004 肉には血がよく合うぜ
翌朝……というかもう昼過ぎだな。
チビコが昼まで寝てたから昼ごはんを食べてから話をすることになった。
場所は食堂!
メンバーは俺と、エリーと、チビコちゃんと、モー太と、蛇吉!
スッピンは日光が苦手だとかで寝てる!
そして、何故かモー太が今日はエプロン姿!
「ふっふっふ、お主は運が良いな! 今日は訓練をサボってばっかりでブクブクに肥え太ったオークの奴をシメたからな……上等な豚肉が食えるモー!」
それ、しめるの意味完全に違いますよね?
っていうかお前草食動物だろ!
そもそも部下の豚を食うとか……ブカのブタ?
まさかこれが言いたかったのか。
「わしの部下のぶ――」
「ほう、それは楽しみだな!」
言わせねーよ!
子供のハートをダジャレでガッチリキャッチ?
ブラックジョーク過ぎるわ!
見せ場を潰されたとでも思っているのか、あからさまにガッカリしてる……。
いやいや、魔王の俺が楽しみって言ったんだから喜びを表して取り繕おうよ!
「わぁ!」
チビコも目を輝かせてモー太が運んでくる皿を見ている。
俺もその皿に目をやる。
うわぁ……確かに照りと言い、滴る油といい上等な豚肉には違いない。
本当にオークなのかな?
実はただの豚とかじゃないよね?
いや、むしろただの豚であって欲しい……。
「ステーキにベーコン、ハムにソーセージ、ウィンナーまであるモー!」
モー太すげーな!
これ本当にお前が作ったのか?
目の前に並べられたお皿には、本当にうまそうな豚料理の数々が。
野菜は?
色どりとか考えないのかな?
「オークは馬鹿だからな……食われると分かっていても訓練をサボるアホが多くて助かるモー。太りやすいからすぐにバレるし!」
マジか……。
本当にオークのお肉らしい。
「これは確かに美味しいな……」
そして、一口食べてみて分かった。
肉の甘味といい、油の量といい良く肥え太った豚の肉だな。
「美味しい! ベーコンなんて年に一度の収穫祭でしか食べたことないよ!」
あー、そんなにガッツくと……。
「ムギュ、ウー! ウー! ウー!」
ほら喉に詰まらせた。
お約束ってやつだな……。
「あらあらチビコちゃんったら、落ち着いて食べないと。これ飲んで……」
そういって、エリーが赤黒い飲み物を渡す……ま・さ・か?
「ンー! ンー! ゴックン! わぁ、美味しい! ブドウジュースだね!」
なんだ……と?
俺もそれ飲みたい。
転生してから一度も飲んでない!
「あー、エリー……俺にもそれを一杯くれ」
「魔王様も喉が渇かれたのですか? でしたらいつもの特製ドリンクをどうぞ!」
血生臭い液体の入ったデキャンタを持ってきて、グラスに注ぐエリー。
そうじゃないんだ……。
飲み物が欲しいわけじゃないんだ……。
ジュースが飲みたいのだ……。
なあ、わざとだろ?
こんなに気遣いできるエリーが、分からない訳ないもんな?
「うっ……うむ。すまぬな……」
でも断れない俺!
そんな優しい俺、嫌いじゃないぜ!
魔王がジュースとかって馬鹿にされるかなーって思ったり。
「うわぁ、魔王様またアレ飲んでる……」
「今日は、何の血だろうな……よく飲めるモー……」
おいっそこのトカゲと牛!
なんか聞き捨てならないこと言ったなおい!
「今日は先日魔王様が細切れにされた幹部たちの生き血をミックスしてますわ。
芳醇な魔力をお楽しみください。」
「そっ……そうなのか?」
「うわぁ……」
あいつらの生き血とか飲みたくないし……。
チビコがめっちゃ引いてるやん。
「幹部クラスの血のミックス! しかも4体分だなんて、歴代の魔王様でも
なかなか飲めませんよ!」
エリーはエリーであたかも貴重ですみたいな言い方するなし!
そんなこと言われても、所詮は血だろう。
元人間の俺からしたら、拷問以外のなにものでもない。
けど、断ってエリーの表情を曇らせるわけにも……。
憎いぜ、八方美人な俺が。
――ゴクッゴクッゴクッ。
「うわぁ……」
「うわぁ……」
「うわぁ……」
チビコちゃんは分かる……チビコちゃんがドン引くのはまだ分かる。
だが、トカゲと牛!
何故お前らまでドン引きするんだよ!
くそ、こうなったらお前らも道連れだ!
「今日の俺は気分が良い! エリー、こやつらにもそれを」
2匹がコイツなんてことを言うんだ、といった驚きの視線を向けてくる。
「わっ、吾輩はリザードマン族なので水と酒以外受け付けませぬ。大変ありがたい申し出ですが、ここは丁重に辞退させていただきます」
取って付けたような言い訳だなおいっ!
モー太がこいつ上手いこと言いやがってって顔してやがる!
おっ何か閃いたみたいだな……モー太が顔を上げると勢い込んで口を開く。
「わしも……牛じゃからミルクしか――」
「そうか蛇吉は飲めぬのか……勿体ない。モー太は部下の豚を食うくらい
だから、当然血もいけるよな?」
逃がさねーよ!
モー太の言い訳が始まると、強引に話を遮って逃げ場をなくす。
さあ、お前にも飲んでもらおうか?
血生臭い鉄の味しかしない、クソ不味いドリンクを……。
俺がニヤリと笑うのを見て、モー太の目が死ぬ。
「モー太さんは本当に運がよろしいですわね? 美味しいお肉に、
元幹部の血……最高の組み合わせです!」
ナイスエリー!
そしてモー太ご愁傷さま……。
モー太が死んだ魚のような眼で、グラスを見つめている。
グラスを手に持って、揺らすだけで一向に口に運ばない。
「ほれっ、遠慮するな。至高の一品だぞ?」
俺にそう言われたモー太からゴクリと唾を飲む音が聞こえた。
そして、目を瞑ると覚悟したのか一気に飲み干す。
「ぶはぁぁ! 大変美味しゅうございました!」
おぉ! 飲んだぞこやつ!
涙目で血生臭い息を吐いているが、その目には達成感すら浮かんでいる。
「そうか、美味しかったか……ならもう一杯どうだ? 俺が注いでやろう!」
そういって、モー太のグラスに血を注ぐ。
「勿体ない……身に余る光栄で御座いますモー」
絶対そんな事思ってないよね?
この後、もう2杯注いだところでモー太が口を押えてトイレに駆けていった。
ざまあみろ!
あれ?
別にモー太悪くなくね?
「短時間での魔力過剰摂取による、急性魔力中毒ですかね?」
そんなのあるんだ……。
アルコール中毒みたいだね……。
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