第5話

「うーーーん、夜風に当たったら少し酔い醒めた!今日は付き合ってくれてありがとう、楽しかったまた飯いこうね!」

ご機嫌に隣を歩く逢瀬おうせ 世界せかいを見てまだ一緒にいたいと思ってしまう。きっと、断じて恋心ではない。と思いながらチラっと顔を見てしまう、端正な顔立ちをしていて羨ましい。10月の夜風はもう冷たいな、とお店との温度差に顔をちょっと顰める。顔を切りかえないと。

「そうだね、次は私が奢れるように貯めとくね」

「そんなんいいのに〜〜!!期待しとく!」

このノリの良さとこの顔立ちで彼女がいない、という話はにわかに信じられない。一途に思っている話を聞いても、女性関係の噂を聞かないあたりも逢瀬 世界は誠実なんだろうなと思う。

「あ、雫ってここから電車使う?」

「ううん、私は歩いて帰れる距離だよ」

「俺も!どっち?家まで送るよ、夜も遅くて危ないし。まだ話したいし。」

「それは悪いよ、もう少し肌寒いし風邪ひくよ」

「いーの!こっち?」

「そう、だけど。」

「俺もこっちだから丁度じゃん!行こ!」

多少強引の逢瀬 世界に軽く引きながら私は少し追いかけるように隣を歩く。


「なんかさ〜酔っ払って喋りすぎたなー!って思ったんだけど雫が話聞いてくれてよかった」

「それならよかったよ」

「うん!」と返事をしてから少し逢瀬 世界は少し考えるような仕草をして私の顔を覗き込んできた。

「なに?どうしたの?」

「雫って広く浅くのイメージがすごいから聞くんだけど恋人とか親友!って人いる?」

またこの質問だ。下山しもやま 由那ゆなにも聞かれたな、困ってはいないけど自分にとってはコンプレックスだ。前の恋人にも親友だと思っていた子にも共通して言われた言葉は『本当に雫はみんなを個々としてみてる?』だった気がする。自分は見ているつもりでも相手からしたらそう感じられない。それがもどかしくどうすればいいのかわからないから数年悩んでいる事だった。

「うーーん、恋人はいないけど親友とかそこらへんはどうなんだろうね」

と、私は苦笑いで返すしか無かった。いないよなんて胸を張って言えることではないから。

「雫の考えてることとか思ってること、俺はいつでも聞くからね!」

「優しいね、ありがとう」

「いーえ!」と笑った逢瀬 世界は街灯に照らされてキラキラして見えた。この人のことを好きだな、と思ってしまった。


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世界を知りたい 岩田 美緒 @571219

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