、エドワードと出会ったのだ。


「警察の方でしたか!先日、ここで麻薬密売人がとある客を殺害したそうですね。」

エドワードの顔は、ぱあっと明るくなって、子供が知り得ない情報を語る。

「な、なんでお前みたいなガキが知ってるんだ?」ハーヴィは、エドワードに疑いの目を向ける。

「まあ、ちょっと捜査しているのですよ。密売人を逮捕するお手伝いをさせてください!」

エドワードは、ハーヴィにニッコリと微笑む。


「お手伝いだあ?何言ってるんだよ、クソガキが。郵便配達をしているみてえだが、

さっさと自分の仕事に戻りな。」ハーヴィは、エドワードの言葉に耳を貸さなかった。


「それでは、犯人は逮捕できませんよ。」

「なんだと?」エドワードの言葉に、ハーヴィは少し苛立ちを見せた。


「だって、あなたが今ここに来たということは、僕と同じで、証拠となるものを探しているのでは?」図星をつかれたハーヴィは息を呑んだ。


「っ・・(このガキ、ただのガキじゃねえみたいだな。)」


「それにあなたは、善良な警察官のようだ。」エドワードは、ハーヴィの顔を真っ直ぐ見つめる。

「なぜ、そんな事分かる。」ハーヴィは、制帽に触れ少しいじる。


「明確ですよ。あなたは、僕のような子供をこの事件に巻き込まないように、わざと汚い言葉や威圧的な態度をとっている。それに、あなたは、図星をつかれた時に、制帽を少々いじる癖もあるようだ。」

エドワードは、ハーヴィの癖までも観察していた。


「なっ!お前まじで何者だよ・・。」ハーヴィはもはやエドワードの観察力に参っていた。


そうして二人は捜査を共にすることとなった。







「どういうことですか!!ワトソン警部!」ハーヴィは、警察署内で響き渡るほどの大声を出していた。


「今言った通りだ。この事件から、我々警察は手を引く。」ワトソン警部と呼ばれる男は、ハーヴィに鋭い視線を飛ばしていた。


「なぜですか?!?まだ犯人は見つかっていません!犯人は、麻薬取引のみならず、

殺人まで犯しているのですよ?!?」ハーヴィの必死の訴えは、誰の声にも届いていなかった。


「これは上からの命令だ。勝手なことは許さんぞ。」それ以上、ハーヴィは言うことができなかった。









「いかがでしたか。ハーヴィ巡査。」トボトボと警察署から出てきたハーヴィに、エドワードは声掛けする。


「・・・この国は、腐っている・・。今も犯人は逃げているというのに、警察は動かない・・。上からの命令って、どうせ組織の連中だろ。」ハーヴィは悔しそうに、顔を歪めて唇をギュッと噛む。


「そうです、この国は腐っているのです。組織体制などという、聞こえのいい支配体制を敷き、実際はこうやって犯罪が行われているのにも関わらず、警察すら動くことは許されない。それならば、組織なんて壊してしまえばいいのですよ。」

エドワードの言葉に、ハーヴィは驚きの目を向ける。


「組織を壊す・・?」


「ええ!善では、悪には立ち向かえない。それならば、僕は正しいことをするために、悪役になることは厭わない。僕はこれから、組織体制を着実に壊します。」エドワードは正義のために、悪への道へと進んでいた。



「正しいことをするために、悪役になる?・・・ふっ。いいぜ、その考えは面白え。

こんな腐った組織体制間違っているに変わりねえ。国民の連中は気づいてねえがな。

俺も、その組織体制をぶっ壊す手助けをしてやる。」ハーヴィは、初めて同志を見つけた気がした。



「それでは共に行きましょう。」エドワードは、ハーヴィに微笑む。

「ああ、お前の望みなら何なりと。」ハーヴィはエドワードの前に跪く。






──────




「それで、その後、二人はどうなさったのですか?」ベンは、エドワードからのハーヴィの過去に興味を示していた。


「あー、もちろんその組織は全滅させたよ。密売人もその組織内にいたしね。

ハーヴィが属していた警察署は、ほぼ組織の人間がいたから事実上壊滅したね。」

エドワードは、その後の話も話してあげた。


「でも、たった13歳でそんなことまでできるなんて、さすがエドワード様です‼︎」

ベンは、キラキラと目を輝かせ尊敬の眼差しでエドワードを見る。




「ちょっと尊敬する所が違うんじゃないかしら?」オリヴィアは、淹れた紅茶をテーブルに置きながら、ベンに言う。


「まあ、僕がしていることは、犯罪だからね。」エドワードは苦笑する。


「そういった組織絡みの事件は、組織の悪事だと証明できる物をエドワードがしっかり回収している。」デイヴィッドは、紅茶を飲みながら言う。



「でもなぜ、その証拠品を世の中に公表しないのですか?ずっと証拠を集めて隠したままだと、僕達がずっと世の中にとって悪い人として認知されます。」ベンは肩を落として尋ねる。



「そうだね。国民にとって、組織というのは有難い存在だし無くてはならない存在とさえ思われているからね。でも、僕達が一つ一つの事件に対し証拠を出したとしても、それはボス組織が黙っていないだろう。その証拠を捏造することも消すことさえできるんだよ。今まで正義のために善人でいた人々は、証拠をいくら出したところで消されてしまう。」エドワードは、完璧なる組織体制を語る。



「だから、私たちが悪い人として認知されなければならないのだよ、ベン。」デイヴィッドが、不安がるベンに優しく伝える。


「そして全ての終わりの時には、証拠全てを世間に出す。ロード亡き後にね。」

エドワードの笑みは、少し不気味で凄まじいほどの冷酷な表情をしていた。







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