009 イケメン勇者御一行様がしつこい

「魔王様、勇者です!」


 この声はエリーたん?

 ちょっと若い気がするけど、帰って来たんだねー!

 お帰りー!


「うむっ、参るぞ!」


 俺が扉を開けると蛇の尾が見える……。

 Oh……ウロ子じゃねえか。


 名前の由来?

 鱗とウロボロスかけたんだよ?

 説明させんな、恥ずかしい!


 ちなみに彼女はラミアの上位種らしい。

 俺からすれば何がどう違うのかさっぱりだけど。


 まあいいや、とりあえず今は勇者が先決だね。


「男? 女?」


「男です」


 あっそ……なんか、どうでも良くなってきた……面倒くさいな。

 男なら玉座の間に行くのはゆっくりでいいや。

 全員にテレパシーも送っとこ……。




『適当に遊んでやって差し上げなさい!』




 よしオッケー。

 それじゃ玉座の間に行く前に、昼飯でも食っていくか。


「先に食事を済ませてから行こうと思うのだが、供をするか?」


「よ、余裕ですね。是非ご一緒させて頂きます」


 ということで指をパチンと鳴らして食堂に移動!

 もちろん、ウロ子も連れて。


「すごいですね……魔法耐性の高い私を一緒に転移させるなんて」


「そうか? 転移魔法ってそういうものじゃないのか?」


「……はあ」


 なんだその気の抜けた返事は?

 普通はできないものなのか?

 対象と転移先を選んで発動するだけじゃないのか?


「強制的に転移させられるということは、いきなりマグマに落とされたり海の底に沈められたりするわけですから、一応レジストの対象にしてるんですけどー」


 ふーん……よくわかんね。

 まあいいや、今は飯だ!


 という訳で、本日のビックリドッキリチートマジック!


 え、料理長がいるだろって?

 嫌だよゲテモノ料理しか出てこないもん。

 一応美味しいけどね……見た目って重要じゃん?


 だから魔法で作った!


「クッキング!」


 ちなみに、俺が食べたい物が出てくる。

 今日はラーメンにしてみました。


「いきなり食べ物が……本当に魔王様はでたらめですねー」


「まあ、魔王だからな。ほら、冷めない内に食うぞ」


 ――ズルズルズル。


 美味しい……。

 やっぱり、日本料理サイコー!

 拉麺は中華?

 それは諸説ありだ!

 日本のラーメンは日本料理だ!


「変わった料理ですね。美味しいですけど魔力栄養素は0ですね……」


 そうなの?

 まあ、美味しいならいいじゃん。

 魔力栄養素とか俺いらないし。


 ということで美味しく頂いた辺りで状況を確認してみる。

 勇者来るまで、あと約30分か。




『お前らもう少し可愛がって差し上げろ』




 これで、1時間は持つかな?


「ウロ子……俺は少し寝るから1時間経ったら起こしてくれ」


「はあ……」


 ウロ子に若干呆れられてるっぽい。

 別に野郎の勇者とかどうでもいいしね……。


「そういえば、魔王様はエリー様のお膝で寝られるのが好きだとか聞きました。 私の膝……使われますか?」


 若干嫌そうね。

 ていうか膝どこ?

 まぁ、厳密には太ももだけど……。


「いま何か失礼なこと考えてませんでしたか?」


「いや、別に……考えてたけど? 太ももどこ?」


 やべっ、誤魔化そうかと思ったけど好奇心の方が勝ってしまった。


「……まあ、下半身蛇なんで太ももありませんけどね。取りあえずとぐろ巻くんで丁度いい高さの位置に頭を乗せてください」


 ですよねー。

 上半身は可愛い女の子なのにねー。

 とぐろ巻くとか……蛇丸出しだねー。


「……閃いた!」


 何を思いついたかって?

 コイツ上半身は美少女なんだよ!

 今まで見た事ないくらい、綺麗な女の子。

 マジ海外の美少女レイヤーさんが本気出した感じを素でいってるの。

 で、蛇の部分に頭置くじゃん?

 下半身がギリギリ視界から消える範囲で下から美少女を見上げるの……。

 割と乳もあるし……結構幸せな景色じゃね?


「なんか、嫌になってきたんですけどー」


「むっ、気にするな。どれ、ちょっと試してみるか……」


 あえてとぐろを巻かせずに、横向きに座らせて腰の下に頭を置く!


「そこ……微妙な位置です……」


 え、敏感な場所だったの?


 つっても蛇の性事情なんてよく分からんし、興奮はしない。

 ……が、思った以上に良い!


 景色もだが、太い蛇の尾は柔らかくて冷たくて気持ちいい。

 ああ……景色を堪能したい気もするが、この枕最高だわ……。

 すぐに眠気が襲ってくる……。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



「魔王様……そろそろ……」


 あっ、えっ?

