002 部下が気持ち悪いのだけど
「魔王様……皆さまお揃いです」
側近のサキュバスであるエリーが呼びに来る。
この前の好感度上げの祭りは失敗したからなぁ……。
次こそ何か良い手が打てるといいんだけど……。
「うむ、分かった」
俺は椅子から立ち上がると、漆黒のマントを羽織る。
そもそも、このマントが良くないんじゃないかな。
いかにも悪者ですぞって感じが半端ない。
肩の留め具はドラゴンの頭蓋骨だし、無駄におどろおどろしい。
水玉模様のマントを着ればお茶目な感じにならないかな……。
「何か?」
鏡を見て溜息を吐いてたら、エリーに心配された。
「大丈夫だ」
俺にとってはエリーとその配下だけが安心できる種族だ……見た目だけはね。
俺とエリーは部屋を出て長い廊下を突き進み、会議室の前に立つ。
大きく息を吸って、気合を入れる。
気合を入れないと異形の者達との会議を乗り越えられない。
「待たせたな!」
大きな声で挨拶して入室する。
幹部の面々は全員直立して待っていたようで、こっちを見て深く頭を下げる。
種族の性質上、頭も下げれないのもいるが。
一番奥の玉座に座ると、横にエリーが付き従って立つ。
俺の右側にはリザードマンエンペラーの蛇吉がいる。
蛇吉っていうのは俺が付けた名前だ。
前はランスロットっていう妙にかっこいい名前だったから魔王権限で変えた。
小馬鹿にした名前だが本人はとても喜んでいた……魔族って不思議。
俺の左側にはデビル族の男がいる。
結構性別不明な種族多いけどこいつは分かる。
下半身が黒いヤギ、頭はヤギの頭骨、上半身は人!
スッポンポンで下半身露出狂の巨根プラプラ!
おまわりさーんコイツです!
まあいいや(よくない)
他には頭牛のミノタウロス族の長……こいつも巨根プラプラで気持ち悪い。
大ムカデオンナ……顔もさることながら足がワシャワシャしてて気持ち悪い。
こいつもやっぱり下半身露出……でも興奮しない。
頭に直接触手が生えてるメデューサっぽい化け物……。
頭が常にうねうねしててキモい。
上半身は超美少女なのに下半身蛇オンナ……。
良くわからないけど接続部キモい……こいつも下半身裸。
俺の部下こんなんばっか。
他にも腐った奴でゾンビエンペラーとかいる。
それにタコとかカエルとかとにかく気持ち悪い奴らばっかりだわ。
あー、獣王可愛いよー。
リアルライオンの頭だけど、この面子の中で見たらダントツで可愛いわー。
モフモフしてぇ……。
おっと、そろそろ本題に入ろう。
「それでは第2回友好作戦会議を行う。誰か良い案はあるか?」
「はいっ!」
さっそく大ムカデ女が手を挙げる。
足は百本だが手は6本しかない……キモい。
「ムカ娘!」
ちなみにジョセフィーヌって名前だったから改名してやった!
その時は恍惚に満ちた表情してた……魔物って不思議。
「人間どもの子供を攫ってきて、我々に都合のいいように教育しましょう!」
「却下! 子供攫った時点で敵認定だよ! はあ……他の案はないか?」
「はいっ!」
続いて勢いよくミノタウロスが手を挙げる。
「よしっ! モー太!」
こいつは確かエドガーって名前だったな。
下半身の巨根プラプラがムカつくからモー太にしてやった。
そしたら涙流して喜んでた……。
家名にするとかぬかしてたな……俺はそんな変なの絶対嫌だぞ!
クナト・モータ……あれ、悪くない?
「魔族好きな人間だけ残して、後は殺せばいいんだモー」
「馬鹿か! 人間全滅するわ!」
こいつは見たまんまの脳筋だな……。
「次っ!」
若干声を荒げて、呼びかける。
「はいっ!」
前回もチラッと登場した骸骨ヤギ頭のおっさんが手を挙げてきたな。
こいつは魔王城の頭脳担当……我が軍の参謀だ、これは期待できそう!
「よし、答えろ絶倫!」
たしか前の名前はフェルディナンドだったっけ?
見たまんま絶倫にしてやったぜ!
子孫100代まで繁栄しそうな名前だって、大はしゃぎしてたな。
「我が一族全員で、精神汚染の魔法を使って洗脳してみせましょう」
「そうじゃねーんだよ! お前ら全員馬鹿ばっかだな!」
ダメだ……威厳のある喋り方どころじゃねーわ。
「というか、人間と仲良くする必要あるの?」
これはメデューサっぽい化け物である蛇頭の意見だ。
まあ、お前じゃ人間と仲良くするのはまず無理だろうな。
トップレベルでキモいし……。
「今代の魔王様は惰弱な考えの持ち主。頭が腐っているとしか思えぬ」
ゾンビがなんか言ってくる。
リアルに腐ってる奴に言われたくねーよ!
ちなみに女らしいので腐女子って名付けてやった……悔いは無い!
「貴様ら、魔王様に向かってなんという言い様か!」
エリーが立ち上がって怒ってる。
怒った顔も可愛いよーエリーたん。
「俺たちは人間を滅ぼしてこの地を魔物の世界にするのが使命だ」
タコが調子に乗ってる……。
かっこいいこと言ってもタコだしねぇ……。
「貴様! 魔王様の命令が聞けぬというのか!」
エリーたん落ち着いてー。
「わしは、強者に従うのみ……」
ライ蔵は喋ったら可愛くないから黙ってようか?
