第102話 ノルディー帝国皇帝
ハヤト達は辺境伯様の奥方と娘さんを帝都まで護衛依頼を受けて辺境伯様の屋敷に送り届け、目的の皇帝に魔族の話の詳細を伝えるべく屋敷を出ようとしたら、内容を知った辺境伯が国の一大事と一緒に皇帝に会うことになった。
ハヤトは先ずギルドに渡した魔族の死体2体以外の3体の魔族の亡骸を皇帝に差し出した。
「この魔族達5名がこの帝都と中央の都市ハルメラそして東部のアイメールにて精霊達を拉致し、昼に魔物を呼ぶ香を炊き、夜は魔物が出没しないように、精霊の【魔物避け】の精霊のみが使える特殊な方法で、魔物を出現させないようにしていました」
「本来、魔物は昼よりも夜に活発に動くにも関わらず、私達が訪れたアイメールでは昼にやたら魔物が多いにも拘わらず、夜がものすごく静かで過ごしやすいのに違和感を感じていたのです。しかも緑が多いにもかかわらず、一人の精霊もいないことが変でした。そこにこのグラッセが助けを呼びに来て、事情を聞くと魔族にこの国の精霊が全て捕まり3箇所に拉致されて魔族の言いなりにされているということを知りました。魔族の目的はこの国を滅亡させることだったのです」
「ちょっと、よろしいかな?何故夜に魔物が来ない事が我が国が滅びることにつながるのかな?」とベンジャミン宰相が言い出した。
「はい、それは第1段階でして、夜に魔物が全然現れなくなり本来夜の警備を厳しくするのにこの2、3ヶ月は警備兵も少なく皆平和な夜に安心しております。其処で魔族は一気に夜に各街に魔物を呼び込み、一気に街を滅ぼす算段でした」
「何故、我が国なのじゃ?」
「それは、たまたまなのかも知れませんが、あと2、3年後にキースの北部に魔王が誕生し、同時に魔界龍が再び異界より現れます。これは間違い有りません。この下準備にこの国が狙われたのだと思います」
「そんな恐ろしい企みが、この我が国で進んでいたのか?」
ここで精霊のグラッセがおずおずとしながらもはっきり「私達精霊は人間族には殆ど見えないように暮らしております。ですが魔族の5人はどの様なスキルをもっていたのかわかりませんが私達を簡単に見つけて、仲間を人質にどんどん拉致人数を増やして、ひとり残らずこの国にいる精霊を捕まえてしまったのです。幸い私は魔族の監視が油断した隙きに逃げてハヤト様に助けて頂いたのです」
「幸いなことにハヤト様は世界で唯一人の世界樹の加護と世界樹と会話でき世界樹様のすべての力を受け継いだ方だったので、強力な魔族達も一瞬で片付けてくれました」
「実は皇帝、このハヤト殿はブルネリア王国の『空飛ぶ船』の製作者なんです。オルバル帝国の船も彼が作ったものです」
「えええ、あの『空飛ぶ船』の製作者なのか?」
「あれは魔法で飛ばしているのか?」
「魔石が原動力ですが、魔法では有りません」
「あれは古代人が考えた技術ですが、私が知っている技術も加味して揚力というものを利用しております」
「オルバル帝国はあれを購入して同じものを作ろうと試みても作れないのです、古代文明を完全に理解し、揚力というものをこの世界で分かる人間が恐らく私しかいないのですから・・・」
「それよりも、魔王と魔界龍の力は一瞬で世界の半分を消して無くす力をもっております。オルバル帝国のように自国の領土を広げようと考えている輩が呑気に隣国など攻めている余裕はないのです」
「皇帝様、私からのお願いですが、貴国の魔法師達の精鋭を集めて【シールド】を展開出来る人、あるいは【土魔法】で壁を作れる人たちを今すぐに選別して力を蓄えてください、さもないと一瞬でこの国も焦土と化します」
「魔王と魔界龍とはそれ程の力か?」
「今よりも優れた文明を持っていた古代文明でさえ、一瞬で滅びたのです。幸い、私は古代語を読めますので文献によると魔界龍の息吹、咆哮の温度は5000度を超えます。鋼鉄も一瞬で溶け出します、それに耐えうる魔法を放たないと街は一瞬で灰となって消えるでしょう」
「私はキース獣人国の国王と懇意になり、お互い協力し合う事を誓いました。魔王が復活したら彼の国を【シールド】で囲み、直ぐに魔王を討伐すべく協力し合うことになっております。貴国も是非騎士団のスキルアップや魔法師の力を高める努力をしてください」
「わかった!すぐに動き出そう、ところでハヤト殿の奥様はエルフの国の皇女なのではないかな?何処かでお会いした気がするのだが・・・」
「はい、エルフの皇女セリーヌとこちらは近衛騎士団長のクリエラです」
