第56話 ”豊穣のダンジョン”

ハヤト達は”幻のダンジョン”を制覇してこのアストリアの街のもう一つのダンジョン”豊穣のダンジョン”を制覇すべく冒険者で聞いた街の北西部の山あいに来ていた。


街から10数キロ離れて居る事もあり、衛兵達はいないが看板の様な物で”豊穣のダンジョン”入り口と書かれた物が立っている。


「セリーヌ、ここだけどかなり濃い魔素が充満しているので油断できない気がする。気を引き締めて行くよ!」


「そうですわね!今までのダンジョンより濃密な魔素が充満している様です」


ガードマンが盾を構えて、右手には魔剣『霞』(ガードマンが勝手に名前をつけて呼んでいる)を構え前衛の先頭で、続いてアレン、セリーヌ、ドリス、しんがりがハヤトの順で進む。


いつもの通りガードマンの前をキラービー3匹が皆に見えてくる映像を念話で送って来ているので1階層の様子は手に取るようにわかる。


ゴブリンの群れが6匹ほどいるがガードマンが難なく魔剣”霞”で切り殺してスルーして、2階層に進む。


2階層にはオークの群れ12、3頭がオークキングに率いられていた。


もう1頭中に呪術を使うシャーマンオークが居る。


ガードマンは魔剣”霞”を使い、先ず手始めにシャーマンの呪術を奪い取ることから始める。


”『霞』頼んだぞ!シャーマンの呪術のスキルを奪い取ってくれ”


”かしこまったでござる”と『霞』がシャーマンのスキルである呪術を奪い取りガードマン自体に付与して、ガードマンはオークの群れに突進していく。


盾でなぎ倒して、オーク5頭を潰し、『霞』を振りかざしながら残りを切り捨てて行き、シャーマンのところまで来る。


シャーマンが何やら術を口にしながら叫ぶがガードマンには全く効かない。


真っ赤になりながら焦るシャーマン。


ガードマンが薄笑いを浮かべながらシャーマンの呪術を逆に念じてシャーマンに”霞”を向けると、魔剣『霞』から黒い影の様な物が湧き出して、シャーマンの首にまとわりつき首を絞め始める。


「ぐぐぐ・・・、何故儂の呪術をお前が使えるのだ!グ苦しい・・・」


シャーマンはついには事切れて倒れた。


それを見たオークキングが大剣を振りかざして襲って来るが軽くかわしてオークの右肩から大剣ごと切り落として、オークキングがひるんだ隙に首を落として戦いは終わった。


”『霞』ありがとうな!”とガードマンが例を魔剣に礼を言って鞘に収めた。


3階層にはワイバーンが3匹も居る。


セリーヌが『連射の弓』に魔力を通して3匹の顳顬(コメカミ)めがけて矢を放ち頭ごと全て吹き飛ばしてあっという間に巨大なワイバーンを殲滅してしまう。


4階層、5階層もドリスとアレンで難なく踏破して今は8階層の洞窟のステージに来て居る。


アンデッド系のスケルトンとスケルトンキングが居る。


セリーヌの【聖魔法】でスケルトンは忽ち霧散したがスケルトンキングだけは盾で魔法を防いで剣から闇魔法の黒い光線を5人に向けて放って来る。


5人とも”100倍時計”のマジックアイテムを保持して居るため難なくそれを躱しガードマンが目からレーザービームを放ち、スケルトンキングが盾で跳ね返す瞬間を【瞬足】を使い間を詰めて首を切り落とす。


しかし、瞬時に首が元に戻って剣でガードマンに襲い掛かるがガードマンが盾で防いで、そのまま押しつぶして、粉々に盾で潰して再生さえも出来なくした。


そのあと、レーザービームで骨を粉にして霧散させた。


「なかなかしぶとかったけどガードマンも『100倍時間の指輪』の使い方や盾の使い方が上達して危なげなく勝ったね!」とハヤトがガードマンを褒める。


「まだまだご主人様の域には到底追いつきませんが『霞』の使い方や盾の使い方がやっと身について来ました」と笑って答えてくる。


全体的に魔素が濃い分上位種並みの魔物が多いが3人のアンドロイドの戦闘能力も格段にアップして、”豊穣のダンジョン”もついに10階層迄来た。


ボス部屋の様で、扉をゆっくり開けると、立ちはだかるのはヒュドラキングだ!


通常のヒュドラでも通常の冒険者では絶望的相手なのだが、ヒュドラキングは首の太さが通常に比べ3まわり程太く剣や弓では刃が通らない感じだ。


しかも口から放つ炎の熱量が物凄い。


銀龍がハヤトの肩から飛び立とうとするが、ハヤトが止めて3人のアンドロイド従魔達に任せることにした。


ガードマンが盾で数千度の熱の炎を防ぎながら”霞”で一番左端の首を一刀の元に切断して、切り口をレーザービームで焼いて再生を防ぎ、隣の首はアレンが毒ガスを吐こうとして居る口めがけてレーザービームを放ち、首を剣で切り落として、すぐにレーザービームを切り口に放ち焼いて再生を防ぐ。


ドリスも続き、30分ほどして巨体のヒュドラキングを3人で打ち倒した。


大きなダンジョンコアと宝箱があり、箱を罠がないか【サーチ】して開けると、『紫水晶の指輪』で以前”迷宮古代都市ダンジョン”の30階層で得た宝物と全く同様の敵対する相手の魔法、スキルをを全て奪い取り、嵌めている人にそれを全て付与する指輪と表示された。


