友人から見た隼人たち

 俺の名前は山下やました兼久かねひさ、どこにでもいるような高校二年生だ。特に変わり映えしない日常を友人たちと送る中、最近になって良く聞かれることがあった。


「なあ山下」

「なんだ?」


 普段特に話すことがないクラスメイトが俺に話しかけてきた。

 一体何の用だと眼鏡を通して彼を見つめる。彼はとある方向をチラチラと見ながらこう言ってくるのだった。


「堂本と新条さんたちは本当にどういう関係なんだ?」

「……………」


 またその質問かと、俺は小さくため息を吐いた。

 彼の視線の先に居るのは我が親友こと堂本隼人、そしてそんな彼と親し気に話しているのは学校でも有名な美人姉妹だ。確かに何も知らない彼らからすれば、隼人と彼女たちの仲が気になるのも仕方ない。


「別にどうでも良くないか? 隼人と彼女たちが親しい仲ってだけだろ」

「……それはそうだけどよ」


 まあ、あまり表に出せるような関係ではないのも確かだ。

 俺もまさか、隼人が二人と付き合いだしたと聞いた時はビックリした。美人姉妹がまさか二人同時に隼人を好きになっているなんて……まあ驚いたのは驚いたし物凄く羨ましいけど、隼人の人柄を知っているからこそおかしくはないとも思えた。


「よ、何話してんだ?」

「田井中……いや、何でもねえよ」


 田井中たいなか東二とうじ、俺や隼人と良くつるむ共通の友人だ。坊主頭に厳つい顔をした東二が来たことで、隼人と姉妹について聞いてきたクラスメイトはすぐに離れて行った。


「相変わらず怖がられてんな?」

「そんなつもりはねえんだけど……って、またあの二人来てるのか」

「ま、もう珍しい光景じゃねえだろ」


 ハロウィンくらいの時期だとあんな光景は決して見られるものじゃなかった。絡みは最低限のものだったのに、いつの間にかあんな風に彼女たちはこっちのクラスに溶け込んでいた……まあ、溶け込んでいると言っても隼人の傍にしか居ないのだが。


「あいつ、本当に前世で徳を積んだんだろうな」

「さあなぁ。にしても見てみろよ周りを」

「……おうふ」


 クラスの男子が嫉妬をこれでもかと見せる目を隼人に向けていた。きっと俺や東二も隼人と親しくなかったら似た目を向けていたかもしれん。それくらいに……あ、妹が隼人に抱き着いた。


「……なあ、どんな感触がするんだろうな」

「そりゃあもう俺たちが感じたことがない柔らかさだろうよ」


 羨ましい……というか、ああやって抱き着かれて特に取り乱さない隼人の様子に何故か異様にムカついてくる。まるで慣れているような……あぁそうだよな。あの二人を相手してたらそりゃ慣れるよな!!」


「おい、顔が怖いぞ」

「元からだよ」


 ……それは嘘だけど。

 それにしても……隼人はともかく、あの姉妹は本当に美人だ。姉と妹、顔立ちは似ているが雰囲気は全く違う。スタイルはそっくりで抜群であり、一体何人の男子があの二人を手に入れたいと思ったやら。


「ま、なんにせよあいつが幸せそうで良かったよ」

「そうだな。今でも思い出せるよ。俺とお前が隼人の家族のことを聞いた時マジで取り乱したもんな?」

「あぁそうだったなぁ……凄い勢いで謝ったもんな」


 あの時のことは今でも忘れられない。

 ある程度仲良くなったところで隼人の家に遊びに行き、何気ない両親に対する俺たちの質問に返ってきた言葉がこれだ。


『あぁ……うちの両親はもう亡くなってるんだ。だから一人だよ俺』


 ……もうね、本当に申し訳なさがあった。

 隼人は笑って大丈夫だと言っていたが、絶対にその話題は必要な時を除いてしないことを決めたくらいだ。


「あ、姉も参戦したぞ?」

「……おっぱいサンドイッチやんけ」


 後ろから妹が抱き着き、正面から姉が隼人に抱き着いている。流石にそこまでされると教室ということもあって隼人もどうにかしようとしているが、前と後ろから頭を二人の胸に挟まれて大変羨ましい爆発しろよ。


「爆発しろよ」

「……ふっ」


 ま、考えることは同じってことだ。

 俺と東二はそこまでだけど、流石にあんな光景を見せられたらこう思うのは普通なのだ。なあ隼人、お前は今どんな気持ちでそのやわらかおっぱいサンドイッチを味わっているんだ?




