第22話 結婚してみようか!

 この世界において、結婚にはいくつか種類がある。教会にお金を払って結婚証明書を貰うか、結婚証明書を城で貰い記入して国王から承認を貰うか。

 前者は平民が、後者は貴族がやるのが普通。戸籍管理のため、教会で作った結婚証明書はちゃーんとお城にも提出される。識字率が高くないので、読み書きできない平民に優しいシステムなのだ。

 教会には戸籍登録を確認する水晶が必ずあり、それに血を垂らして本人証明をしてから結婚の儀式をして結婚証明書を作ってもらうらしい。


「あの……本当によろしいので?」


 神父様がとてもオドオドしている。それはそうだろうね!いきなり大金よこして今すぐに結婚します!なんて、明らかに訳ありです!後々面倒事起きるぞって言ってるようなものだし。


「ええ」

「お願いします」


 そう言って、そっとお金を積んだ。それらしく説明するのが面倒だし、タイムイズマネー!金で解決!金持ち最高!!


「そこまでおっしゃるなら仕方ありませんね」


「すいません、少しだけお待ちいただけますか?マジョリカ様、目を閉じてください」


「え?はい」


 素直に目を閉じた。


「誰より愛しております。貴女と結婚できるなんて夢のようです。こんな形で結婚するのはいささか納得し難い部分もありますが、貴女と結婚できる喜びのほうが強い。俺を選んでくれてありがとう。花嫁姿も楽しみにしている」


「ぴあ!?」


 イケメンぼいすうううううう!?おまけに!最後敬語じゃなくてタメ口萌えりゅうううううう!!


「ジャニスしゅき…」


「!?」


 しばらく二人してフリーズしてしまった。ごめんなさい、神父様。ずっと笑顔で待っていてくれたね……。



 そんなわけで水晶に血を垂らして本人証明をして、結婚証明書にサインするわけなんだけど。


「これをどうぞ」


 神父様がヴェールをかぶせてくれた。


「わあ……ジャニス!私お嫁さんみたい?」


「ええ……とても綺麗ですよ」


 くっ、もうポリゴンでも気にならなく……いや、嘘です、超気になる。本来の姿なら鼻血もののシーンだっただろうに!くそう……早く解けてくれないか、ポリゴン化!カムバックイケメン!!


「では、結婚証明書にサインを」


 見るからに貴族な私達は書けると判断したのだろう。まあ、平民でも自分の名前だけは書ける人が多い。雇用の時とか、書けないと不便だからね。互いの名前をサインした。


「では、誓いの言葉を。ジャニス=ウルフィディア。汝は病める時も健やかなる時も、マジョリカ=ヒールディアを妻とし、愛すると誓いますか?」


「誓います。何があろうと、俺の気持ちは変わらない」


「よろしい。マジョリカ=ヒールディア。汝は病める時も健やかなる時も、ジャニス=ウルフィディアを夫とし、愛すると誓いますか?」


「誓います」


「では、ここに夫婦の誕生を宣言し、神の祝福を与える!!」


 祭壇の神像が、えっらい輝いている。そこに、あの声が響いた。


【ヒロインの一人がジャニスの特殊エンディングルート開放条件を満たしました。これより、ジャニスは他ヒロインの攻略が不可になります。また、攻略ヒロイン専属のサポートキャラとなり、他ヒロインは強制イベント以外でジャニスとパーティが組めなくなりました】


「特殊、エンディング、開放?」


 つまり、まだ何かあるわけ?

 だからなのかなんなのか、ジャニスの姿はまだポリゴンである。


「な、なんで!?」


「か、神の声!?しかし、この神託にはどんな意味が……?」


 そして、聖職者にも声が聞こえてたんかーい!というか……え?この声って神の声なの……?


 一気に体温が下がる感覚。神像が笑っているように見えた。怖い!私ホラーは苦手なんだけど!?


「あの……どうなりましたか?」


「なんか……まだ条件を満たしきれてないようです。ただ、他のヒロインからちょっかいを出される事はないと思います」


「そうですか。これでも足りないとなると……」

「……子づくりまですべきかしら」


 流石にそこまでヤればポリゴンから人間になるのではないかしら?しかし、ジャニスが真っ赤になって首を振った。


「い、いやいやいやいや!!ししししししませんからね!ま、先ずはですね!手を繋いで……いやいや、交換日記から!交換日記で互いを知ってからでお願いします!!」


「交換日記から?それはまた……だいぶ関係が後退してるじゃない。私は貴方の妻なのに」


 そうは言ったものの、流石にポリゴンと性行為はしたくないなー。


「あばばばばばば」


 ポリゴンの良い点は、わかりにくいジャニスの反応がとてつもなくわかりやすくなることね。真っ赤になって目がうずまきだわ。わかりやすくうろたえてるわー。


「とりあえず、ショコラちゃんに相談かしら」


「そそそそそうしましょう!!」


 それから屋敷に戻るまで、ジャニスは壁やらゴミ箱やらにぶつかりまくった。

 私の一言でここまで動揺するなんて、ポリゴン姿でも可愛いかもしれない……いやいや、イケメン姿のほうがいいわ!もう少しこのままでもいいかもなんて気の迷い気の迷い!!愛があっても次元の壁は超えないんだから!



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