戦闘学 1日目 嵐の前
第4話 嵐の前① 〜夏美先生より〜
「準備はいいか!」
柊夏美はアトリウムへ続く樹海の入り口で、体育座りした生徒たちに大声で叫んだ。
「お前らD組は協調性が他のクラスに比べて欠けている。今まで担任したクラスの中で、このクラスほど友情、努力、勝利という言葉が似合わない奴らはいない。裏切り、陰謀、足の引っ張り合いを常に第一と考えている節がある。でも、先生は信じているぞ。お前らは死の淵に蹴落とされてこそ輝く奴らだってな! 死んでも大丈夫だ。骨は必ず先生が拾いに行くからな!」
他のクラスの担任が聞いたら、思わず二度見するレベルのとんでもない単語が飛び交う中、生徒たちは至って普通であった。
「最後にルールを確認する前に何か質問あるやついるか?」
夏美はこの状況で冷静さを保ちっている教え子たちを少し見直しながら柔らかい口調で尋ねた。一斉に手が上がり、
「先生。監視カメラはあるのでしょうか? 見えないところで何かした場合それは何もしていないという認識でいいですよね?」
「…………」
「物的証拠がなければ起訴できませんよね? 法律は人を救うためにあるんですよね?」
「…………」
「未成年の過ちって思春期にはつきものですよね。私たちまだまだ未熟だから、その未熟さが無意識に語りかけて時に罪を犯してしまうことありますよね?」
「…………」
「夏美姉さんのために全員を殺す覚悟です。これが終わったら俺……姉さんにっ!」
「…………」
夏美は遠くの空を見上げ、願わくばこの授業が終わる頃にはこいつらが少しでもまともになってくれることを祈った。
「それでは、最後にルールの確認だ。これはしっかり聞いておけ。まず身につける
夏美は自分の手甲をひらひらさせ生徒に示した。
「次に、知ってはいると思うがアトリウム周囲の樹海には、結界が形成されている。その中は力場が形成されている。この力場内では君たちの
近くにある樹木を正拳突きすると大木は音を立てて倒れた。
「なっ。こんな感じだ」
いくら
「最後に、今回の授業では教員の他に外の異形態も数匹結界内に潜ませている」
今までおとなしかった生徒たちが、いっきにざわつき始めた。
「安心しろ。Cランクの奴らしかいない。結界外には出れない。自信のない奴は逃げろ。倒せると思う奴は戦え。もしも死の危険を感じたら、いつもの小瓶を使え」
夏美は隣の教官に視線をやる。その教官は小瓶を取り出し、地面に叩きつけ割った。そうすると小瓶は雲上になり教官を乗せて彼方に飛び去った。
「あれは保健室に直行している。保健室のあいつの
静かな森に凛とした声が木霊した。
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