第65話 ビズモンドの凱旋

決勝戦でメルカ王国Sランクのアルバーと対戦し、とっておきのビズモンド必殺多重同時魔法を放ちアルバーを下して優勝したビズモンドはオルバル帝国皇帝から賞金と記念品そしてマジックアイテムの耐火、耐物の付与した黒のマントを授与され競技場を後に宿に戻って来た。


宿で昼食を取りながらささやかな祝勝会をして、


「ビズモンドさん武道大会優勝おめでとうございます。ここはまだまだオルバル帝国でのんびり出来ないので大々的な祝勝会はブルネリア領土に入ってから盛大に行おうと思っております。ですので昼食は少し上のランクの好みを各自オーダーして

食べ終わりましたら早々に馬車で王都ジュネべに向かいますのでよろしくお願いします」とハヤトが皆に言う。


ハヤトに言われていつもの定食ではなくワンランクからツーランク上の定食を皆が頼んでハヤトを除く男性陣はエールを2杯ほど飲んだ。


いよいよ帝都を後にして先ずはギンバリーに向かって馬車を走らせる。


先頭の馬車には行きと同じ”夜明けの光”の4人の冒険者、続いてガードマンが御者のビズモンドが載っている馬車、しんがりがハヤト夫妻とアレン、ドリスが乗る『万能乗用車』、キラービー3匹はその3台の前後を飛びながら不審者を【索敵】しながら警戒している。


帝都ベロニカを出て30分ほどしたところでハヤトの【サーチ】に120人程の殺意を持った連中が街道横で待ち構えているのを検知した。


同時にキラービーの1匹から全員が黒の覆面をして剣を抜いて待ち構えている騎士団のような連中の映像がハヤト達に送信されて来る。


ハヤトは『万能乗用車』のスピードをあげて”夜明けの光”の馬車の前に出てリーダーのケインズに「この先に賊が120人程いるので止まってくれる?」


「120人もですか?一旦引き返しますか?」


「いやぁー、そんなバカらしいことしないで良いよ!僕らで処理するから一応ビズモンドさんの馬車の周りを固めていて」とハヤトは【サーチ】と【マッピング】と更に【イレージング】の畳み掛け魔法で全て潜んでいる族をこの世界から消し去った。


その間に要した時間は凡そ3分程。


「ケインズさん全て処理したのでもう、大丈夫ですよ先を急ぎましょう」


「ええええ・・?120人をもう、片付けたのですか?」


「人数が多いのでこの世界から完全に残らないように消し去りましたから」


そう言ってハヤトは又しんがりの位置に戻って『万能乗用車』に乗り込んだ。


”夜明けの光”の連中は120人もいる賊をどうして倒したのか訳わからないままギンバリーに向かって馬車をまた動かし始めた。


その後は帝国側も諦めたのか襲って来る賊もおらず、やっと国境を無事越えてギンバリーの街並みが見える頃には空も茜色になっていた。


無事ギンバリーに到着した。


ギンバリーの宿に入り2階の階段のすぐ近くにハヤト夫妻、その隣がビズモンド、その隣が”夜明けの光”リーダーのケインズとボビー、その隣一番奥に女性陣の冒険者二人が入った。


「みなさん荷物を整理したら食堂で盛大に祝勝会を開きますのでおりて来てください」とハヤトとセリーヌが食堂で準備をしている。


ブルネリア王国に戻ったとはいえまだ油断は出来ないと、入り口近くにドリスとアレン、ガードマンが3人で座って警戒を怠り無くしている。


ハヤトとセリーヌ以外はアルコールを飲み放題にして、好きな食べ物を好きなだけ頼んでOKと伝えた。


「とりあえず無事戻って来てブルネリアの土を再び踏むことができました。ビズモンドさんの素晴らしい戦いで帝国側も観念したようです。今日は無礼講でみなさん存分に楽しんでビズモンドさんの優勝のおこぼれに浸りましょう!」とハヤトが声をかけて宴会が始まった。


