第六幕あらすじ・登場人物

 仲間たちと別れて半年余り――血族九鬼家の元へ派遣された影狼は、師から教わった修行法を日々継続し、めきめきと力をつけていた。託された任務は、牙門家に奪われた九鬼家の旧領志摩を攻略すること。父影虎は、影狼を牙門との戦に巻き込むことを望んでおらず、出征を躊躇っていたが、影狼の決意を聞いてついに重い腰を上げる。

 九鬼軍は海賊とかつての家臣団を味方に引き入れながら、瞬く間に旧領志摩の大部分を奪還した。この事態を重く受け止めた牙門は自ら兵を率いて、天安河原の地で影虎との決戦に臨む。

 牙門軍の圧倒的な兵力と、神の力を宿す兵――神兵に苦戦しながらも、九鬼軍はなんとか緒戦を勝利で終えた。しかしその頃、皇国がこの戦に介入しようと軍を進めていた。皇国の介入を嫌った牙門は、影虎に和平を提案。これ以上の戦闘に限界を感じていた影虎はこれを呑む。ところがこれは罠だった。牙門を人質に撤退する九鬼軍を、神兵が急襲したのである。窮地に陥る九鬼軍であったが、影狼が神兵を操る男――照雲を撃破したことで形勢逆転。最後は影虎が仇敵牙門を一騎討ちで討ち取り、九鬼軍は勝利を収めた。




☆登場人物・用語

【新登場人物】

九鬼くき影狼かげろう

 主人公。鴉天狗の汚名を雪ぐために奔走している。

みなもと幸成ゆきなり

 元鴉天狗幹部。影狼と死に別れた義理の兄。仙刀海猫に霊体が宿っている。

九鬼くき影虎かげとら

 駿河国大名。元殲鬼隊員。影狼の父。父の仇である牙門松蔭を討ち、伊勢志摩を手中に収めた。

喜利きり万次郎まんじろう

 九鬼家家臣。元殲鬼隊員。冷静沈着で武勇に優れ、影虎からも影狼からも信頼が厚い。

紋舞もんぶらん

 九鬼家家臣。元殲鬼隊員。腑抜けがちな影虎を献身的に支えるいわば女房役。

阿近あこん神楽かぐら

 九鬼海賊を名乗り志々答島を占拠していた女首領。本物の九鬼の帰還を知り、その軍門に降る。

千代目ちよめ乱馬らんま

 チョメの愛称で親しまれる九鬼海賊の若い男。

九鬼くき景隆かげたか

 影虎の父。九鬼家当主であったが、松蔭の志摩侵攻により殺された。

平山ひらやま永雪えいせつ

 九鬼家家臣。景隆の死後、牙門家に寝返りながらも復讐の機会をうかがっていた。

松多まつた豊雲ほううん

 九鬼家の老臣。

向田むかいだ左近さこん

 相模兵大将。

牙門がもん松蔭しょういん

 伊勢大名。天照大神宮祭主。影虎の仇敵。

諏方すわ照雲しょううん

 牙門家家臣。諏方神社大祝。神兵を操る神器を扱う。

百武ひゃくたけ晴賢はるかた

 牙門家家臣。元殲鬼隊員。一刀両断の絶技――阿吽の太刀を得意とする。

三好みよし義満よしみつ

 牙門家家臣。大太刀を扱う元殲鬼隊員。

麟丸りんまる

 高見が影狼に預けていた鷹。帰郷の際の連絡用。


【用語】

牙門神兵がもんしんぺい

 ミシャグジ神の力が憑依した兵。神宿りの面と神使の太鼓が引き金となり、鬼人が如き身体能力を得る。

・ミシャグジ神

 石の神。照雲曰く、弱者を淘汰する自然の意志そのもの。

神使おこう

 特別な修行を積んだ穢れなき二十一人の子供で構成される太鼓衆。神降ろしの役目を担う。

憑巫よりまし

 神兵となる人のこと。

霊石れいせき

 天岩戸から採掘された、神気を帯びた石。

神宿かみやどりの面

 霊石から作られた鬼の面。被った者は神降ろしにより神兵と化す。

韴霊剣ふつみたまのつるぎ

 照雲が所持していた神器。これにより神兵を操っていたと思われる。

気功術きこうじゅつ

 気功の修行によって得られる特異な能力。一部の身体機能を強化する。

天照大神宮てんしょうだいじんぐう

 日ノ本全国の神社の頂点に君臨する神社。皇帝一族――天羽の祖とされる太陽神アマテラスが祀られている。

諏方神社すわじんじゃ

 ミシャグジ神を祀る神社。南北朝の時代に、あまりにも強大な力を持っていたために恐れられ、滅ぼされた。

岩屋戸川いわやとがわ

 伊勢と志摩の国境にある川。天岩戸伝説が残る。

天安河原あめのやすかわら

 岩屋戸川が平地に流れ出る地点にある大きな河原。牙門と九鬼の決戦の地。

天岩戸あめのいわと

 太陽神アマテラスが引き篭もったという伝説の洞窟。

天津城あのつじょう

 伊勢国本城。

猿蟹城さるかにじょう

 志摩国本城。

志々答島ししとうじま

 猿蟹城の沖にある島。戦国時代に九鬼水軍が拠点にしていた。

九里ヶ浜くりがはま

 猿蟹城の北側にある浜辺。潮干狩りの名所。

駿府城すんぷじょう

 駿河国本城。

鷹高山たかたかやま

 駿河を代表する名山。宝永大噴火以降、妖怪がよく出没するようになった。

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妖峰戦記‐宝永の乱‐【Ⅱ】~地ノ章~ 幻想歴史資料館@ナマオ @namao

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