 隼人にとって、兼久と東二は掛け替えのない友人だ。

 彼ら二人が居てくれたからこそ、家族が居ない寂しさをある程度緩和出来ていたと言っても過言ではない。そんな風に得た繋がりは今までも、そしてこれからも続いていくモノだ。


 まあ、隼人にって既に寂しさを一時すら感じる余裕はなさそうだが。


「ねえ藍那、流石に教室で抱き着くのはどうなのかしら?」

「姉さんだって抱き着いてるよね? そんなにおっぱい押し当ててさ!」

「あなただってしているでしょうが……」


 亜利沙と藍那にとって、隼人はとても大切な恋人だ。既に自分の全てを捧げていると言っても過言ではない。同じ男を愛する同士でもある姉妹、お互いに心から信頼しているし親愛の情を抱いている。だが、そんな二人でも隼人が絡むと時には張り合うこともしばしばだ。


「亜利沙と藍那……その、離れてもらえると嬉しいんだが」

「……姉さん、隼人君が困ってるよ」

「そうね……いっせーので離れましょう」

「分かった」


 亜利沙の言葉に藍那が頷き、二人は一緒に隼人から離れた。離れたとはいっても距離を取ったわけではなく、その男なら誰もが一度は揉みしだきたいと妄想した胸を離したに過ぎない。


「それにしても、隼人君も段々慣れてきたね? 私たちがここに来るの」

「そりゃあ慣れるよ。というか、それ以上に二人とこうして一緒に居られるだけで満足してる」

「……好きよ隼人君」


 隼人から伝えられた嬉しくなる言葉にすぐに亜利沙が反応した。隼人と恋人同士になってから今日に至り、亜利沙は隼人の言葉一つで様々な反応を見せる。当初に見せていた隷属したいと願う心は無くなっておらず、時々二人でご主人様とメイドさんごっこをする時はそれはもう凄いことに彼女はなってしまうくらいだ。


 頬を赤く染め、教室だというの隼人を求める顔を亜利沙はしていた。藍那はそれに気付き、自分も我慢しているんだからという意味を込めて軽く頭を叩く。


「痛いじゃないの……」

「姉さんが悪いんでしょ。ここ、教室だからね?」


 人前で発情するなんてみっともない、そんな風に藍那は胸を張った。

 しかし、彼女は忘れているのではなかろうか。かつて眠っていた隼人の手を使って口には出来ない行為をしてしまったことを。当然、それを隼人は知らないし亜利沙も当然知らない。


「まあ俺も男だし、少しエッチな漫画で読んだ感じで学校でってのも良いなとは思う。流石にそこまでの度胸はないけど……?」


 それはある意味、そんなシチュエーションもいいなぁと叶いもしない妄想だった。だが隼人は忘れていた。そんなことを口にしてしまえば、隼人の前でだけ淫らな一面をこれでもかと醸し出す二人が黙っていないことを。


「姉さん、私たち求められてるよ♪」

「えぇ。隼人君ったら大胆なんだから♪」


 これは近い将来、隼人が口にしてしまったことが実現してしまいそうだ。早まったなと苦笑した隼人だが、この魅力的な二人に囲まれていてはそんな風に考えが及んでしまっても仕方ない。


「それじゃあ隼人君、私たちは戻るね」

「また昼休みに来るわ」

「あぁ。またな」


 時間が来たことで二人は教室に戻っていた。

 ちなみに、隼人が二人と付き合っていることはまだ公にはされていない。だからこそ隼人と姉妹の関係を気にする男子は多いし、それを気にすることなく二人に告白をする者が居るのもまた事実だ。


 当然隼人もそれを知っているし、姉妹からしても必要のない心配をしてほしくなくて悉く無視を心掛けている。ある意味、お互いに対する独占欲が交じり合っているのが今の彼らだったのだ。




【あとがき】


今続きみたいなのを書いているのは気分みたいなものです。

感情の向くままに書きたいことを書いていくのでよろしくお願いします。

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