「ビズモンドさん、本当におめでとうございます。戦い方も勉強させてもらいました」


「ハヤト君に言われるとこそばゆいよ」


「ハヤトさんたちは武道大会にはなぜ出なかったのです?」とケインズ。


「今回はギルドの職員ということでギルドマスターのケントさんから試合には出ず裏方に徹してくれと言われていたのでね、それに選手で出るより観客として見ている方が色々な人の戦い方が観察できて良いこともあるので・・・」とハヤト。


「それと120名を一瞬で処理した魔法ってどんな魔法何でしょうか?」と魔法師の女性、キャメロンが聞いて来る。


「あれは【マッピング】で敵の位置を正確に把握して【亜空間魔法】のような別空間に飛ばしたんだ」と嘘の説明をして逃げた。


一つの国ごと消し去るような魔法だと知られると諸々問題が出るので亜空間という言葉で逃げた。


「ビズモンドさんの最後の決勝戦はすごかったですね、もっとSクラス同士なので時間がかかると思ってましたがビズモンドさんの圧勝でしたもの」とケインズ。


「いやいや、あれは僕が相手に奥の手を見せずにいたからで彼が魔法師よりの剣士ならもう少し違ったかもしれないね!」


「ビズモンドさんはダンジョンには潜ったりしないのですか?」と斥候のミルズが聞いて来た。


「僕はソロなので基本的にはダンジョンにはあまり興味はないんだ。お宝は魅力的だが罠とか回避するスキルがそれ程高くはないのでね」


「でも今回の武道会を見て我ら4人はもっともっと剣も魔法もスキルアップしなければダメだと痛感しましたよ」


「そうだぞ!上には上があるからBランクにと止まらずAランクあるいはSランクを目指してもっと頑張ってくれ、この僕でもハヤト君の足元にも及ばないのだからね!」


「ええええ、ハヤトさんは一体ランクは幾つなのですか?」


「僕のことは冒険者の職員なんだから別にいうほどのランクではないよ。どちらかというと研究の方が剣を振り回すよりすきなんだ」


そんな話をして深夜近くまで騒いで祝勝会も終わり、2階の各自の部屋に向かった。


ハヤトは一応ビズモンドの部屋を【結界】で覆い、入り口にガードマン、ハヤトの部屋の前にはドリス、宿の入口の食堂脇にはアレンが寝ずに警戒をしている。


午前2時半頃オルバル帝国から来た暗殺スキルレベル6の高ランクの賊が2名、魔法師レベル6が1名宿に近ずいて居た。


3名とも【ハイド(隠蔽)】を掛け更に魔法師が【幻影】を施し、侵入する用意周到さで宿の入口に入って来た。


アレンが直ぐに最初に暗殺スキルの2人のうちひとりに【瞬足】で首を切り落とし2階に上がる踊場でドリスがもう一人の暗殺者の首を切り落とした。


暗殺者二人は何故見えない筈の自分達が切られたのかさえ判らず首を落とされ残った魔法師は【隠蔽】も【幻影】も効かない事に驚愕し、呆気なくアレンに束縛されてしまった。


「何故お前達に魔法が効かない!」と叫ぶもドリスは笑いながら「そんな子供騙しな魔法程度で私達が騙されると思っているの?帝国のレベルは低いのね」と言って衛兵を呼びに行く。


