第2話
惜しんだのも束の間、本当にわずかだった。
「はーるかわさん一緒に帰りましょ、飯行きましょ飯!どうすか!」
業務が終了した途端に
「せっかくのお誘いなんだけどお金ないから却下で!お疲れ様でした!」
私は逃げるように早口で断り早足で逢瀬 世界の横を通りすぎた。が、追いかけてくる。
「はーるかーわさん行こうよ、帰ろうよ」
私は無視をして逢瀬 世界の前を歩く、反応したら負けだろう。断ったとしても行くはめになるのは私が1番わかることだった。
次に「はるかわさん!」と聞こえたのは前からだった。「!?」いきなり前に飛び出してきた逢瀬 世界と思い切りぶつかってしまい、驚きすぎて声にならない声が漏れてしまった。逢瀬 世界の匂いでいっぱいになった、気持ち悪い表現かもしれないけれど本当にそうなのだ。柔軟剤と香水だろうか、2つの匂いが混ざった不思議な香り。それでもとてもいい香りだった。顔は赤くないだろうか、変な顔はしていないだろうか。
「おっ、と、ごめん!大丈夫!?」
「びっくりしたけど大丈夫、じゃあ!」
押し切りで帰ろうとするが腕を掴まれて引き止められてしまう。しまった!と思ってももう遅い、これは強制連行コースか?と思い逢瀬 世界の顔を見る。目が合う。
「この後予定でもあるの?」
「ない、けど、、お金ないし、むり」
どうしてもたどたどしくなってしまう。目が合っていては嘘なんてつけない。つまり、お金がないのは本当だ。
「奢るから行こう、俺春川さんと話してみたいって言ったじゃん!親睦会ってことで!」
「3年越しの親睦会?中々パンチ強いね、でも奢りは申し訳ないから帰るだけ帰ろう。」
完璧に逢瀬 世界のペースだ、本当にすごい。私がちょろいだけかもしれないが。
「むり!俺ちょー腹ぺこ!つーかこんなに無理矢理強引に!俺が誘ってんだから奢らせて」
無理矢理強引は本人自覚済みなんだ、と変に感心してしまった。これを自分で言うくらいだ、少しも引かないつもりなのだろう。
「わかった、ありがとう」
私は軽く頭を下げ逢瀬 世界の顔を見る「いーえ!こちらこそ」と満足そうに笑う逢瀬 世界になんとも言えない気持ちになった。嬉しく思いたくはないのにとても嬉しかった。
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