「やはりそうか!いやこれは失礼をした。確か以前はAランクの凄腕と聞いておったが・・・」
「今は我々のメンバーは全員SSSクラスになっております。メンバーのうち数人は魔界龍の攻撃のために立ち上がった連中もいます」
「そうか、お主ともう少し情報を共有して是非我が国の危機も事前に防ぎたいものだ。帝国人民のためにも!」
「そうですね!私達もこの国の民を救うべく努力します。何か緊急事態の時は『遠距離通話機』をお渡ししておきますのでご連絡くだされば【転移】してきます」
「お主は【転移】も出来るのか?世界でできる人は皆古代人で既に滅びて居ないと聞いておったが・・・」
ハヤト達は一通り、皇帝と宰相に話したので少し安心して城を辞した。
ハヤト達はその後、帝都の冒険者ギルドに向かい、護衛依頼達成の書類を提出して金貨80枚を受け取り、『万能乗用車』に乗って一気にケープのハヤト邸に【転移】した。
一方ノルディー帝国皇帝の間では宰相のベンジャミン・スウィフトと辺境伯のブランジェル・スミスそして皇帝のキャメロン・アウグヌス・ビルボードが話し合っていた。
「皇帝、彼は確かにこの世界では最強だと思われます。娘が彼の乗っていた車という馬車は空を飛び、海に浮かび、海の中を潜り、地中にも潜ることが出来る馬車だそうです。トリーロから帝都まで数分で飛んでこれるスピードが出るそうですぞ」
「確かに儂に連絡をくれたアイメールのギルドマスターの話では100人のAクラスが掛かっても倒せない魔族を5人も半日も掛けずに瞬殺して精霊を開放できるのは人間ではなく神に近いと言ってたな」
「彼を取り込もうとせずにお互い協力しあって発展する方向のほうが間違いないと思います。下手にオルバル帝国のように悪印象を彼に持たれたら最悪です」
「彼の言葉だと、ナルジェ王国の国王とも付き合いがあり、キース獣人国の獅子王とも仲がいいようだな、折角彼から『長距離通話機』を貰ったのだ、これを機に親密になり我が帝国の民たちをも救ってもらわないとな!」
「宰相、ブルネリア王国と協力するために、是非友好条約を結びたいという手紙を認めよ!儂がジュネべに向かいたいとな、その際宰相お主と辺境伯お主を連れて行くぞ、留守の間は公爵にしっかり頼んで置けばよいじゃろう!」
「出来たら、ハヤト殿の車とやらで飛んで、行き帰り出来ればよろしいですね」
「そうじゃな、時期が来たら『長距離通話機』でお願いしてみよう」
そんな会話が三人の間で話されていた。
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一方ハヤト邸に着いた、ファミリー一行はエルフのクリエラと精霊グラッセに家の中を色々教えて、グラッセが寝泊まりするのに一番良い、観葉植物が沢山置かれたテラスに、先日作ったグラッセ用の寝床を【モデリング】魔法で作ってテラスにせっちした。
また、【結界】や【シールド】をクリエラとグラッセでも解除して家に入れるように設定のパラメーターを変更してシールドを張り直した。
クリエラもグラッセもハヤト宅の異様な作りとマジックアイテムの数々に驚かされて、トイレやお風呂には信じられないと大声を挙げられた。
「クリエラは取り敢えず明日から、先日渡したマジックアイテムを使いこなして早く皆と同じレベルまで、地下の訓練場で訓練を始めようね」
「はい、お願いします」
「取り敢えずはドリスが作ってくれる晩飯をを皆で食べましょう」とハヤトたちは食卓に向かって座った。
ドリスが用意してくれた夕食はハヤトから教わった餃子と回鍋肉(ホイコーロー)の中華料理だ。
セリーヌは一度だけ食べたことが有るが、勿論ラッティーもクリエラも初めて食べる。
精霊のグラッセは、「ハヤト邸の溢れんばかりのマナを一杯頂いたのでお腹が一杯だわ」と言ってリビングのソファーの背もたれの上に止まって休んでいる。
『スラ』と『イム』は回鍋肉の余り素材のキャベツの芯や野菜の切れ端、ファングボアの切れ端を食べて満腹状態でリビングの床でプリンプリンプルルしている。
ラッティーもクリエラも肉料理なのに餃子は美味しいと喜んで食べ、回鍋肉は野菜を食べてばかりで、ハヤトがニンマリして肉を食べ放題だった。
ハヤトファミリーは、食後に薄めのコーヒーを飲みながらゆっくりし、しばしの平穏をたのしんでいた。
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