第60話 武道大会(3)
ビズモンドの壮行会を兼ねた晩餐会もつつがなく終わり各自宛てがわれた部屋に引き上げて行った。
"夜明けの光"のリーダーであるケインズと盾役のボビーは二人で王家の騎士団長ハロルドが言った言葉を思い返して、考え込んでいる。
ハヤト達のランクがビズモンドより上なら何で彼らが今回の武道大会に出ないのか?
ケインズ達4人は王都をベースに活動している冒険者達だったのでケープでは超有名な"熱き絆"のパーティーを知らなかったのもあるが、4人はダンジョンに潜るより、通常の魔物討伐のクエストばかり行なっていた為ダンジョン制覇をハヤト達が殆ど成し遂げて各ギルド職員の間では知らない人がいない程有名である事を知らなかった。
まさか『空飛ぶ船』や『魔動鉄道車』を作ったのがハヤトだとは思ってもいない。
もっともビズモンドもケントから聞かされる迄ハヤトが作ったのは知らなかった。
自分よりもランクが上という事は知ってはいたが、実際に会って自分にはどう足掻いても勝てない奴だとは直ぐに認識出来た。
しかし、Bランク程度の冒険者にハヤト達の強さを分かるにはまだまだ力不足だったのだ!
翌朝、早目に朝食を済ませた一行は王様達に見送られて王都を後にし、一路帝都のベロニカを目指して馬車を走らせている。
ギンバリーで昼食休憩を取り1時間程で直ぐにベロニカに向かう。
オルバル帝国の入国手続きもスンナリ終えてキースの街に入る3キロ程手前でオークキングが率いる群に出くわした!
その数は30匹もいる。
Bランク4人では荷が重いのでハヤト達が前にでる。
セリーヌが『連射の弓』に魔力を込めて10連の矢を放つ。
オークの頭を全て破壊して10匹を瞬殺し、ハヤトは『白兎』に炎を纏わせ横にないだ。
『白兎』から打ち出された炎の刃が20匹のオークとオークキングの首を一瞬にして切り落とし30匹のオークの群れを5秒程で瞬殺して【次元収納ボックス】に回収し、再びベロニカに向かって動きだす。
"夜明けの光"の4人は昨日といい、今の戦いといい、自分達とは次元の違う戦いに声も出ない。
順調に進んで帝都ベロニカに予定通り夕刻前には予約している宿に着いた。
「ビズモンドさんが202号室、ケインズさんとボビーさんが203号室、女性二人は204号室、僕らは201号室といった感じでビズモンドさんを挟み込む様に部屋割りをしました。夕食を6時から食べますので皆さん6時には階下の食堂に集合してください」
ハヤトが夫々に鍵を渡して2階層の各部屋に散開した。
ハヤトとセリーヌは風呂に入って着替えて二人でギルドに向かいビズモンドさんの武道大会参加の手続きを済ませる。
開会式の場所や時間、試合の組合せ抽選日等諸々確認し、宿に戻ってきた。
時間も間もなく夕食の時間なので二人は食堂で皆を待つ事にする。
先に降りてきたのはビズモンドさんなので先程冒険者に行って申し込み完了した旨伝え、ビズモンドさんはシード選手になっているので大会2日目からの参加だと話した。
会場はギルドに併設された競技場で、開会式もきょうから4日後の10時から1時間程掛けてセレモニーをした後、試合が直ぐに始まる事をつたえた。
「ビズモンドさんはセレモニーに出た後はギルドのランクアップの試験をする競技場を自由に使用出来る事になってます。"夜明けの光"やうちのガードマン達と模擬戦でもして体をほぐしてください」
「それと街にお出になるさいは、ガードマンにひと声掛けて下さい。部屋の【結界】を解除して私達と"夜明けの光"が警護しますので、宜しくお願いします」
説明し終えた頃"夜明けの光"の4人さん達も降りて来て食事を始めるのだった。
食べ終えると、4人の連中にも同様の話を伝えしっかりビズモンドさんを警護する様に頼んだ。
ビズモンドさんはエールを飲んで眠たくなったのか部屋に引き上げて行った。
部屋に入ったのを【サーチ】で確認しガードマンとアレンに入口に座って見張る様に頼み、部屋全体に【結界】を敷いて外からの侵入を防ぐようにした。
