第3話

「俺の行きつけの居酒屋あるんだよね、春川さん酒飲める?」

「少しなら飲めるかな、弱いんだよね 酔うと声大きくなったり3歩に1回転ぶくらいには」

案外普通に喋れるんだな、倉庫の件で慣れたのかもしれない。逢瀬おうせ 世界せかいの距離を感じさせない雰囲気はとても心地がいい。

「えー!めっちゃ意外じゃん!強そうなのにね」

「そ?でも強そうはよく言われるかも!」

「今から行く居酒屋、よく優子ゆずと行ってたんだよね!ツマミも飯も美味しくてさ〜!」

ああ、逢瀬 世界はまだ小宮こみや 優子ゆずのことが好きなんだな、と目が覚めた気分になった。主人公はきっと報われる、頑張れ逢瀬 世界!と心の中で汚い感情が生まれる前に応援をした。というより触れていいのかいけないのか気まずい話をサラッとする男だな。と思い、返しの言葉を頭フル回転で考ようと思った。

「逢瀬さんはまだ小宮さんのことが好きなんだね」

考えようと思った矢先に口から出た言葉に自分が一番驚いた。そんなことある?さすがに阿呆すぎる。

「え!!??春川さんて結構スパッと聞くんだね、えーと自分でもわかんないんだよね」

こんなに答えづらく不快にさせるようなことを言ってしまっても笑って返してくれる寛容でいい男を小宮 優子は逃したのか、魚はでかかったぞ。と思ってしまったが小宮 優子が選んだ男はきっと逢瀬 世界よりもいい男だったのだろうと心の中で飲み込んだ。

「違うよ!?優子を忘れるために春川さんを誘ったとかじゃなくて!えっと!!本当に仲良くなりたかっただけだから!!話してみたかっただけ!!!」

続けて逢瀬 世界が慌てふためき続ける。別にそんな疑いをかけた覚えはないがそういった嫌味に聞こえてしまったのなら申し訳ないな。

「別にそんなこと思ってないよ!すごい慌てるじゃん(笑)」

「いや!!だって!!!俺そう思われたとしたら失礼な奴じゃん!!あ!店ついた!入ろうか!!」

居酒屋の外観はとても綺麗でお洒落なBARと言っても通用するな、と思った。

私は忙しすぎる逢瀬 世界に笑いを堪えきれずわらいながら「うん」と返事をして店に入っていく逢瀬 世界の背中を追いかけた。

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