年越し前の優雅な日常

「……ぅん………あん……っ!」

「気持ち良い?」

「うん、とっても良いよぉ♪ 隼人君が私の一番効くところを刺激してくるから凄く気持ち良い。そこ、そこをもっと揉んでぇ!」

「……藍那さん」

「あはは♪ ごめんごめん」


 如何にもな声を出す藍那に俺は顔を赤くしていた。

 さて、誤解がないように言うなら俺たちは決してそういうことをしていたわけではない。肩が凝ったように藍那が揉んでいたので、普段のお礼も兼ねて俺が藍那の肩もみをしていたのだ。


「……ふわぁ……でも凄く気持ちいいのは本当だよ? お母さんに良くしてくれてるみたいだしそれで?」

「それもあるけど母さんにもしてたからさ。お墨付きだぜ?」


 ちょっとかっこよく言ってみると藍那はクスっと笑みを浮かべた。


「なるほどね。凄く気持ち良いのも確かだけど、ちゃんと隼人君から思い遣りを感じる揉み方なのもあるんだろうね」

「そっか。それなら嬉しい限りだよ」

「うん♪」


 振り向いてそう言ってくれた藍那の言葉に俺も嬉しくなって笑みを浮かべた。

 さて、今日はついに年末最後の日だ。午前に新条家の大掃除を終わらせ、そして午後の三時くらいだが俺の家の方も大掃除が終わった。亜利沙と咲奈さんは年越し蕎麦などを買いに出ているので今は藍那と二人っきりだ。


「ねえ隼人君もっと揉んで? もっと隼人君の手で気持ち良くなりたいよ♪」

「……その言い方が大変下半身に悪いんですが」

「ふふ、意識してま~す♪」


 だと思ったよ!

 ただでさえ甘い声音なのに艶めかしい声を出されると情事の時を思い出してちょっと反応しそうになってしまう。とはいえ藍那も声を出さないように意識はしてるんだろうけど、それでも気持ち良くて声が出るのだとか。


「ほら、エッチの時も声が出ちゃうのと一緒だよ。私の体はもう隼人君に触れられるとエッチな反応をするように調教されてるからさぁ」

「言い方よ言い方」

「いいじゃんあながち間違ってるんじゃないんだし」


 俺は間違ってると声を大にして言いたいけどなぁ……。

 それからしばらく、相変わらず艶のある声を漏らす藍那の肩を揉んでいるとこんな提案をされるのだった。


「ねえ隼人君、そのまま腕を前に伸ばして?」

「うん」

「そのまま少し下げて?」

「うん」


 正直、ちょっとボーっとしていた俺が悪かったのだ。

 耳に届く藍那の言葉の言う通りにした結果、そういうことになるのは必然だった。


「そのまま内側に手首を曲げて?」

「うん」

「そしてガッシリと握りしめて?」

「うん」


 言われたように手首を曲げてガッシリと握りしめた。

 手触りの良いニットのセーターの感触をまず感じ、そして大きな膨らみを俺は握りしめてしまっていた。


「……はっ!?」

「あはは、隼人君はエッチだなぁ♪」


 そう、つまりはそういうことだ。

 ボーっとしていた俺を誘導するように藍那は自身の胸に俺の手を誘った。しかも絶対に離さないようにと俺の手を抑えるように彼女も自分の手を重ねた。


「……ってあまり慌てることでもないのか」


 今更服の上から胸を触るくらいのことで驚くことは何もない。直で触ってるし揉んでるし吸ってるし……こほん、やることは何度だってやってるのだからこれくらい全く照れるようなことじゃない。


「お客様、今度はそちらのマッサージをご所望ですか?」

「うん。念入りにお願いしますね♪」

「畏まりました」


 全く、新年を前にして俺たちは何をやってるのやら。

 まあ俺も藍那の雰囲気に流されるように彼女の要望通り指に力を入れるのだった。そういえば少し前から気になっていたことがあるんだけど……俺はそれを藍那に聞いてみた。


「なあ藍那、もしかして少し大きくなった?」

「あ、分かった? 二センチ大きくなったんだよ」

「……へぇ」


 いや、気になったとはいっても確信があったわけでない。適当に言ったようなものだが藍那の胸はまだまだ成長しているらしい。以前にバストは九十一と言っていたから九十三になったってことか……大きいなぁやっぱり。


