⑤
学校前と名の付く割にそれほど学校まで近くない。
ここまで電車で20分。ここから徒歩で10分。大半の生徒は自転車通学。電車通学の生徒はごく一部だ。さらに全校生徒の8割くらいはなんらかの部活に入っていて朝練やらなんやらで私たちよりも何本か早い電車でいく。だからいつもなら私たちの他に2.3人くらいしかいないのだが今日は違う。試験期間中は部活も休みになる。当然朝練もない。前日夜遅くまで勉強していた者たちがこの遅刻前最終列車に乗り込んでいた。
改札を出て学校まで歩く。緩やかな坂道が続くこの道はこの季節だと学校に着くだけで汗をかく。だからなるべくあせをかかないようにいつもよりゆっくりと歩く。10分の距離を15分かける。
自転車の生徒が何人も私たちを抜いていく。徒歩の生徒も抜いていく。こういう時やっぱり男子っていいなと思う。汗とかほとんど気にしないんだろうな。男子の汗の匂いを好む女子は意外と多い。この前も体育の時にそんな話を周りの子がしてた。私も好きな方だと思う。ツンと来る匂いがたまらなかったりする。芽衣に聞いたら臭いだけやんって言われて言い出せなかったけど。
学校に近づくにつれて追い抜いていく自転車の数も多くなってきた。みんな口々に全然勉強してないだの、徹夜しただの言っている。ツイッターがどうとか言ってる人たちもいる。
「今日はこの時間いつもより人多いね」
「うん」
やっぱり今日の芽衣は少し元気がない。いつも元気でわーっと盛り上がるパリピみたいな人ではないけどもう少しは明るい。
「今日やっぱ体調悪い?」
芽衣はボソッといやと呟いた。
「昨日なんかあった?」
そう言うと芽衣がぴたっと止まった。
「なんでそんなこと聞くの」
芽衣が強めの口調で言った。
「あっ、いや朝からぼーっとしてたりしたからなんかあったのかなって。もしかしてアレの日とかだったらごめん」
芽衣は歩き出す。
「ごめん。昨日あんま寝てなくて。少し今日は情緒不安定な日かもしれん」
「あーそれならよかった。ちょっと心配やったから。まぁ試験前日なんて勉強してようがしてまいがあんま寝れんよね」
芽衣はそうだねとだけ答えた。
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