第16話 2人目の転校生
ガタン ゴトン
「はぁ…癒されます…」
「…学校の人には見られたくないからな」
「ふふっ、問題ありませんよ」
千春は昨日と同様隣に座ると、海斗の肩に寄りかかりながら心地よさそうに答える。
海斗はキョロキョロと辺りを見渡し、学校の生徒が居ないか確認する。しかし視界に入るのは、若そうなガタイの良いサラリーマンのみ。
「だからと言って居ないとは限らないだろ」
海斗はそう言って千春を突き放す。
「あ…」
千春を突き放すと、口からは名残惜しそうな声が漏れる。そしてそれを見ていた凪から海斗へ質問が投げかけられる。
「…海斗さんはお姉様と付き合ってないのですか?」
核心を突かれた質問に、海斗は驚きの表情を浮かべ、戸惑いながらも答える。
「い、いや、付き合ってるよ」
「なら何故お姉様に意地悪するんですか?」
淡々と、答えずらい問い掛けに、あ、いや…と言葉が詰まる。横を見て、千春に助けを求めようと見ると、笑うだけで何も言って来ない。
千春にとって、これを擁護する意味はないのだから。
それを悟った海斗は頭を振り絞り、話を変えようとする。
「そ、それよりも凪ちゃんは座らなくてもいいの? 良かったら俺が
「大丈夫です」
目の前に突っ立っている凪に対しての渾身の質問が即答に終わり、海斗は苦笑いを浮かべる。
自分がこの頃はこんなにもハッキリ物を言えただろうか、そんな事を思っていると駅に着く。
「ま、まぁ、この話はまた今度ね」
そう言って海斗は千春と離れたまま電車を降りる。
「…分かりました。でもいつかは聞かせて下さい」
と、後ろからの声に海斗は勢い良く振り返る。
「あ、あれ? 凪ちゃん? 学校には行かなくてもいいの?」
聞くと、凪は大きく溜息を吐いた。そしてその質問に答えたのは千春だった。
「海斗、違いますよ。凪は…」
「初めまして。
「昨日に引き続き転校生だー、見た目は幼いがお前らと同じ高校2年生だ、仲良くしろよー」
「おー!! 今度はロリ美少女来たー!!」
「可愛い~!!」
クラス中が、昨日と同じ様な盛り上がりを見せる。
「…マジ?」
「マジですよ〜♡」
海斗は口角をヒクヒクとさせながら、またもや大量の汗をかいていた。そしてその汗をかいている海斗の匂いを嗅ぎながらご満悦に答える千春。
(こ、これだと俺の安息地は本格的になくなる…)
「と言うか妹じゃなかったのか!?」
「妹です、義理の」
「苗字は!」
「どうやら変わってないみたいです」
「何でお前が知ってないんだよ!?」
「さぁ? 何ででしょうか?」
千春は笑顔で海斗の問いを受け流し、答えていく。
答えていると言っても、それはまともな説明はなく、海斗の頭を混乱させるだけであった。
「じゃあ、夕原の席は1番前だな」
「いえ」
「ん? どうした?」
「席は1番後ろ、窓側の席がいいです」
「でも1番後ろだと、夕原の背じゃ黒板見えないだろ」
先生に一蹴された凪は大人しく1番前の席に座ると、周りの女子に早速と言わんばかりに頭を撫で回されていた。
海斗の中ではもっと食ってかかる様なイメージだった。しかし凪は反抗する事もなく、女子生徒を気にも留めていない様で無表情で真っ直ぐ黒板を見ていた。
「また、凪の事をそんなに見て…まぁ、凪は可愛いですけど、もっと私を見ても…」
千春は海斗の背中に穴が開くかと疑う程に視線を送り、机に肩肘を突いて不満を漏らしていた。
「…別に可愛いけど…マスコットキャラ的な可愛さに近いよな」
それが聞こえたのか、海斗がボソリと前を向きながらそれを否定する。
すると千春は海斗の制服を引っ張った。
「何?」
「海斗…それは違いますよ」
「違う?」
「はい、凪は結構…
「じゃあ今日も真面目に頑張る様にー」
千春が言う瞬間、先生がホームルーム終了の終わりを告げ、聞く事が出来なかった。
しかし、千春が何を言おうとしていたのか、それは今日すぐに分かる事になった。
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