第23話 報告連絡相談って大事

 家に戻ると、エクレアちゃんとショコラちゃんが応接室で待っていた。


「おかえりなさーいッス」

「おかえりなさい。結局何をどうしたんですか?結婚したから個別ルートを解放したってことなんです?」


 使用人にお茶を指示して私もジャニスと席についた。


「ええ、そうみたい。略式とはいえ結婚したわ。それでもクリア扱いにはならなかったようね。もう性行為」

「うわああああああ!?交換日記からです!!」


「なんスか、交換日記って。キモ」

「結婚までしといて今更ですか?」


 後輩二人からの口撃に、ジャニスが丸くなった。頭に青い縦線が数本出ている。わかりやすく落ち込んでいるらしい。


「とりあえず、メインヒロインを探しましょう。ショコラちゃん、動きやすくなるし、貴女は薬学を学びたかったのでしょ?弟妹込みで援助するから学園に編入してちょうだい。エクレアちゃんもよ。最低限の礼儀や読み書きはできないとね。王太子殿下には、第二王子が懲りずに絡んできた報告とそれを咎めないかわりに貴女達を引き抜くと伝えるわ」


 机のベルを鳴らすと、すぐ使用人が便箋と羽ペン……に見せかけたボールペンもどきを持ってきた。羽ペンってかすれるから嫌いなの。お気に入りの特注品でシャットストリーム級の書き味!

 王太子殿下に手紙を書き、使用人に至急で届けて返事をもらうように指示した。


「かっけぇぇ……」

「マジョリカ様……」

「………(無言で激写)」


 とりあえず、ジャニスからそっとカメラを取り上げた。


「さて、学園長にも手紙を書かないとね」


 今こそ金にモノを言わすとき!王太子殿下からも学園長からも了承の返事が来た。


「そういえば、部屋は見たかしら?」


「お二人をご案内したのですが……」


 うちのメイド長が戸惑った様子だ。何か問題でも?


「そッスよ!なんスか!?あのスゲー部屋!!」


「なにかの間違いでは……?」


「わたくしは彼女達を最高ランク待遇の部屋に案内するよう言ったわよね?」


 間違えて別の部屋に行ったとか?メイド長は頷いた。


「ええ。お二人共あまりに豪華すぎると……」


 なるほど?逆なのね。豪華すぎて落ち着かないってことか。


「慣れて」

「無理ッス」

「無理です」


「汚いよりいいでしょう。エクレアちゃん、お母様は清潔な部屋での静養が必要よ。ショコラちゃん、弟妹にも最高の教育を約束するわ。これからここに住むのだし、慣れておかないとね?テーブルマナーなんかは一朝一夕では無理でしょう?」


「ぐっ」

「ぬぐっ」


 二人が納得してくれたようで何よりだ。低いランクの部屋もあるけど、彼女達は私の側で仕えてほしいので、周囲に示すためにも最高ランクの部屋に住んでもらわねば困るのだ。


「それに、そんな些事でごねている暇はなくてよ!やっておしまい!!」


 ウチのメイドさん達が二人を捕縛してあっという間に連れ去った。


「……あの二人、あれでも騎士団で上位なんですが……?」


「私のメイドの中には荒事が得意な子もいるし、あの二人は害意がない人間に手を上げたりしないでしょう?」


「それはそうなんでしょうがね……」


 ジャニスは呆然と二人が去った方向を見つめていた。


「心配は無用よ?二人は採寸と布の色合わせをしているだけ。これから貴方もするけどね?」


「え!?」  


 手を叩くと男の使用人達がジャニスを囲み、服を脱がせて拘束した。下着一枚のみである。


「動いては駄目よ、ジャニス。計測するだけだから。ほら、普段着とか下着とか、作るからね!」


「いや、マジョリカ様がいるのに醜い物をお見せするわけには!」


 ポリゴンなのが残念だわ。本来の姿ならもっと楽しかったのにー。でも、筋肉がわかりやすいのはいいわね!


「私達、夫婦になったのだもの。恥ずかしがらなくていいじゃない」


 うーん。いい大胸筋だわー。さりげなく体を撫でるとジャニスが真っ赤になってビクッとする。やだ、これ楽しい!


「!?」


「あ、私がやるわ。どことどこを測るの?」


 実は計測なんて不要だ。先日礼服を仕立てたデータを使えばいい。これはそういう遊びである。筋肉に思いっきり触っちゃおう!

 元婚約者の第二王子は相手が異性だろうと他者に触られ慣れててつまらなかったのよねー!


「ま、マジョリカ様!」


「なぁに?あら、こんな所に傷があるのね」


 胸や腹、太腿。細かい傷がたくさんある。ひとつひとつ丁寧になぞる。

 逆に背中にはない。すべすべだ。


「マジョリカ様!そそそそそそんなところに傷はありませんというか、さっきから触るだけで測ってないですよね!?」


「これから測るわよ。お尻には傷、ないの?」

「ありません!」


 ポリゴンなので楽しさ半減かと思いきや、真っ赤なエフェクトが見えるのでとっても楽しい。尻尾もピンとしている。


「あら、下着に尻尾を通す穴がいるのね」


 一応そこを測ろうとしたのだが、尻が避ける。


「………ジャニス」

「無理です駄目です!」


 男五人で抑えているのに動けるとか、流石はドラゴンスレイヤー。でも、その実力を示すべきは今ではないと思う。


「確か、尻尾の付け根が急所なのよね?」

「そうですけど、性感帯でもあるのでやめてください!」


「………………ええと」


 よく考えたら、いくら夫とはいえ、これはとんでもないセクハラではないか?

※今更ですがとんでもないセクハラです。


「…………キャインキャイン!」


 そして、耐えきれなくなったジャニスの全身が狼に変わり逃亡してしまった。新発見!もふもふならポリゴンじゃない!!


「お待ち!待たないと離婚よ!」


 ジャニスはすぐ戻ってきた。とりあえず、抱きしめて触りまくってやった。私のモフテクに感銘を受けたのか、ジャニスはだらしなく腹を見せた。アレはパンツで隠れているが、それでいいのか狼!?


「なにしてんスか?」

「ええと……そういうプレイはお部屋でしては?」


 戻ってきた二人に言われて、慌てて言い訳しようとしたが、できなかった。


「……今度からそうします」


 ごめんね、ジャニス。変態だけど離婚しないで!今度私にしてもいいと言ったら、鼻血を噴出して倒れた。本当にごめん。間違いなくセクハラだった。

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