第3話 (元)婚約者候補VS(現)婚約者

 正式にジャニスと婚約した翌日。ジャニスが迎えに来た。


「ジャニス様、仕事は?」


「今日はマジョリカ様の警護が仕事です」


「そんな仕事はありません!正直に言いなさい!」


「……休みです。なので、学園の見学許可をもらいました。マジョリカ様に群がる雄を千切っては投げる予定です」


真顔なので本気だか冗談なのか判断がつかない。しかし、物理的に千切っては投げされては困る。それに、これは婚約をアピールするいい機会ではないだろうか。


「ジャニス様」


「はい」


「千切っては投げるのではなく、私と仲睦まじくしていただきたい」


「…………はい??」


 おお、珍しくキョトン顔に!こうしてみると幼く見えるなぁ。確か今ジャニスは二十歳だっけか。


「私はジャニス様にメロメロなので第二王子を振った事にしたいのです。そして、ジャニス様も私にメロメロだと知らしめるのです」


「……それは、どうすれば伝わりますか?」


 また真顔に戻ってしまった。うーん……どうすればいいかなぁ。


「手を繋いだり、腕を組んだり、ご飯を食べさせ合うとか、膝枕をする……とか」


 私も前世含めて経験があるわけでもないしなぁ。前世についてはぼんやり覚えてる程度なので付き合ってたかとかもよくわからんけど。

 ジャニスの様子をうかがったら、また目をかっぴらいていた。怖い怖い!膝枕してこの顔だったら、いちゃついてるというより何らかの苦行と勘違いされかねない!


「嫌でしたら他の方法を」

「え」


 作戦中止を提案したら、この世の終わりみたいな顔をされた。流石の私も、直接したいんですかと確認するほどの度胸はなかった。






とりあえずジャニスにエスコートしてもらったわけだが……いい筋肉だわ。思わず腕を揉んでしまった。セクハラ……いや、婚約者だからセーフ!?

 ジャニスは目をかっぴらいていた。アウト!?セーフ!?セクハラ!??


「…………ええと、腕が好きですか?」


「……筋肉が好きです」


「……………なるほど」


 いや、何がなるほど!?意味不明にも程があるわ!!


「マジョリカ!婚約を白紙撤回とはどういうことだ!?」


 ぶっちゃけすごく困っていたから助かった!!いや、これはこれでピンチ!第二王子が来やがった!


「ごめんなさい、殿下。私はジャニス様を愛してしまいましたの」


 そう言いながら、ジャニスにべったりくっついた。うーん、やはりいい腕だ。思ったより筋肉があってとてもいい。女と違い、やはり硬い。


「かはっ!?」


「ジャニス様!?」


 吐血!?いや、鼻血か!すげえ鼻血出てるんだけど!ええと、鼻血の対処ってどうするんだっけか?下を向いてもらって、冷やすんだよね!いや、そういや私は回復魔法が使えたな!それで止血すればいいか!

 回復魔法は希少な光属性。ヒロインも光属性を発現させてしっかり育てたら聖女になる。光属性持ちだからこそ、私は悪役令嬢としてヒロインに立ちふさがったのであーる!


「リトルヒール!」


 鼻血ぐらいなら……止まったね!良かった、良かった。ハンカチを水で濡らして周りを丁寧に拭ってやる。血まみれではイケメンが台無しだ。


「いや、マジョリカ様のハンカチが汚れてしまいます!」


「ハンカチは汚れる物でしてよ。それよりじっとしてくださいませ。拭きにくいですわ」

「俺を無視してイチャイチャするなー!!」


 別次元の男こと、第二王子が叫んだ。あんまり直視したくないのよね。存在自体が許せなくなるから。


 皆さんは経験がないだろうか。


 二次元……平面を無理矢理三次元……つまり立体にすると、大変無理がある現象。何でもかんでも3Dがいいと思ったら大間違いなんですよ!!

 二次元は二次元のままでいいじゃない!!三次元になった時のコレジャナイ感よ!!


 しかも、私はなんでか攻略対象がその中途半端な状態に視えているのである。そう、物理的に住む世界が違うんだよ……。そのくせ、イケボだし好きだったキャラの面影があるから嫌なのよ!!


「しておりませんが。婚約者の鼻血を治療しただけです。行きましょう、ジャニス」


「ああ」


 ジャニスは素直についてきてくれた。しかし、第二王子もついてくる。やめろ、お前はいらん。


「こいつは俺より格下だぞ!?こいつのどこが俺より上だと!?」


「え?顔と身体」


 しまった!ガチな本音がポロリ!!幸いな事にその場には第二王子とジャニスしかいなかったが、男性二人は完全に硬直していた。

 そして、またジャニスが鼻血を噴出した。彼は鼻粘膜が弱いのだろうか。仕方がないので第二王子を放置して保健室に駆け込んだ。

 一限目は諦めて彼の治療をしたのだが、治癒魔法をもってしてもなかなか止まらず。保険医に私がいると余計に止まらないから授業に行けと追い出されたのだった。


 なんで私がいると止まらないのだろうか。後で様子を見に行くとしよう。そうしよう。


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