007 可愛い勇者がやってきた
「魔王様、勇者です!」
「またぁ? 今度はどんな奴なの?」
このやり取り何回目だろう。
「驚かないで聞いてください! 女の子です!」
え、マジで?
女の子キタ――!
「うむっ! すぐに参る!」
「魔王様?」
エリーがジト目をこっちを向けてくる。
ありがとうございます。
転移で玉座の間に移動する。
遠くで剣戟が聞こえる。
すぐに俺は部下全員にテレパシーを飛ばす。
『勇者を傷を付けることは許さん!』
部下全員が動揺するのを感じるが、別に気にしない。
すぐに玉座の間の前に来る気配がする。
それから一旦間を置いてから扉が一気に開かれる。
まあ、今回は怪我させるなって命令だったしね。
回復いらないよねー。
「お前が魔王か?」
「うん、そうだよー!」
「そっ……そうか……」
あっけらかんと答えてやったら、なんか唖然としてた。
勇者若いな……10代半ばくらいかな?
こんな子に魔王討伐とか、王様酷くね?
女神の啓示で決まるんだっけ?
女神とか本当にいるのかな?
俺とどっちが強いかな?
「勇者様、ここは私が……」
うわっ、むっさいオッサン戦士……邪魔!
「テレポーテーション」
はいっ、さよーならー!
「おっ、お父さん?」
えっ、お父さんだったの?
父親に勇者様呼ばわりされるとか、微妙だよねー。
本当に酷なことするわ、王様は。
「くっ、勇者様これはヤバいかもしれません。私が囮になります」
むさいオッサン魔法使いだ……これも身内とか言わないよね?
「オルガ、無理するな」
違うみたいですね……ならさよーならー!
「テレポーテーション」
「オルガ!?」
あと2人……あぁ、もう1人も男か……男僧侶ね?
サヨーナラー。
「テレポーテーション」
「グレッグー!」
ウッシッシッシ、邪魔者排除しちゃった。
「これで二人っきりだね」
「ゴホン……」
あれっ?
エリーもう来たの?
「魔王様?」
「ごめんなさい……調子乗っちゃいました……」
エリーに睨まれたら謝るしかないよねー。
「卑怯な真似を、皆をどこにやった!」
勇者ちゃん怒っちゃだめだよー。
っていうかメッチャ足震えてる可愛いー。
「魔王様?」
側近が優秀過ぎて辛い……。
辛くなんてないやーい!
念願の女勇者だし!
俺殺しに来てるんだから、何してもいいよね?
ほらっ、俺魔王だし。
「魔王様!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ごめんなさい……」
俺はエリーの前で正座している。
女勇者?
とっくに帰ったよ……。
エリーが送り返したよ……。
足が痛くて辛い……。
「ちょっと可愛い子が勇者だからって、デレデレしてみっともないです!」
あれっ?
嫉妬してるの?
嫉妬してるのかな?
「今日は晩ごはん無しです!」
なにその罰、可愛い!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「魔王、この前はよくもやってくれたな!」
女勇者キタ――!
「俺は何もやってないよ?」
「せっかくここまで来たのに、速攻で町に送り飛ばしたじゃないか!」
確かに……ある意味では酷いかもね。
これじゃ勇者も何のために頑張って来たのから分からんもんな……。
つーか、僧侶と魔法使いがいない……どした?
「今日は二人?」
「くっ……魔法使いと僧侶は……死んだ」
はっ?
えっ?
転移させただけだよね?
場所が悪かったとか?
いや、あそこ平野部だし!
たまたまキャンプファイアーでもしてたとか?
「魔王という言葉を聞いただけで、震えて動けなくなった……勇者の仲間として
死んだも同然だ!」
あ、そういうことね。
紛らわしいよ?
でも、わざわざ説明してくれてサンクス!
優しいね、流石勇者様!
正直焦ったわ。
「私は何があっても勇者様に付いていきます」
父親が、うつむいて拳を握る勇者の肩を叩きながら慰める。
まぁ、貴方は保護者だしね……。
麗しき親子愛!
でも今は邪魔!
