第21話 ジャニスのエンディング条件

 とりあえず、あまりにも情報が多いので整理しよう。ポリゴン化の原因は、ゲームのスタート。そもそもなんでポリゴン化するのかはわからない。

 ポリゴン化はエンディング条件を満たし、他ヒロインが攻略不可にすることで解除される。

 現状のヒロインは、私とショコラちゃん。あと、多分正規ヒロインがいるのではないだろうか。他にもいるかもしれない。

 そういえば、悪役令嬢との出会いイベントボイコットしちゃったわ。どうなるのかしら。今から……行くのは面倒だし、明日確認しよう。そうしよう。


 とりあえず、今重要なのはジャニスのイベントとエンディングについてだ。


「説明します」


 ショコラちゃんによると、ジャニスエンド=大団円エンドというか、私と第二王子が結ばれ、それを見守るジャニスとジャニスさんヒロインの隣空いてますよエンドなんだそうな。よかった。ジャニスはゲームでも浮気をしない男だった。


「当然です。しかし、辛いでしょうね……俺」


 ジャニスの耳が珍しくしんなりしたので撫でてあげた。


「だから先輩、人気高かったんですよね。ヒロインが狙う可能性は高いかもしれません。ジャニスエンドの続きを見たいって思うはずです。ファンなら」


「ポリゴンでも?」


 あの外見は無理じゃないかしら?友人ぐらいならともかく、恋人にはしたくない。


「それで挫折してくれれば一番良いのですが、ポリゴンでも愛せる猛者もいるかもですし……ヒロインの好感度が一番低い攻略対象が魔王になりますし」


「それはそうよねぇ。ちょっと待って!魔王ってそういう理由で決まってたの!?」


「はい。マジョリカ様はご存知ない?」


「知りませんわよ!」


 い、言われてみれば面影があるかも……?周回してた魔王、いつも同じだったから気が付かなかったわ!


「マジョリカ様が死ぬと先輩が魔王化待ったなしなのですが、大抵のルートでマジョリカ様は死ぬので普通にやれば先輩が魔王になります」

「私、頑張って生き延びるわ!」


「俺もマジョリカ様を守ります」


 なんだかもう、ポリゴンでも気にならなくなってきたわ。これはこれでかわいい……いやいや!イケメンの方がいいわ!


「とりあえず、そんなわけで先輩のエンディング条件はマジョリカ様の生存と好感度ですね」


「エンディング条件を無理して満たす必要、あるかしら?私とジャニスが結婚してしまえば攻略不可にならない?流石にNTRを推奨しないわよね?」


「…………その発想はありませんでしたが、アリかもしれません!!」


 ショコラちゃんが親指を立てた。エクレアちゃんは驚いている。


「ジャニス」


「は、はい」


「私と今すぐ結婚しなさい」

「はい!喜んで!!」


 とりあえずはこれでよし。しかし、やはり逆プロポーズだけではダメか。


「では、私の両親に結婚の許しを貰いに行きましょうか。ジャニスの家は……」

「事後報告でよいでしょう。泣いて喜びます」


 だろうな。私は頷いた。


「ところでエクレアちゃん、通勤大変だろうし、うちに引っ越さない?」

「え!?」


「ファミリータイプの職員寮が空いているの。よかったらおいで。ショコラちゃんも良ければおいで。とりあえず、私達は公爵邸へ!先に戻るわね!!ジャニス、全力疾走よ!!」


「はっ!」






 ジャニスの全力はすごかった。二度と頼まない。酔った。速いし怖いし凄かった。


「す、すいません……」


「ジャニスはわりゅくありましぇんわ……」


 酔いも状態異常かと思いついて光魔法使ったら治った。便利だわ!元気になったところで、いざ出陣!!この時間なら両親は我が家にいるはず!




 両親はサロンでお茶をしているとのことなので、突撃して叫んだ。


「お父様、お母様!!わたくし、ジャニスと今日略式で結婚いたします!」


「え!?」

「あら?」


 固まる父、首を傾げる母。構わず結婚の理由について述べる。


「このジャニスは、わたくしのためなら仕事を辞めて監禁されてもいいとまで言ってくれましたの!」


「い、言ったの?」


「言いましたね」


 父がドン引きしつつ確認した。ジャニスは真顔で肯定した。


「それだけではありません!わたくしが不安だと言うのなら、喉を潰しても足を切って自由を奪ってもいいとまで!!」


「え、言ったの?下手するとこの子本気でやるよ?」


「言いましたね。というか、提案したのは私です」


 父は顔面蒼白でジャニスに確認した。ジャニスは相変わらず真顔で肯定した。そういえば、言い出したのはジャニスだったね。


「こんなにわたくしが全力で愛せる殿方は他におりません!!それに、ジャニスの部屋にはわたくしの写真が壁一面に隙間なく貼られていましてよ!私をそこまで愛してくれる殿方もおりませんわ!」


「え……なんでそんなことしたの?」


「常にマジョリカ様を反芻したくて……そもそも、近衛騎士になったのは合法的にマジョリカ様を眺められるからです」


 父は眉間をおさえていた。偏頭痛かしら?母は……何か悟りをひらいたみたいな表情だった。


「公爵令嬢ですもの、きちんとした式は卒業してからいたします。ですが、先に略式で結婚する事をお許しください!これから教会に行ってきます!」


「まあ、貴女がそう言うなら、なにか理由があるのでしょう。ジャニス様、こんな娘ですが末永くよろしくお願いします」

「言い出したら聞かないし、確かにこれ以上の条件はないだろうねぇ。好きにしなさい。書類上の夫婦になるだけでしょ?ジャニス様は離れの改装が終わり次第、同居するって聞いてたし。ちゃんと幸せにしてくれそうな相手を見つけられて良かったね、マジョリカ。おめでとう。ジャニス様……いや、婿殿。くれぐれも娘を頼む」


「はい!」

「ありがとう!行ってきます!」


 案外アッサリと許しをもらえたので、お金さえあれば結婚証明書をすぐ出してくれる教会に急ぐのだった。

 今度は酔わない程度に調整してくれた。よかった。


 

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