第101話 護衛依頼ゴブレンの街へ

最北の街トリーロの辺境伯の奥様と娘さんを帝都迄の護衛依頼を受けたハヤト達”熱き絆”のパーティーは騎士団5人が守る馬車の先頭を『万能乗用車』に乗ってゆっくりと進んでいった。


ゴブレンの街まではトリーロからゆっくり行くと7時間ほどかかる道のりだ。


途中は寒村は有るものの、大きな都市もなく街道筋には結構高ランクの魔物がでるらしい。


『万能乗用車』の【サーチモニター】とキラービー達のサーチが常に働いているので魔物が近づいてきても、3キロ以内で全て検知して種類迄も分かる。


トリーロの街を出て1時間ほどしたところで、トロールが2体がサーチされた。


ラッティーが騎士団達に「トロール2体がいます。止まって、待機してください」と伝えた。


ハヤトは『万能乗用車』からレーザービームでトロールの頭を狙って撃ちはなった。


トロール迄の距離は未だ1キロ以上あったが、レーザービームの正確な攻撃に騎士団達は皆信じられないような顔をしていた。


しばらく走って、実際にトロール2体の死骸を見てさらに驚いていた。


その後、しばらくは順調に進み昼近くになり、見通しの良い所で昼食休憩を取ることにした。


ハヤトが騎士団達に、「馬車100メートル周辺を完全に【シールド】で守っているので100メートル四方以内なら自由に動けます。魔物も心配いりません」とつたえて、昼食にした。


ドリス、アレンとガードマン達を一応見張りにつけているが、あくまでも騎士団達に対してのポーズで、本当は【サーチモニター】が稼働しているので何も心配はないのだ。


昼食を終えて、再びゴブレンに向かって走って行く。


途中、森の近辺でフォレストウルフの群れ20匹が襲ってくるが、事前にサーチしたハヤト達はラッティーとアレン、ドリフ、とガードマンがまたたく間に首を切り落としていき、100メートルも馬車に近づけさせずに殺して行った。


森を抜けたら、空からハーピーが10羽程旋回して狙ってきていた。


セリーヌが『連射の弓』に矢を込めて、魔力を流し込み放った!


矢は10羽のハーピーのすべての頭を撃ち抜いてバタバタと落ちてきて【ストレージ】に収納して、目的地に向かって進んでいく。


3時頃、休憩を取った。


すると馬車から、辺境伯の娘さんであろうか?ハヤトより少し若い女性がハヤト達の方に来て、物珍しそうに魔道車を見て話しかけてきた。


「すみません、私は辺境伯のブランジェル・スミスの娘、ガーネットと申します。皆様の強さに驚いているのと、この魔法の馬車にとても興味があって、ちょって見せていただいてよろしいでしょうか?」


「どうぞ」とハヤトはドアを開けてガーネットを入れてあげた。


「まぁ!凄いですわ、次元空間魔法で、キッチンもお風呂もトイレも有るのですね、この馬車は何で動いているのですか?」


「この乗り物は『万能乗用車』と言って、魔石で動いていて、水中、陸上、空、地中へと動いて移動できるのです」


「ええええ?空を飛ぶことも出来るのですか?」


「はい、出来ますよ!」


「すみませんけど、ほんの少しでいいですからこの近辺の空を飛んでもらえませんか?」


「わかりました、全員が乗ると騎士団の人たちが心配するだろうからセリーヌ達は下にいて、5分程飛んでくるから」


ハヤトはそう言って、垂直上昇して500メートル更には800メートルと上がりゴブレンの街近くまで飛んで戻ってきて着陸した。


ガーネットはもう、興奮しっぱなしで矢継ぎ早にハヤト達に質問していた。


「この世界でそらとぶ乗り物はブルネリア王国の『空飛ぶ船』とオルバル帝国がブルネリア王国から買った『空飛ぶ船』しか無いと思ってましたわ」


「ブルネリア王国の『空飛ぶ船』は実は私が作った船でオルバル帝国のも私が作りました。他の人間が作ることは不可能でしょうね!」


「えっ、どうしてですか?貴方が出来るのであれば他の方も出来るのでは?」


「これは魔法で飛んでいるわけでは有りません、科学という学問を学んでいないと浮く力、揚力という力を理解して初めて出来る技です」


「魔法で飛んでいるわけでは無いのですね?」


「はい、動かす動力は魔石ですが、その理論は科学です」


「この車から発射したレーザービームと言う武器はあれも魔法では有りません。勿論、この車から【ファイアスプラッシュ】を放って殺すことも出来ますが、魔物の損傷が大きいと買取価格が下がるため数ミリの穴をあけるだけで狩り取れるように

光を利用した科学的武器でやっつけたのですよ」


「なんだかこの『万能乗用車』って、秘密のびっくり箱みたいですわね」


しばらく色々話しをして再び彼女は馬車に戻り、ゴブレンの街に向かって走りだした。


夕方に差し掛かる頃、無事にゴブレンの街に着き、予めギルドから手配されていた宿に到着した。


辺境伯の娘さんと母親は広い205号室に、200号室から203号室を騎士団長と騎士団の2名、我々は206号室にセリーヌとハヤト、207,208にクリエラとラッティーが入った。