「ふっ、ならばここで我ら4人、魔王に決闘を申し入れる」
そう言って、蛇頭と、カエルと、タコと、ソンビエンペラーが立ち上がる。
謀反かぁ……いきなりだな。
「絶対に……貴様ら絶対に許さんぞ!」
そしてさらに怒るエリーたん、鬼気迫る感じいいねー。
しかも俺のために怒ってくれて、嬉しくて涙が……。
「ふははは! 見よ、魔王が恐怖に涙しておるわ!」
ゾンビがなんか言ってるが無視だ。
それよりも謀反起こしたのが特にキモイ4匹でよかったわー。
キモイ奴等4匹も掃除できるし。
「もー許さない! 絶対に許さないんだもん! 魔王様、私に粛清許可を!」
エリーたん口調が可愛くなってる。
萌えーって、そうじゃない!
「よい……俺が全員まとめて相手をしてやろう」
パチンと指を鳴らす。
次の瞬間、周囲の景色が変わる。
あの場にいた全員を魔国領内にある広い荒野に転移させたのだ。
ここなら少々暴れても影響ないだろうし。
「はっ!? ここは!?」
「何が起こった!?」
「馬鹿な! 我らに抵抗すら許さず転移させるとは!」
「ヤベー、これアカンやつやでー」
4匹の馬鹿どもが騒いでる。
それ以外の幹部は、目を瞑って頷いている。
まあ、この4匹以外は俺と前魔王の決闘見てるしね。
カエルが焦ってるのが笑える。
「全員で私たちを粛正するつもり?」
「いや、俺1人で充分だ」
蛇頭の言葉に、指を1本立てて答える。
ソンビとタコ野郎が真っ赤になってる。
タコはリアル茹ダコだな。
「馬鹿にするな! お前ら一斉に行くぞ!」
「えー……」
カエルが嫌そうにしてる。
俺は椅子に座ったまま4匹に視線を向けるだけ。
その仕草だけで、彼等のプライドをさらにズタズタにする。
まあ、本当に座ったままでどうにでもできるレベルだしね。
それすら分からない時点で、こいつら雑魚すぎるわ。
「私たちを舐めたこと後悔しなさい! くらえ石女の熱線!」
「これで、お前もわしらの仲間入りじゃ! 腐食の世界!」
「海の帝王の名をなめるな! 大津波!」
「一応、オイラも……蛙の合唱」
4匹の幹部たちが自身の持つ最強のスキルをぶつけてくる。
1万度を越える熱線。
全ての物質を腐敗させる衝撃波。
文字通り大津波。
耳をつんざき脳を破壊するであろうゲコゲコ。
「ふっ、終わったわね……」
「あっけない……」
「魔王といっても、パッと出の無名の魔族ってことか」
「それはフラグってやつでゲロ……」
カエル……意外と嫌いじゃないかも。
4匹の幹部による総攻撃による砂煙が徐々に晴れていく。
そこには一切姿勢を変えていない俺。
魔法障壁による絶対防御を身に纏ってるからね。
「バカな!」
「ありえぬ」
「無傷だと!」
「ですよねー……」
蛙は助けてもいいかな……。
「悪くない攻撃だったぞ……では次はこちらの番だな?」
そう言って軽く手を振る。
すると5本の指それぞれから巨大な真空の衝撃波が発生する。
衝撃波は4匹の幹部を襲い、体を細切れにする。
一瞬で4匹の魔物が物言わぬ肉片と化した。
あっ……カエル助けるの忘れてた。
「流石です魔王様!」
「やはり、我が君はこうでなければ」
「やっぱ、俺はまだまだだな」
「素敵! 抱いて!」
「ああ! 魔王様の子種が欲しいですわ!」
こちら側の幹部の面々が、俺を褒め称える。
というか、下半身蛇とかムカデってどうすれば交尾できるんだろ?
まっ、いいや……する気も起きないし。
「興が削がれた……今回は解散としよう」
俺が指をパチンと鳴らすと、残された全員が会議室に戻ってくる。
また抵抗を許さず転移に巻き込まれたことに幹部たちが少し動揺していた。
でも、転移魔法ってそんなもんだろ。
「エリー、代わりを早急に手配するように」
「はっ、かしこまりました!」
いやぁ、それにしても気持ち悪いやつが4匹も減って良かったわ。
次はベッピンさんの人型が来るといいなぁー。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日、謁見の間で新たな4匹の幹部が紹介された。
「ナメクジ族のサイファです」
でかいナメクジ……俺、ナメクジ嫌いなんですけど。
タコの方が全然良いんですけど。
「アメーバ族のエルです。」
スライムに人間の顔が付いてるんだけど……。
しかも地味に美形な所が余計に気持ち悪い……。
蛇頭の方がマシだっつーの。
「チチカカミズガエル族のエリザベートですわ」
何この気持ち悪いカエルは……。
前のカエルの方がまだ愛嬌あったんですけど……。
「ミイラ族のアルファブラッドと申します……」
包帯巻こうよ?
なんで素顔晒してんの?
腐ってないけどさ……腐ってないけど……顔怖いよ。
「どうしてこうなった……」
新たな幹部を見て溜息を吐く。
まともな人型が少なくて辛い。
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