初日からまさか襲って来ないと思っていたが5人の賊が午前3時頃屋根からと階段を上がって来た。階層の族は3人でガードマンとアレンによって簡単に意識を奪われ、屋根から侵入を試みた二人は【結界】に阻まれて失敗に終わった。
宿屋の主人に伝えて3人を帝国の兵士に引き渡し、ハヤト達も寝た。
翌朝、朝食を皆で食べる時に一応ビズモンドさんに昨日の出来事を伝えると流石Sランク、事の顛末は寝ながらにして分かっていた。
"夜明けの光"の4人は聞いて驚いていたが・・・。
夜間の警護はハヤト達が確実にするので"夜明けの光"は日中に頑張って下さいと激励しておく。
朝食後1時間休憩したら、ギルドのランクアップ競技場に行って"夜明けの光"の4人やガードマンと模擬戦で体を動かしたいというビズモンドさんの意向で競技場に向かう。
なかなか立派な競技場で、帝国の武道大会参加者が数人既に来て、訓練していた。
ハヤト、セリーヌ、ドリスとアレンは敵が居ないか【サーチ】を掛けつつビズモンドの警護をし、キラービーは競技場の外を飛び回って監視している。
ビズモンドさんと"夜明けの光"の4人が模擬戦を始める。
最初に攻撃を仕掛けたのは魔法師のキャメロン。
ビズモンドに【ファイアウォール】をぶつけてくる。
ビズモンドは剣で一瞬にして切り裂いて消し去ってしまう。
ケインズとボビーが同時に襲いかかるが簡単に躱され、ボビーが戦闘不能に、ケインズは模擬刀をおられてあっけなく終了。
ミルズの出番もなく流石にSランクとBランクではいくらパーティーとソロでも相手にならないようだ。
「ハヤト君、ガードマンをお借りしても宜しいかな?」
「ええ、ガードマン、ビズモンドさんと模擬戦をしてみてくれ」
「かしこまりました、ご主人様。ビズモンド様宜しくお願いします」
二人は対峙し、ビズモンドが【身体強化】を己にかけて【瞬足】で一瞬のうちに間合いを詰めて上段より剣を打ち降ろすが、ガードマンはワンステップ動いただけでそれを躱し、横に回り込んで模擬刀をビズモンドの横腹に薙いでくる。
ビズモンドも剣でそれを弾き、体勢を立て直してガードマンと正対し、弾いた剣を袈裟懸けに斬り下ろすが、一瞬にしてビズモンドの裏をとるガードマン。
”夜明けの光”のメンバー達には二人の動きが全く見えない速度で展開されていた。
ケインズが(ギルド職員)のハヤトに「ガードマンさんのランクはどのくらいなのですか?」と聞いてくる。
「彼も含めてドリス、アレンがSクラスの冒険者ですよ」とこともなく言い放つハヤト。
Bクラス冒険者の4人は二の句が続かない・・・。
その間も、見えない速度で剣を交える二人が間合いをとって、ビズモンドが剣を納めた。
「ガードマン、ありがとう!いい汗をかいたよ。それにしても君たちは強いなぁ」
「ご主人様、奥様には叶いませんがビズモンド様もお強い」
「いやいや、おせいじはいいよ。でも久しぶりに本気を出せたので明日もまた頼むね」
「はい、お任せください」
ビズモンドが気がつくと周りのオルバル帝国の他の冒険者たちが全員手を休めて二人の模擬戦を凝視していた。
「あれっ?少し注目されてしまったかな?」
「ビズモンドさん、お二人の模擬戦を見せられたら他の人たちは恥ずかしくてできなくなりますよ」とケインズが叫んだ。
「ケインズ君、キャメロンさんに俺に向かって数種類の攻撃魔法を使って攻撃してくれるよう頼めないか?」
「お安いご用です。キャメロン、お前さんの得意な攻撃魔法を放ってビズモンドさんの鼻をあかしてやれ!」
その後小一時間ほど対魔法師対戦の練習をビズモンドがキャメロンとやってギルドを後にした。
ハヤトとセリーヌ、ドリスらはその時ビズモンドを影から伺って居る連中が居ることを察知していた。
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