第20話 エンディングと解呪
そんなわけで、やってきましたエクレアちゃんのお家!山奥過ぎたので、ジャニスに途中体力が尽きて抱っこしていただくはめになった。
ショコラちゃんもエクレアちゃんに俵担ぎされている。ちなみに私は縦抱っこだ。ジャニスに嫌な顔をしないよう、念の為目隠しをしているのだが、これがまた、べつの意味であまりよろしくない。
「マジョリカ様、辛くないですか?」
「ぴ!?ちゅらくありましぇんわ!」
視界を封じること立体化の違和感は消えたのだが、イケボ攻撃に晒されているのだ。おまけに密着しているから、なんかいい匂いするし!くそう、匂いまでイケメンとかどうなってんの!?
「なんだかこう……力が抜けているようですが?」
「ジャニスの声がよすぎますのよ!いいからさっさと歩いてちょうだい!」
「かしこまりました。おい、エクレア。ペースを上げるぞ」
「了解ッス」
更に歩くことしばし。ようやく小さな家についた。廃墟一歩手前な、ボロボロのおうち。ゲームで何度も来たけど、マジで遠かったわ。
「小汚いとこで申し訳ないッスけど、石化病なんで町中では暮らせなかったッス」
石化病は伝染疾患ではないのだが、エリクサーと光属性の最上級異常回復魔法でしか治療できないほぼ治らない病であることや、その特異な見た目から嫌厭されてしまう。
「気にしませんわ。案内してといったのは私ですもの」
「かーちゃん、ただいまッス」
「エクレア……?あら、おきゃく、さま……こんなすがたで、すいません……」
ヨロヨロと起き上がるエクレアちゃんママは、左半身が石化していた。思ったより進行している。サッサと来てよかった。
「ご無理はなさらないで」
そういや、ふと思ったけど……今の私のレベルなら石化、魔法で解除できたり?
「……神の慈悲を、今ここに。エクストラステータスリリース」
ちょっと試しに使ってみたら、なんだか発動したようだ。やってみるもんだねー。
「マジョリカ様!?なんスか!?この光!」
「ただの状態回復魔法よ、大丈夫」
「こんなギラギラした状態回復魔法、見たことねえッスよ!?」
「私も初めて使うけど……成功したようね」
エクレアちゃんのママ、石みたいだった肌が普通の色に戻っている。
「母ちゃん……」
「……エクレア?」
「母ちゃん、どっか苦しいとか痛いとかない?」
「ええ、息苦しさもないわ。左手も左足も動くわ。感覚があるの。左目も見える……ああ、エクレア!あなたを両手で抱きしめられるわ!!」
「母ちゃん、母ちゃん母ちゃん母ちゃん!!よかったーーーー!!」
エクレアちゃんが号泣した。ここにいるのは野暮だろう。ジャニス達を促して、エクレアちゃんの家から出た。
「……良かったですね」
「そうね。私がゲーム通りに動いてないせいか、エクレアちゃんのお母さん、予想より症状進行してなかった?」
「マジョリカ様と因果関係はないと思いますが、そこは私も気になりました」
そもそも、私はゲームのマジョリカとだいぶ違う動きをしている。元日本人の記憶が無意識に働いたのか、時兎族への待遇とか、死亡フラグが消えている。
マジョリカの死亡フラグは、私の覚えている限りだと第二王子による暗殺か時兎族の反乱か、影と呼ばれる私直属の諜報暗殺部隊による裏切りだ。商会もここまで大きくなかった。
福利厚生と、できる人材は待遇の良さで引き止めろ。儲けは働く人間に還元しろ。やる気が出るよう素晴らしい働きは褒めろ。働く人間のスキルアップに投資は惜しむな……という方針で、気がつけば有能な人材が集結しまくり。私がいなくとも商会はまわるし、何もしなくてもめちゃくちゃ儲かるようになってしまった。
「ところで、ジャニスのエンディング条件は?」
ジャニスがヒロインに奪われるのを阻止しなくてはならない。最優先確認事項だわ。
「言いにくいのですが……マジョリカ様の生存です」
な ん で す と !?
「は!?マジョリカ様が死ぬ可能性があるのか!?詳しく話せ、ショコラ!」
衝撃で固まった私。ジャニスはショコラちゃんに詰め寄っている。
「揺さぶらないでー!今のマジョリカ様はフラグの大半をへし折ってるから大丈夫です!マジョリカ様が死ぬと、先輩が魔王になります!!」
「ショコラちゃん、詳しく!!」
私がショコラちゃんに詰め寄ったところで、どことなく見覚えがある女の子がエクレアちゃんの家から出てきた。
「……なんでショコラは二人から責められてんスか?マジョリカ様、マジでありがとうございました。このご恩は金ないし労働で返すッス。犬と呼んでください。わんわん。あ、アタシはゴリラなんでゴリゴリッスかね?」
コケシのようなおかっぱ頭に、気だるげな表情の女の子。泣いたからか、目元が赤い。
「え、エクレア……あんた、ポリゴンこけしじゃなくなってるわよ!!」
あ、やっぱり!?言動と見た目からそうかなとは思っていたけど、これが本来のエクレアちゃんなのね!ゴリラはゴリゴリとは鳴かないと思うわ。
そしてポリゴン……これ以上ない的確さだわ。カクカクしてたし、できそこないの立体ではなく今後はポリゴン化と呼ぼう!!
「マジかー。うぇーい」
エクレアちゃんは心底どうでも良さそうだ。そもそも本人は姿が変わってると思ってないわけだし、そんなものだろう。
そして、頭の中に声が鳴り響く。
【ヒロインの一人がエクレアのエンディング条件を満たしました。これより、エクレアは他ヒロインの攻略が不可になります。また、攻略ヒロイン専属のサポートキャラとなり、他ヒロインは強制イベント以外でエクレアとパーティが組めなくなりました】
「とりあえず、仮説は当たったようね」
エンディング条件を満たす事で攻略不可能になり、ポリゴン化は解除される。
エクレアちゃんのお母さんも助かったし、いいことづくめだわ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます