朝からメイドさんに癒されて
「ご主人様、起きてください。ご主人様?」
「……うあ?」
肩を揺らされながら呼びかけられて俺は目を覚ました。
随分と間抜けな声が出たような気もするが、それよりも目の前に居た亜利沙の姿に目を奪われた。
「……メイドさんだ」
「はい、あなたのメイドでございます」
お腹より少し下の辺りで手を重ね、綺麗にお辞儀をしながら亜利沙はそう言った。服装も見慣れたとはいえ一般的には珍しいメイド服、常にメンテナンスというか解れなどがないように整備をしているのはよく見かける。
「今日はそんな気分の日か?」
「なんのことでございましょうか。わたくしはあなたさまの忠実なるメイドでございます。くれぐれも、ご主人様とメイドさんごっこなどではありません」
「言ってるじゃんか」
凛とした表情の亜利沙に苦笑した。
「よっこいせっと」
ベッドから出て俺は部屋を出た。
確か今日は咲奈さんは仕事で藍那は居るはず、ということは藍那も亜利沙のこの姿を見ているはずだけど。というかあれだよな、うちにも亜利沙のメイド服が置かれているのを見るに大分染められてきたなって感じがする。
リビングに向かうと藍那がソファに座ってテレビを見ていた。
「あ、おはよう隼人君」
「おはよう藍那」
藍那と挨拶を交わすと、背後を通って亜利沙がキッチンに立った。そのまま当たり前のように冷蔵庫などを開けて朝食の準備を始めた。
「亜利沙、手伝うけど……」
「ご主人様に手伝わせるなどあり得ません。待っていてください」
「……分かった。
うん、完全にメイドになり切っているな。
俺は小さくため息を吐いて藍那の隣に座った。すると、亜利沙の様子を眺めていた藍那がこう言ってきた。
「それにしても似合ってるよね姉さん」
「本当にな」
藍那と一緒にもう一度亜利沙を眺める。
今までと何も変わらないデザインではあるのだが、冬ということもあってロングスカートタイプだ。ミニスカメイドも凄く可愛くてエッチだが、ロングなのも更に清楚感が増して大変似合ってる。
「姉さんも常識人ぶってるけど、お母さんの次に飛んでると思うんだよね。だって自分で隼人君に一生隷属したいって言ってるんだよ?」
「……あぁ」
隷属したい……それはつまり仕えたいということだ。
亜利沙は一生を賭して俺に尽くし、俺の為に生き、俺の為に死にたいなんてかなり重たいことを考えているようだ。そこまで強く想われて最初は困惑したが、今となってはそれが亜利沙なんだと逆に嬉しくなってくる。
もちろん、亜利沙を奴隷のように考えたことはない。彼女はいつだって俺にとって大切な女性だ。彼女がメイド服を着た時はまあ……その、少し彼女の望む俺になろうとは頑張ってるけどね。
「ちなみに隼人君」
「……なんだ?」
何やら藍那が凄くニヤニヤした表情で俺を見ていた。彼女はチラッと再び亜利沙に目を向けた。
「姉さんを見て何か感じない?」
「うん?」
何か感じないとはどういうことか、俺も再び亜利沙に目を向けた。普通にキッチンに立って朝食を作っている亜利沙の様子におかしなところは見られない……特に変わってないよな?
「あはは、流石に気付かないかぁ。まあ提案は私なんだけど♪」
「……めっちゃ気になるんだけど」
「近くで見てみたら?」
「分かった」
俺は亜利沙の傍に近づいた。
「ご主人様? どうされましたか?」
「……いや、そのまま続けてくれ」
「? 畏まりました」
あ、というか今日はポニーテールなんだ可愛いな……ってそうじゃなくて、相変わらず藍那が楽しそうな様子で俺を眺めている。俺は何かがあるんだろうなと思って亜利沙を観察するが本当に分からない。
「……う~ん?」
テキパキと料理を進めていく亜利沙の姿は本当に漫画やアニメで見たメイドさんを彷彿とさせる手際の良さだ。まあ彼女たち一家はみんな料理が上手だし家事もバッチリということは知っているけど本当に絵になる。
「……っ!?」
「亜利沙?」
そんなことを考えながら亜利沙を観察していた時だった。突然亜利沙が手を止めてお尻を突き出すような姿勢になった。体を小さく震わせたがすぐに元通りになって家事を再開した。
「……はぁ……ふぅ……ご主人様? 藍那の傍に居て……ぅん……ください」
いや、やっぱり何か変だ。
少し頬が赤いし何なら目が少し潤んでいる。どこか調子が悪いのかと思ったがそうではない、そもそも藍那が更に笑みを深くしているから……?