「テレポーテーション」
「また!? お父さーん!」
勇者が超ビックリした顔してる可愛い!
「魔王様?」
うっ、エリーたんに睨まれた。
はいはい、分かってますよ。
ちょっと真面目になろう!
「勇者、お前なんで俺殺したいの?」
とりあえず、気になったし聞いてみよっと。
「お前が嫌いだからだ!」
「は?」
「聞こえなったか? お前が嫌いだからだ!」
なんで2回言ったし……。
大事なことだから?
酷い……魔王でごめんなさい……辛い……。
あれっ?
なんか急に後ろか寒気が……。
「魔王様がお嫌いですって?」
うわあ、エリーがメッチャ怒ってる。
俺のために?
魔王で良かった……嬉しい。
「当たり前だ! 魔王が嫌いじゃない人間なんていない!」
おいいいい!
それは、流石に何がなんでも言い過ぎでしょ!
そんなわけあるかーい!
「貴女……生まれてきた事を後悔させてあげるわ……」
やべっ、エリーたんキレちゃった……。
これ、あかんわ……。
「くっ、なんて魔力……魔王の他にこんなに強い魔物がいるなんて……」
めっちゃ震えてるよ……。
ついでに、エリーたんの怒りで大気も震えてるよ……。
ってことで……。
「テレポーテーション」
はいっ、サヨーナラー。
「魔王様?」
「あっ、なんかムカついたからつい飛ばしちゃった。テヘッ」
ぶつけようのない怒りで、エリーたんおかしくなりそうです。
しょうがない……このままじゃ女勇者ちゃん死んじゃうし……。
そうそう、ついでにエリーたんの機嫌も取ろうっと。
「まあ、俺のために怒ってくれるのは嬉しいが、俺は笑っている方が好きだぞ」
そして、ここでキリッ!
みるみる顔が赤くなるエリー……チョロいぜ!
っていうか魔王城なら、かなりモテモテなんだぜ俺!
種族問わずだがな……辛い。
「まっ……そんな言葉では誤魔化されませんからね!」
エリーたん、めっちゃ動揺してる。
顔真っ赤っか……効果覿面過ぎ、チョロ過ぎて笑える。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「魔王様、またあの女勇者です! アイツがまた来ました!」
エリーたん、恨みこもってるね……。
「うっ、うむ参ろうか……」
「もう、殺しても良いですか?」
物騒な事言うなよ。
というか、彼女もめげないなー。
玉座の間で待つと、今日も二人で来てた。
お父さんが若干、面倒くさそうになってる。
なんでかって?
「テレポーテーション」
はいっ、サヨーナラー!
って、すぐに送り返すからね。
「お父さーん!」
お決まりの流れです。
「じゃあこの前の続きねー! なんでお前ら俺が嫌いなの?」
「お前が魔王だからだ!」
身も蓋もない……。
エリーたんのこめかみがヒクヒクしてる。
女の子のこういう姿って苦手。
「質問を変えよう。なんで魔王が嫌いなんだ?」
「知らん! 嫌いだからだ!」
なんじゃそりゃー!
おかしいだろ!
なんか理由の一つくらいあってもいいよね?
これってあれか?
転生チートの中でもちょいちょい見かける女神陰謀説出てきたでおいっ!
実は神が黒幕で裏で糸引いてました的な?
まあ、どうでもいいや。
とりあえず、こっち優先やね。
「そんなわけあるか! 理由くらいあるだろう?」
「人間は産まれた時から、魔物を嫌い、魔族を嫌い、魔王を嫌うものだ!」
酷いぞこの世界!
これ、人間と友好はかるの無理ゲーじゃん……。
「魔王様? 流石にこれはもう人間滅ぼしてもいいですよね?」
エリーたんの顔が喜色に溢れてる。
なんか、人間討伐の大義名分を得たみたいになってるね……あの顔は。
アカンでー!
とりあえず、女勇者危険だから帰すか。
「テレポーテーション」
「もー、また魔王様は!」
エリーたんが怒ってる。
まあ、それは今はいいや。
っていうか、人間に嫌われ過ぎて辛い……。
俺、元人間なのに……フフフ……魔王辞めていいですか?
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