「まだまだ成長するというのか……」

「ふふ、流石にここが打ち止めじゃないかなぁ? ま、もっともっと隼人君に愛されたら分からないけどね♪」


 これ以上大きくなったらもっと肩が凝ってしまうから大変だぞ? そう伝えると確かにねと藍那は笑った。肩を揉むはずだったのに胸を揉むことになったが、俺の手の動きは止まらなかった。


「……っ……はぁ♪」


 段々とさっきの演技のような艶めかしさではなく、男の本能をくすぐる本物の甘い声が藍那から漏れ出した。下着の上からも分かるほどに張ったそれの存在感もしっかりと感じられ……だが、藍那は我慢するように深呼吸をした。


「……ふぅ。流石にこれ以上は我慢出来なくなっちゃうね。私としてはこのまま部屋に行くのもいいけど姉さんたちに抜け駆けって言われて文句言われちゃう」


 だな……というか俺もあれ以上続けたら色々と危なかった。いやいや、全然危ないけどさ。ちょっとひょっこりさんしている分身から意識を逸らしていると、ちょっと待ってと藍那に呼び止められた。


「どうした?」

「流石に苦しそうだから任せて。ほら隼人君、こっちに座ってね?」


 ……それから一時間経たないくらいで亜利沙と咲奈さんが帰ってきた。

 両手に抱えた買い物袋を受け取ると、二人が俺に近づいてスンスンと鼻を鳴らして匂ってきた。なんだ? 二人も知ってる通り俺はちゃんと風呂に入ってるから体も洗ってて変な臭いはしないはずだけど……。


「二人とも?」


 俺が聞くと、咲奈さんは苦笑したが亜利沙が頬を膨らませた。


「全くもう、私たちが買い物に行ってる時にしたのね?」

「なんで!?」

「隼人君、その反応は肯定と取りますよ? まあ匂いで分かりましたけど♪」


 ……え、そんなに匂うのか!?

 俺は自分の体を匂ってみたが当然分からない。私不満よと言いたげな様子の亜利沙を宥めるように藍那が加わった。


「まあまあ姉さん、本番はしてないんだしいいじゃんか」

「……そういうのは私の役目でしょ。隼人君がムラムラしたら私を使ってほしいじゃない!」

「……最近は出てこないと思ったけど姉さんの病気再発?」


 言い合いをする二人に溜息を吐き、俺はジュースをコップに注いでソファに戻った。咲奈さんも俺の隣に座り、外は寒かったから温めてと抱き着いてきた。


「やっぱりこうしてると温かいですね」

「ですねぇ」

「ところで隼人君、藍那とどんな風に過ごしたんですか?」

「……実は」


 最初は肩を揉んでいたが、流れで胸を揉むことになり気分が乗ってきて本番ではないがちょっと藍那とそういうことをしたと伝えた。まだ後ろで二人がああだこうだ言い合っているが、そんな二人を見て苦笑した咲奈さんが俺を見た。


「まあ、今更そんなことで嫉妬はしませんけど……それでも私たちの誰もが思ってるんですよ。ムラムラしたら私を……って」

「……なるほどです」

「どうです? まだ出ますか?」


 あの、それは一体どういう意味を含んでいるんですか?

 舌をペロッと出した咲奈さんが顔を近づけ……っと、そこで亜利沙と藍那が傍にやってきた。


「もう母さんもよ! 隼人君!!」

「おっと!?」


 藍那にも咲奈さんにも負けない、そんな意思がありありと分かる勢いで亜利沙が正面から抱き着いてきた。しばらくは絶対に離れないと分かったので、俺は亜利沙の頭や背中をずっと撫で続けるのだった。


「年末なのに私たちは変わらないねぇ」

「それが私たちでしょ。さあ藍那、亜利沙はこんな様子だからお蕎麦の用意を手伝ってくれる?」

「は~い!」


 うん、本当に年末なのに騒がしい。

 でも……やっぱり去年の静けさに比べれば全然明るくて心地が良かった。


「……隼人君、ちゅーして?」

「……おぉ」

「どうしたの?」

「いや、亜利沙がそんな言い方をするのは珍しいなって」

「それだけ少しでも甘えたいのよ。ちゅー……しよ?」


 あれ、なんか今日の亜利沙はいつもと違うぞ……。

 まあでも、当然俺はその要望に応えるのだった。さあ今年ももうすぐ終わりを迎えるが、とても素晴らしい年明けを迎えることが出来そうだ。




【あとがき】


こんなにも

エッチな年越し

おくりたい

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