 寝てたの俺?


「これ、恥ずかしいですね……エリー様すごいです。きっとお嫌なはずなのに」


 おいいい!

 それ本当に?

 俺マジでショックなんだけど。


 いつも正座して膝ポンポンしてどうぞってやってくれるのに……。

 嫌々だったとかマジ辛いよ……?

 嘘だよね?

 パワハラとセクハラのダブルパンチしてないよね?


「そっ……そうか? 俺は気持ちよくてよく寝れたが……」


「そうですか? それはよかったですね」


 なんかそっけない。


「まあ、また機会があればやらせて頂きます」


 顔赤いけど……そんなに嫌だったのかなぁ。

 でもまたやってくれるみたいだし、いっか。

 これは病みつきになるわ……。


 よし、じゃあ魔王城玉座にワープ!


「相変わらずですね……」


 膝枕のまま転移したら呆れられた。


 おー扉が豪快に開いたなー。

 丁度良かった。


「魔王! お前を倒しに……って、お前は何をしてるんだ!」


 なんだ半端痴女か……。


「うわー……そんなんでも良いんですかぁ?」


 エセドジっ子に汚い物を見る目で見られてる。

 ご褒美ですか?


「そんなに追い詰められてたなんて、やっぱり童貞だったのね……」


 ほざけビッチウィッチ!


「くそっ、こっちは必死でここまで辿りついたというのに、余裕だな魔王!」


 やっぱりイケメン勇者御一行だったのね。


「うむ、ご苦労! テレポーテーション」


 面倒くさいしこいつら口悪いから要らね。

 とっとと、戦士と僧侶と魔法使いを送り返す。


「よく来たなお笑い勇者」


 なんか2回目とか、もう対応面倒くさくなってくるよねー。


 あっ女勇者ちゃんは別枠だから。

 最近来てくれないけど……心折っちゃったかな。


「くっ……3人をどこにやった!」


 焦ってるなー。

 どうしようかなー?

 本当のこと言おうかな……いや、そうだ嘘ついちゃおっと!


「ん? うちのオーク部隊の詰め所に放り込んできた」


「魔王様サイテー……」


 えっ?

 ウロ子?

 そんな目でみないで……興奮しちゃう。

 ……まぁ蛇には欲情しないけど。


「きっ、貴様! なんてことを!」


「ふっ……さっさと助けに行かないと面白いことになるぞ……」


 イケメン勇者がこっちを睨み付けてくる。

 てか、完全に心折ったと思ってたのに意外とタフね君たち。


「とっとと場所を教えろ!」


「えー……やだー……」


 なんで、教えてもらえると思うのかなー?

 勇者って魔王に何を求めてるんだろ?


「くそっ、魔王覚えておけよ!」


 イケメン勇者が慌てて出ようとする。

 そうは問屋が卸しません。

 魔力を使って扉を閉める。


「魔王! なんてことを!」


「お前は俺を倒しに来たんだろう? ならば俺を倒せばいいじゃないか……。

まあ、わしを倒したところでオーク共は止まらぬがな! はっはっはっ!」


 俺が馬鹿笑いしてると、斬撃が飛んでくる。

 おー3日しか経ってないのに結構進歩してるじゃん。

 まあ、魔法障壁があるから平気だけど。


「早く倒さねば、3人の嫁ぎ先が決まってしまうぞ!」


「くそっ! くそっ!」


 すげーな。

 こんな短期間でここまで成長するもんなのか勇者って。

 それでも雑魚だけど。


「何故だ! 新たな加護まで手を入れて来たっていうのに……」


 あー、加護とかあるのね。

 そうだ、それならちょっとからかっちゃおっと!

 魔法障壁にひび入れてっと。


 ――ピキッ!


「魔王様っ!?」


「ば……馬鹿な!」


 いいねー、ウロ子ちゃんまで焦ってて。

 なんだかんだ言って心配してくれるのねー。

 でももうちょっと付き合ってねー。


「どうやら無駄では無かったようだな! 斬り裂け! ブレイブスラッシュ!」


 魔法は分かるけど、必殺技って名前言う必要あるの?

 ここだとばかりに必殺技放ってるけど、最初から撃てばいいのに。

 コスパ悪いのかな?


 まあ、いいか。

 とりあえず幻惑魔法かけてっと……。


「なっ……なんだこの力は……! 俺が……防げないだと?」


 どうこの迫真の演技?


 ハリウッドからスカウト来ちゃうかもなー。

 どうしよう魔王と俳優の兼業って結構大変かなー?

 後は身体が真っ二つになった映像をウロ子とイケメン勇者に見せてっと。

 ついでに扉も開けたげる!


