第13話 とある護衛騎士のランチタイム
※今回はエクレア視点になります。時間も少し戻ります。
いきなり近衛騎士団長からよこされた任務は、大変不服なものだった。公爵令嬢の護衛?いや、公爵令嬢なんて金持ちじゃないッスか。護衛なんて自分で雇うでしょ!
え?学園内は護衛も侍従も入れない??そういう規則?めんどくせええええええ!例外として行く?いや、本人の護衛を例外として入れたらいいじゃないッスか!
え?体面的な問題?王家なりの誠意??そんなのアタシはしったこっちゃねぇッスよおおお!!
そんな感じで盛大にゴネ、ゴネたかいあって特別お手当をいただいてシブシブ行ったらパイセンとショコラが合同任務!?
聞いてねぇッスよおお!?あの冷血人間といけ好かねぇショコラかよおおおお!!
※ゴネられるのがわかっていて、近衛騎士団長が伝えなかった。
そして、キレようとしたら護衛対象のご令嬢が出てきた。
あかん、コレはモテる。
雄獣人の理想を具現化したかのような、完璧令嬢キタコレ。
もはや、一目で本能的にビビッときた。アタシは雌なのに、抗いようのないぐらいに惹かれる。
ゆるくウエーブのかかった黒髪の巻毛、意思が強そうな瞳に、蠱惑的な唇と薔薇色の頬。そしてなにより、ムチムチプリンなわがままボディ。何食ったらあんなにムチムチボインボインになれるんスかね?すげええ。おっぱいでけぇ。
そりゃあ、パイセンもメロメロになるわ。やんわりコレ断られてるだろって思ってても、町中の赤薔薇買い占めに走って全力で囲おうとするわぁ。
そして思ったよりも公爵令嬢のマジョリカ様は気さくで優しかった。笑うと可愛いし最高。
そりゃあ、あの血が通ってるか怪しいパイセンもメロメロになるわ。なんなの?パイセンは前世でよほど徳を積んだの?いくら払えばこんないい嫁もらえんの?しかもスゲェ金持ちで気前がいいし。アタシも結婚したいぐらいなんスけど。
そんな妄想と回想を終了し、今は激ウマランチを噛み締めている。神様女神様マジョリカ様。ご飯がうめぇッス!!
日替わりランチ……時価って怖えと思ったけどスゲェうめぇ……。
「やべぇ……なんだこれマジうめぇ……」
「私もここまで美味しいものは初めて食べましたわ」
「ショコラは貴族なんだから食べ慣れてんじゃねぇの?」
ショコラが一気に無表情になった。
「私が何故近衛で働いていると思いますの?貧乏だからですわ。結婚しようにも、持参金が払えない。払わなくても娶るようなところは、致命的欠陥ありか後妻か妾ですわよ」
「マジか……」
てっきりお貴族様だしお気楽に暮らしているかと思いきや、結構苦労していたんだな……。今後少しだけコイツに優しくしよう。
「マジョリカ様には感謝ですわね。憧れの学園に、護衛としてとはいえ来れたのですから」
「憧れ?」
「ここに通うだけで貴族のステイタスですのよ。本当はお金さえあれば薬草学を学びたかったですが……言っても仕方のないことです。せめて弟妹の学費を稼いで、私と同じ思いをさせないようにしなくては」
初めてまともにショコラと話したけど、だいぶ申し訳ない気持ちになった。今更謝るのもアレだし、今後ちゃんと同僚として扱うとしよう。
「そーなんスね」
とりあえず、真面目に仕事するとしますか。視線を観察対象であるアホに移す。マジョリカ様はパイセンに任せるとして、アホがマジョリカ様に近寄らねぇようガードしないと。
しっかし、あの女神を蔑ろにするとかマジでアホだよな。まあ、マジョリカ様は獣人受けはいいけど人間受けはしないのかな?近頃はこう……か弱い庇護欲そそる系が人間に人気だもんね。
「は!?俺の学生証が使えないだと!?」
アホが食堂でキレだした。
「使用制限がかかっておりまして、頼める範囲がこれぐらいになります……」
一番安いランチしか頼めないらしい。しかし、王太子殿下スゲェよな。アホがどんだけやらかしたのか知らんけど、弟にあんなボロ着せるとか……。まあ、横領とかもしてたみたいだし、見せしめも兼ねてるのかな。
「殿下、この者に言っても仕方ないですよ」
「そうです。帰ったら王太子殿下に」
「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」
いや、うるせぇのはお前だし。ショコラも騒ぎに気がついたらしく、何かブツブツ言ってる。多分気配からして結界かなんかだな。ショコラは身体能力こそイマイチだが、援護能力は高い。なので、肉弾戦特化のアタシやパイセンとよく組まされる。
「第二王子殿下、わたくしがごちそういたしますわ。第二王子殿下はマジョリカ様のせいでお辛い目にあわされたのですわよね?」
ド派手な香水臭い女が猫なで声でアホにすり寄る。気を良くしたアホは、香水女と日替わりランチを食べていた。ここまで臭うんだけど……。せっかくの激ウマランチが台無しぃ……。
「エクレア、席を変えましょう。こちらに気づかれても厄介ですし、貴女香水苦手でしょう」
「まあ、うん」
「できるだけ距離を取るわよ。あなたの視力ギリギリの位置まで行きましょう」
そんなわけで距離を取ろうとしたが、香水女とアホは特別室とやらに行ったので移動はしなくて済んだ。
「……ムカつく」
ショコラが念のために魔法で音を拾っているのだが、憤怒の形相になっておる。魔法っていいよなぁ。パイセンはなんで獣人なのに使えるんだろう。あの人はマジチート。存在がもう意味不明だから仕方ねぇか。
「仕事仕事。給料給料」
ショコラがキレて殴り込みに行くと困るので、沈静化する呪文を唱えた。アタシならこれで落ち着くが、はたしてショコラはどうだろうか。
「そう……これは仕事これは仕事……」
効果はあったようだ。
「給料査定。器物破損は弁償。下手したら出禁」
「くうっ……あいつら、マジョリカ様の悪口を言ってますのよ……。あの方がどんなに尊い方なのか知らないくせに……」
「ショコラって、マジョリカ様を知ってたの?」
初対面から崇拝してたっぽい。人間だからアタシみたいにビビッときたわけではないだろう。
「ええ。あの人は私の憧れでしたのよ。女性ながら事業家で、誰より堂々と立つ優雅で華麗な赤い薔薇……!それを貶めるとは許しがたい……!」
元からマジョリカ様のファンだったわけね、納得。人間の雌にもマジョリカ様はモテるのか。
「カチコミはマジョリカ様に迷惑かかる。後でパイセンと情報共有後闇討ち。記録よろ」
「いい案だわ……!」
ショコラの瞳が暗く燃えた。まあ、特別お手当分はアタシも働いてあげますよっと。
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