セリーヌに嵌めてもらって、ハヤトと二人、同じ指輪を嵌めることになる。


以前宝箱から得た”リフレクションリング”はセリーヌからドリスに渡され、ドリスがつけることになった。


これによって、ドリスに強力な魔法が襲って来ても、このリングが全て跳ね返して相手に襲い掛かる恐ろしいマジックアイテムで、ドリスも無敵に近い存在になった。




*******





冒険者ギルドに向かって戻って行く頃、ブルネリア王国の王都ジュネべの冒険者ギルドでは統括でギルドマスターのケントとブルネリア王国きってのS級冒険者ビズモンドがギルドマスター室で打ち合わせをしていた。


「ケントさん、オルバル帝国の武術大会に参加して帝国の騎士や冒険者達の力量を

見てくれば良いのかな?あそこには俺と同クラスの冒険者が確かアドルフと云う奴がいると思ったが?」


「ああ、アドルフが決勝に出てくるとおそらくお前さんと戦っても中々勝負つかず引き分けで終わる公算が強いな!」


「お互い魔法よりも剣技で戦うタイプなのでおそらくは勝負はつかない気がする」とビズモンドも同様にケントに言う。


「オルバル帝国は『空飛ぶ船』や『魔動快速鉄道』の発明者の魔法師を誘い出したいらしいが、君が出ればそこそこ魔法も使いこなすし丁度いいので是非参加してくれ」


「王様の直々の依頼でも有るし、依頼金が白金2枚とおいしい話だし久しぶりにレベルの高い模擬戦ができるから俺は構わないぞ!」


「しかし、帝国側がお主を拉致しようと狙って来る恐れも有るので冒険者の何人かを君の周りに護衛としてつけてやる」


「俺より強くないのに護衛としてついても意味ないだろう?」


「いや、襲って来る連中はランクBクラス辺りだからAランク辺りの人間にそれとなく見てもらうよ」とケントがビズモンドに伝えた。


ビズモンドは別に護衛は要らないがギルドが手配するなら構わんと言ってギルドを後にする。


ケントは王様に『遠距離通話器』で連絡して近いうち王城にビズモンドを連れ立って伺うと話した。


***


ハヤト達は2日間で2箇所のダンジョンを制覇して忽ちアストリアの冒険者ギルドでは有名人になり、清算金を受け取り、ダンジョンコアを納品してアルトリア国の王都ロザルンに向かった。


ロザルンはアストリアから東へ150キロほど行った所にある。


『万能乗用車』に乗り込んだ5人はアレンが運転して、昼は車の中でハヤトとセリーヌはマナバイソンのステーキと野菜サラダにコンソメスープとクロワッサンで腹ごしらえして、時速80キロほどの高速で街道をひた走り、途中魔物にも合わず夕方5時近くに王都ロザルンについた。


ロザルンの冒険者ギルドにハヤトが入っていき、受付嬢にカードを見せてオススメの宿を聞く。


「この直ぐ3軒隣に”旅路”と言う宿がギルド仲間ではお勧めの様ですよ」


「ありがとう」そう言ってハヤトはギルドを出てセリーヌと二人で3軒隣の宿に行き部屋が空いているか聞く。


「ダブルでしたら1泊銀貨1枚と銅貨20枚ですが宜しいですか?夕食は4時半から10時でラストオーダーが9時半です。朝食は5時から10時半まででラストオーダーは10時までですので遅れない様にお願いします。それではダブルの部屋210号室の鍵です」


「裏庭に『魔動車』を置いているけどいいかな?」


「ええ問題ありません、管理は自己管理でお願いしますね」


「夕食はお二人分で宜しいですね?」


「はい、大丈夫です」とハヤトが答えて二階の210号室に向かう。


部屋に入って、先ず二人でシャワーを浴びて、着替えてさっぱりしてから明日はギルドに行ってクエストを見てから行動を決めようと二人で話し合う。


ハヤトとセリーヌは今までダンジョンで得た宝箱からのマジックアイテムの整理を何方からと言う訳ではなく、始める。


「セリーヌに渡っているものはマジックリング の中に『魔拳銃』1丁、『100倍時計の指輪』一つ、『連射の弓』と『具現の石』と『魔力増幅リング』それに『転移石』そんなところだよね?あっ、そうそう『紫水晶の指輪も僕と同じものを嵌めてもらっているんだった!」


「そうですね、随分チートなマジックアイテムばかり頂いて恐縮です。『リフレクションリング』はドリスにつけてます。私には『紫水晶』がありますから!」


「僕は、『マジックアイテム創造ボール』と『地図帳』、『魔石製造機』と『時を司る指輪』に『霊水のグラス』、『次元空間リング』に『古代文字が刻まれた聖剣』それと『万能乗用車』に取り付けた『魔筒砲』と『紫水晶の指輪』『空飛ぶ軍艦』『一命を取り止めるポーション』等は皆に使うためだけど僕の【次元収納ボックス】に入れてある」


「あとはドリス、アレン、ガードマン3人には『100倍時計』とドリスには『リフレクションリング』、ガードマンには同等の魔剣”霞”が有るから彼らも殆ど無敵に近いかな?」


「魔王や魔界龍デビルドラゴンがいつ頃復活するのかわからないけど、5人がマジックアイテムの有利性を存分に引き出して殲滅できる様にしないとね!」とハヤトが真剣の表情でセリーヌに語りかけた。


「旦那様は既に神様の領域に達していますし、私を含め、3人のアンドロイドもこの世界で抜きん出た存在なのできっと大丈夫ですわ!」


「どうだと良いね! お互い頑張ろう」


「旦那様、そろそろ夕食ですから食堂に参りましょう」


「そうだね、お腹もすいたし・・・」


二人は手を繋いで食堂へと向かった。


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