「……あ、ダメっ……」
そしてまた大きく体を震わせた。
普通にしているにはどうもおかしい悩まし気な声だ。俺はまさかと思いその場にしゃがんで耳を澄ませた。すると、何か機械の駆動音みたいなのが微妙に聞こえてきたのだ。
「亜利沙」
「は、はい……っ」
「ちょっと失礼するぞ」
今からすることを他の女性にしてはいけない、まあ俺も他人の目があるところでは絶対にしないけどね。頷いた亜利沙の反応を見てから、俺は彼女のスカートを捲り上げるのだった。
「……これかぁ」
「あはは! 見つかっちゃったね♪」
「もう藍那! 強くしないって言ったじゃない!!」
この二人の言葉で俺が何を見つけたのか分かったはずだ。
敢えて俺は何も言わない、ただまあ敢えて言うとするなら……秘境の先に蠢く科学の神秘があっただけだ。
「……ふぅ、悪くなかったけど流石に家事しながらはきついわね」
「そりゃそうでしょうよ」
朝食を終え、今は亜利沙と自室で二人っきりだ。まだ彼女はメイド服だが、既に佇まいはいつもの様子に戻っていた。
『こんなに悪いメイドにはお仕置きしないと!』
『お許しくださいご主人様……この淫らな雌に罰をお与えください』
取り合えず、頭をコツンと小突くだけで止めておいた。
藍那は終始楽しそうだったし、亜利沙に至っては不満そうにぷくっと頬を膨らませていて……本当に亜利沙も大分吹っ切れてきたよな。
「ねえ隼人君、私はやっぱりあなたに尽くしている時が一番幸せだわ」
「亜利沙?」
彼女は横に座っていた俺の肩に頭を置いて言葉を続ける。
「普段の過ごし方ももちろん大好きよ? でも私はやっぱり、隼人君に何でもしてあげたいのよ。それこそどんな扱われ方をしてもいい、隼人君だけのモノでありたいのよ。どこまでもね」
「……重いってマジで」
「あら、そんな私を受け入れてくれたじゃない隼人君は」
「受け入れる以外ないでしょ。だってそれだけ亜利沙のことが大事になったんだ」
……まあそれでもエッチなことというか、彼女のそういう部分はとても良いモノだと思ってしまう年ごろなので、全然バッチコイではあるんだけども。
「……うん♪」
素敵な笑顔をありがとうございます。
さて、せっかくメイド服なんだし色々とやらないと勿体ないか。俺は亜利沙にベッドから床に座ってもらい、膝枕をしてもらうことにした。
「亜利沙、耳掃除でもお願いできる?」
「あ……えぇ。分かったわ、任せてちょうだい」
愛おしい彼女による耳掃除、大変幸せな一時を俺は味わうのだった。
そんなとても気持ちの良い時間を過ごしていた時、俺が手元に持っていたのは藍那からもらったスイッチ付きのものだ。
「……こういうの初めて見たな何だかんだ」
こういうおもちゃがあるのは知ってるけど当然初めて見たようなものだ。
俺は出来心でそのスイッチをグッと上に……その瞬間、俺の耳奥にロンギヌスの槍でも突き刺さったのかと思うほどの痛みが走った。
「いっつ!?」
「きゃんっ!?」
……うん、亜利沙は何も悪くない。
悪いのは全部……俺だ。それは間違いないから……だから亜利沙泣くんじゃない!
【あとがき】
本編終わってから好き放題書ける解放感に快楽を感じます。
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