第16話 ~終~

僕は野良だ


好きに贈る

好きに愛する


主様は もう何日も

姿を見せなかった


ある日 僕はいつものように

手土産を持って

主様のおうちに行った


ふと 気になって

また窓から中を覗いた


・・・何も無い


いつもあった

パソコン

ソファ

ベッド

カーテン


無くなってる

なんで・・・どうして・・・


・・・主様はもう

居ないんだ・・・


ああ そうか

あの時居た人と

別の所に

住むんだね


そりゃそうだ

あんなに楽しそうに

笑っていたんだもの


そうか 僕は

野良なのに

捨てられたんだ


ちがう


初めから

関係なんかなかった

僕が一方的に

主様を好きだっただけ


僕は ただの猫

ただただ 偶然

助けられただけ


勝手に恩義を感じて

好きになっただけ


主様は手土産を

渡されるから

受け取ってただけ


僕がぐちゃぐちゃと

意味もなく悩んでる間

主様は もう

新しい幸せな道を

見ていたんだね


あはは そっかぁ

最初から

何も無かったんだ


僕は 挨拶すらも

しなくていい

存在だったんだ


それでも僕は

主様を大好きだよ


もう会えないけど

今までよりもっと遠くから

応援してるよ

見守るよ


何も出来ないけど

主様はそんなこと

望まないと思うけど


僕は

鋭く

大きい声で

鳴いた


僕は黒猫だ


もう見えないよね

でも確かに僕は

主様の側にいた


主様が元気でいる事が

幸せでいる事が

僕の望みだよ


さようなら

元気でね

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