「ぐわああああ!」


 さらに苦しそうに口から血とか吐いちゃったりして。

 ついでに下半身は灰にでもしちゃいますか……。


「いやああああああ!! 魔王様ああああ!!」


 いやー本気で心配してくれるんだー。

 ウロ子可愛いよー。


「今は生死を確認している暇はないか……!」


 イケメン勇者は踵を返して扉に向かって走る。


「そこの魔族! お前も後で必ず滅ぼしてやる!」


 去り際にカッコよく酷い事言うねー。

 悪の親玉倒したら殲滅戦ですか?

 本当に救いようが無いクズだな勇者って。

 まあ、俺ならこの状態でも生死の確認は怠らないキリッ!


「待て勇者! 貴様は絶対に許さん!」


 勇者こっちも見ずに出てったね……。

 めっちゃ焦ってるね……。


「魔王様……」


「何?」


 ウロ子、涙ポロポロ流して可哀想に……よっぽど嫌なことがあったんだね。


「えっ? キャー!」


 ウロ子を抱きしめてポンポンしてたつもりだったけど、幻惑魔法解いてないわ。


「上半身だけなのになんで生きてるんですかー!」


「あっ、ゴメン」


 俺が幻惑魔法を解除すると、ウロ子がポカンとしている。


 ドッキリ大成功!


 ってやりたいけど、もう1人のターゲットがそろそろ大広間の扉開けそうだ。

 このタイミングで良いかな?


 えいっ!


「えっ?」


「おう、忘れものか?」


 勇者が心底驚いた顔をしてる。

 すごく焦ってる。

 そうだよねー、こんなとこでゆっくりしてる訳にはいかないもんなー。


 ちなみに大広間の扉と玉座の間の扉を一時的に繋げてみました。


「魔王……死んだはずじゃ?」


「あんなショボい攻撃で倒せたとでも思ったのか?」


 俺が両手を振って無傷ですアピールをすると、勇者がワナワナと震え出す。

 怒ってもどうしようもない力の差があるって分からないかなー?


「……騙したのか?」


 いやいや、そっちが勝手に出ていったんじゃん。

 ……いや、よく考えたらあれは完全に騙してますね……はい騙しました。


「ほれほれ、そんなこと気にしてる場合か? 3人が心配じゃないのか?」


「うおおおおお! 斬り裂け! ブレイブスラッシュ!」


 ほう、怒りの度合いで威力って変わるんだ。

 さっきとは桁違いだねー。


「魔王様!」


 ウロ子が間に割って入る。

 ダメだぞウロ子たん。

 ウロ子たんが食らったら鱗の2~3枚は取れちゃうよ?


「よい、この程度避けるまでもない」


 俺はそういってウロ子を後ろに下げる。

 そして当たった瞬間に吹っ飛んで見せちゃおっと……。


「なにっ? さっきとはまるで威力が……馬鹿なー!」


 ここで幻惑魔法を発動!

 今回はウロ子にも楽しんでもらえるよう、勇者だけにかけとこうか。

 体が霧散して核っぽいのが弾ける映像にしよう!


「あれっ? こ……今度こそやったのか?」


 イケメン勇者が自分の手を見て不思議そうにしている。


「そんな事よりクリス! セリー! ナナリー! すぐ行くからな!」


 そういってイケメン勇者が部屋を飛び出してった。

 アイツ馬鹿だろ?


「……魔王様? 説明してもらえますか?」


 うおっ……ここにも怒れる人がいた。

 こっちはやばい……勇者なんかとは桁違いに強いからな。


「さっきのは幻惑魔法をかけて俺が死んだように見せただけだ」


「では先ほども?」


「うむ……」


「私にまで? なんで?」


 うわ、これメッチャ怒ってるわ……。


「あっ、ちょっと待って勇者が大広間に着くわ……」


 とりあえず大きい声でウロ子を制止してっと。

 もう一回ワープ!


「ッ……馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿なあああ!」


 バカバカ失礼な奴だな……あと馬鹿はお前だ!

 てか真面目な奴をいじっても思った程、面白くなかったわ。


「んっ? まだいたのか? 流石にもう手遅れだろうなぁ」


 俺の言葉にイケメン勇者が膝を突く。

 なんかブツブツい言ってるし怖いなこいつ……。


 まあ、いいや!

 サヨーナラー!


「テレポーテーション」


 うわっ、勇者がこっちを見たけどメッチャ目が血走ってる。

 怖いわ!

 あっ、消えてった……。


「ま・お・う・さ・ま?」


 ハッ……背筋に悪寒が……こっちも目が血走ってる。


「えっと……面白かっただろ?」


「ぜんっぜん、面白くなんてないですー!」


 ウロ子の声が魔王城をこだまして沢山の部下が集まった。

 その後エリーも帰って来て、正座で説教される羽目になりました……。


 ウロ子には、心の底から謝ってチョコレートパフェ出して許してもらいました。

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