夕食は辺境伯夫人と娘さんや騎士団とは時間をずらして食べることにした。


彼らが食べ終わる頃に4人が降りていき、夕食を頼んだ。


騎士団の数人はエールを飲んでリラックスしているが、護衛がこれでは少々心配だとハヤトは密かに思っていた。


一応【サーチ】を常に掛けて敵意、殺意のあるものは引っかかるようにしてある。


魚のバターソテーとファングボアの生姜焼きの2択なので女性陣が魚のソテー、ハヤトが生姜焼きと別れた。


ハヤト達はハヤトの部屋に集まり、コーヒーとケーキを食べて、別腹を楽しんでいた。


クリエラが「こんな美味しいお菓子をいただけるとは本当に幸せですわ、こればかりは他の人には教えたくないですわ」


「私も、苦しい訓練の後にこれがいただけると思っただけでBランクからSランクに上がれたようなものです」とラッティーもニコニコしながらチョコレートケーキをほうばっている。


翌朝、ゴブレンを9時に出発して、お昼には帝都のヘキメンデに着くように少しスピードアップして進む。


途中何事もなく行けるかなと思っていた矢先、帝都の2キロほど手前で明らかに待ち伏せている集団が10人程いる。


ハヤトは【サーチモニター】に映った連中の動きを見て、手練れだと感じていた。


騎士団に「待ち伏せの集団10人がいるので、ここで馬車を警備して、待機していてくれ」と伝えた。


セリーヌが『連射の弓』を構え矢を放つと10本の矢が賊、目掛けて飛んでいく。


しかし、6人を葬るも残り4人はこの矢を剣で撃ち落とし、此方に迫ってくる。


ドリス、ガードマン、アレンが即対応して、手練といえどSSSランクの3人の敵ではなく、あっという間に戦闘無能にして、4人とも生かしたまま捕獲した。


4人の黒覆面を剥ぎ取ると、明らかに何処かの貴族の騎士達だが、それは護衛の騎士団に任せるとして、ハヤトは4人の連中を動けないように束縛して取り敢えず帝都、ヘキメンデに入った。


辺境伯の帝都の屋敷まで護衛して、賊ら4人を護衛の騎士達に引き渡し、辺境伯夫人から護衛依頼のサインを貰っていると、家から辺境伯殿が出てきて護衛の労をねぎらってくれた。


騎士団達が10人の賊が待ち伏せしていた件を辺境伯に伝えて、4人の賊を辺境伯邸に連れて行った。


「ハヤト殿といったか、この度は誠にご苦労であった、我が家でゆっくりしていかんか?お茶でもごちそうするが」


「せっかくのお誘いですが、皇帝に直接お会いして、報告する件が有るので私達はこの足で宮廷に向かいます」


「何?皇帝と直接話しをするとな?して、差し支えなければ内容は何かな?」


「はい、魔族がこの国を滅ぼそうと裏で動いていた件です」


「そういうことなら、儂もにも関係しているな、是非儂も君たちと一緒に伺うから昼食を我が家で食べてから一緒に皇帝に会おう!」


「わかりました、予定より1日早いので構わなければご馳走になります」


ハヤト達は4人と精霊グラッセとで辺境伯の昼食に呼ばれた。


昼食を食べながら、辺境伯様にアイメールで起きた出来事をかいつまんで話をし、後2、3年後にキース獣人国の国境の魔族地区で魔王と異界の魔界龍が復活してこの世界を滅ぼさんとして居ることを話した。


「なるほどのう!各国に魔族が潜り込んでいるということか、急いで我が国も対策を考えねばならぬな」


「お父様、ハヤト様はブルネリア王国の『空飛ぶ船』を作られた方なのですよ!」


「なにっ?ハヤト殿があの噂の『空飛ぶ船』を?ではオルバル帝国の『空飛ぶ船』もそうなのか?」


「はい、オルバル帝国はブルネリアからあの『空飛ぶ船』で攻めめられるのではないかと心配で、結局、相互不可侵友好条約を結んで1台を購入させてくれと頼み込み、私が製作して引き渡しました」


「彼らはその後も、誰があの船を作ったのか知りたくて”武道大会”まで開催して結局私のことはわからず仕舞いで、今度はナルジェ王国にまで手を伸ばしたので、私がナルジェの国王と打ち合わせをして、国境を全て【結界】で覆い、オルバルの兵がナルジェに侵入しないようにして私の名前を公表したのです」


「きっとオルバル帝国ではハヤトを拉致せんと必死になっていると思いますよ」とハルト。


「お主は、オルバル帝国が恐ろしくは無いのか?」


「今そんなことで人間同士が争っている場合ではないので、いざとなれば皇帝ををとっ捕まえて、魔王の問題が解決するまで身動き取れないようにしますから」


「いやはや、お主の噂はナルジェからも聞こえてきたが、まさか目の前にいるハヤト殿がその人とは、これも何かの縁でござるな!」と辺境伯はニンマリしていた。


昼食も和気あいあいに終わり、ハヤトファミリーと辺境伯と護衛の騎士団が宮廷に向かった。


辺境伯が一緒なのでギルドマスターから預かった手紙は必要無いのだが、一応兵士に渡して、辺境伯様とご一緒に会うということにした。


すぐ、執事長がやって来て、宮廷の客間に通されて、待つこと数分、ノルディー帝国皇帝のキャメロン・アウグヌス・ビルボードと宰相のベンジャミン・スウィフトが二人で入って来た。


ハヤト達は一応膝を折って、儀礼をした。


「あれ?、どうして辺境伯が一緒なのじゃ?」


「はい、皇帝、それが偶然私の妻と娘の護衛を冒険者ギルドに依頼したところハヤト殿達がその依頼を受けて、我が家で皇帝様にお会いするというので理由を聞いて一大事と思い一緒に伺いました」


「さようか!それではハヤトやらギルドから大まかには『遠距離電話』で聞いておるが詳しいことを話してくれぬか」


ハヤトはゆっくり事の顛末を話し始めるのだった。

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