第14話 それぞれの戦い③ 〜真に美しきは友情?〜
死闘会場から1km先にいた赤羽三久達は来る衝撃波に備えた。瞬間、大気が揺らぎ風が轟音とともに彼女らを横切る。
「絶対あの筋肉バカだよ、三久さんどうする?」
衝撃波で吹き飛ばされないように登っている気にしがみつく金髪美女、橙山要は同じく木にしがみつく赤羽三久を横目で見ながら尋ねた。傍目から見ればいささかシュールな構図であった。
「あの娘の性格だとこのまま堂島先生と
「そうだよね、あのゴリラ女なんか負けちゃえばいいんだ」
橙山要はやや幼い印象をした顔を尖らして舌を出した。
「要はいつも優子に厳しいのね。どうしてかしら?」
三久はいつもケンカばかりしている未虎優子と、橙山要が不思議でならなかった。
「なんでってそりゃ……」
要は口をつぐんだ。はっきり言って彼女は未虎優子がどこが嫌いとういわけでもなかった。ただ彼女が力もないくせに、自分たち色付きにたびたび突っ掛かってくるのが鼻持ちならないのだ。それに彼のこともあるのだ。
要の頭に高校入学時のことが頭をよぎる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1年前4月 入学式
「あんたたちが、今年入学してきた色付きね!」
入学式の終わりに少し頭が悪そうなショートカットの発育のいい美女が、赤羽や橙山たちの前にいきなり立ち塞がった。
「誰ですか?」
如何にも育ちが良さそうな仕草で口元に手をやり首を傾げる赤羽三久。
「だ〜れ〜?」
横の橙山要も訝しい顔をした。
「私は未虎優子よ! 今日はあんたたちの実力を確かめさせてもらうわ!」
そう言うと少女はいきなりこちらに向かって殴りかかってきた。
そして……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「本当に脳筋ゴリラだね。あいつは……」
ボコボコに腫れ上がった未虎の顔を思い出しながら要はうんざりしたため息を漏らした。
「ふふっ、要も素直じゃないわね」
見透かしたように赤羽三久は友人に微笑んだ。
「それ、どういう意味なの〜?」
ジロっと三久を睨め付ける橙山要。
「で、行くの? 行かないの?」
三久はわざと意地悪い顔をした。少し深いため息を吐き出し、
「全くしょうがないなぁ〜! あのゴリラは! 行くよ、三久さん!」
そう言うと彼女たちは軽く屈伸して木の上から飛び出し、爆炎の方に向かって一気に駆け降りた。
「必ずぅ〜〜、お前たちより強くなってやるんだからぁ〜〜!」
まるで漫画に出てくるチンピラみたいに負けた後遠吠えを撒き散らしながら走っていく姿、そしてあの時のぐしゃぐしゃになった未虎の顔を、要は思い出し少し微笑んだ。
「本当にバカなんだから〜、優子は〜!」
ボソっと呟くと一気に歩に力を込めた。
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