衛兵がドリスと一緒に宿にやって来る頃、ハヤトが降りてきて衛兵達に王様からの書類を見せ、死体と魔法師を引き渡した。


ハヤトは何事も無かったように自分の部屋に戻り、再びセリーヌの横で眠りに着いた。


翌朝朝食を食べ王都に向かって馬車を走らせている。


ルーベンを通って王都ジュネべ迄約140キロ近くあり、ルーベンで早目の昼食を取って王都に夕方前後に着く予定で馬車を走らせた。


幸いキンバリー以降はビズモンドを拉致や亡き者にしようとする賊は現れず無事に王都ジュネべに到着した。


門を警備する衛兵から、王宮に向かってくれと指示があり、その足で王宮に向かう。


王宮に到着すると直ぐに謁見の間に通される。


そこには王様始め王妃、王女、王子に筆頭公爵の御家族、ギルドマスターのケントさん達が顔を揃えて待っていた。


ハヤト達は膝を折って王様達に挨拶する。


「ビズモンド一同、顔を上げ楽にして後の椅子に座ってくれ」


「ハヤト君、昨夜の夜中の暗殺団の襲撃を防いでひとりを束縛した事、誠に方じけなかった!」


それを聞いた“夜明けの光”の連中は背中に冷や汗が流れた。


「随分早く王様には連絡がいったのですね、流石です」と笑いながらハヤトが応えた。


それには王様はニヤッとわらいかえすだけで「ビズモンド、この度の活躍余も嬉しく思うぞ、流石ビズモンドだ、周辺諸国にブルガリア王国の名を広めてくれた業績に褒美を取らす」


宰相が白金2枚と金額50の袋を目録と一緒にビズモンドに手渡された。


宰相が「これより隣りの大広間において祝勝パーティーを催す、警護に当たったもの達も疲れを忘れて楽しんでくれ」


ビズモンドと“夜明けの光”と共にハヤト夫妻も後に続いた。


ギルドマスターのケントさんが我々に近ずいて来て依頼達成の精算金をリーダーとハヤトにくれた。


借りていた馬車は王都のギルドに戻すのでケープに迄持って行かなくて良いとの事でハヤト達はここで解散の運びとなった。


ハヤトとセリーヌがつまみを食べていると“夜明けの光”の連中がやって来て昨夜の襲撃の件を聞いて来た。


「昨夜宿にオルバル帝国からの襲撃が有ったのですが?」


「うん、夜中の2時半頃に高ランクの暗殺者2名と魔法師が1名襲って来たのを暗殺者は亡き者にして魔法師を生け捕りにしたんだよ」


「僕らも起こしてくれれば戦って協力したのに!」


「いや、あの時は君らは魔法で眠らされていたし、彼らの姿を見る事は出来なかったよ。仮に認識出来ても相手はAランク上級だから苦戦するしね」


セリーヌが更に「彼等は【ハイド】と【幻影】魔法を掛けて襲って来たから耐魔法の人が居ないと一瞬で首を落とされてしまっているわよ」


「そんなやばい連中だったのですが?」


「ええ、殺意も無く姿も見えないあいてはまだ貴方達では対応が難しいわ!」とセリーヌが言ってハヤトが「何事も無く終わったので気にしないで下さい」と彼らをなだめすかした。


その後ケントが来て「ハヤト、他の国の高ランクの連中の戦いはどうだった?」と聞いて来た。


「まあまあそこそこで面白かったですが参考するほどでは無いですね!」と切り捨てた。


「それより、昨夜の襲撃者やオルバル帝国の宿に来た賊達の方がスキルも高く強かったと思います」


「それでもお前さんは簡単に退けてビズモンドもお前さんの強さに呆れていたぞ!」


「余り僕らは表だって出ない方が良いみたいですね」


「やっとお前さんも自分がこの世界で如何に人外の存在かという立ち位置が分かったようだな」笑ってケントは貴族連中の所に移動して行った。


「セリーヌ、今日の主役はあくまでビズモンドさんだから我々は早目に引き上げてケープの自宅に帰ろよ」


「そうですね【転移】で自宅で夕食をのんびり食べましょう!」


ハヤトは王様に挨拶と思って見ると、ビズモンドさんと歓談しているので宰相のブレンディーに挨拶して宴会場を出て、ドリス、アレン、ガードマンと【転移】で一瞬にしてケープの自宅前に姿を現した。


リビングのソファーにハヤトとセリーヌは座ってドリスが夕食を準備する。


準備といっても、ハヤトの【次元収納ボックス】に在るマナバイソンのステーキに野菜サラダとスープにクロワッサンを出して並べるだけ。


ものの5分も掛からず準備を終え、ハヤトとセリーヌはのんびり二人で

美味しく食べた。


その後お茶を飲みながら今後の予定等話をしてお風呂に入って久しぶり自宅のベッドで愛を交わして二人は熟睡するのだった。


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