戦闘学 2日目 Emergency alert

第18話 Emergency alert① 〜秘境・絶景ポイント〜

 〜戦闘学授業2日目・深夜22:00〜


「ハァ〜♡ 極楽極楽! こんな場所が樹海にもあったなんて驚きだわ」


「ヤダァ〜、こんなところに痣ができてるしぃ〜。橙山! 治しなさい!」


「このブスは何を言ってるのかな。助けられた恩とか感じないの? バカなの?」


 湯気が立ち込める岩合いから女性3人の楽しそうな声が聞こえてくる。天然温泉の周囲にはススキのような植物(おそらく植物であろうか)が発光し、夜の闇をホワ〜っと優しく照らし、湯気と相まって幻想的な情景を演出している。


「もぉ〜二人とも、やめなさい! こんなに気持ちいいのに喧嘩なんてだめよ。」


 赤羽三久は紅に輝く長い髪を湯船に浮かべながら、肌目の細かい皮膚を労るように全身をさすった。


「うるさいわよ、赤羽! 別に助けて欲しいなんて言ってないわ! それより背中流しっこしないかしら。私が二人共洗ってあげるわよ、ふふっ♪」


 未虎優子は褐色に日焼けした身体をグッと伸ばして子供のように大の字に浮かびながらサイドに垂らした三つ編みを手でいじりながら、饒舌に提案した。


「三久さん、こんなパワー系バカの言うことなんて耳貸さなくていいよ。バカミドラがいないあっちの滝の方に行こうよ」


 橙山要は透き通るような白い手で控えめな胸を隠しながら、オレンジ色の混じった金色の髪を後ろに束ねながら呟いた。


「バカとは何よ! バカって言った人がバカなのよ!」


「まぁ、まぁ、二人とも、って未虎さん、胸大きいですね!」


「えっ……、そうかしら。普通だと思っていたけど、私って頭だけじゃなくて、プロポーションもいいから困るわ。天は二物、三物をも私に与えてるのね! あ〜っはっは! でも、そういうあなたもなかなかよ、赤羽。さすが私のライバルね!」


「何か変なものでも食べたのかな? このゴリラは? 別に胸の大きさだけが全てじゃないんだよ、女の子は。顔がブスなのに気づいてないなんて、本当に悲しいモンスターだよね、あんた。流石に同情するよ」


「あら、橙山、何か言ったかしら。あなたの胸? あなたは、そうね、まだ成長段階じゃないかしら。頑張りなさい。まだまだ可能性はあるわ!」


「このクソミドラ〜! 言わせておけば−−−」 



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 〜4時間前〜


 堂島との激戦の後、樹海を隠れながら進んでいた彼らは打ち捨てられた古い石造の建物を発見した。その家に潜み、ダメージを回復し日が沈むのを待っていた。夕暮れになり周囲に多数の異形態の声が響き渡った頃、建物内部を探索していた男子生徒が偶然にも地下に通じる通路を発見した。ダメージを抱えたままの戦闘は難しいと判断した彼らは地下に身を隠すことになった。

 石の階段を周囲を警戒しながら進むと、何かの生物が描かれた壁画を発見した。後方から夕陽が差し込み、壁画が照らしだされる。それは何か神秘的な、しかし不吉な予感を彼らに感じさせた。さらに階段を降りたところで鳥、と言うにはあまりにも尾と羽が長い石像が両サイドに置かれた物々しい扉を発見した。

 扉を開けると、そこには発光した植物が生い茂る地下の空間が広がっていた。風が時折吹き込んむんでくることを考えると、地表と交通があるのだろうが空は見えず、天井には鉱石の鈍い光が広がっていた。地下空間を散策していると湯気が湧き出ているこの天然温泉を発見したのだった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「きゃっ、バカミドラ〜、やめなさいよ!」


「別に減るものじゃないからいいじゃない。何をそんなに隠してんのよ♪」


「2人は良いのか、悪いのかわからないわねぇ〜?」


 楽しいそうな笑い声が地下の空間に響く。


 がさっ、がさっ、キラっ


 ガールズトークに花が咲いている彼女たちの上に位置する高台で何かが蠢いていた。


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