第55話 アルトリアのダンジョン−2

ハヤト達がアルトリア国に有る”幻のダンジョン”の5階層に来ていた頃、オルバル帝国から来た武術・魔術競技会への参加招待状がブルネリア王国に届いて、王様と宰相は冒険者ギルドの統括ケントを呼んで相談をしていた。


「王様、この試合形式の武術大会にはハヤトをお出しになる考えですか?」とケントがベンジャミン王に尋ねる。


「ケント殿向こうの意図が『空飛ぶ船』の製作者を特定して拉致しようとして居るのは明白なので今の段階では我が国のもう一人のSクラスのビズモンド氏にでも出てもらおうかとも考えて居るのだが、どうだろうか?」と王様が答える。


「どうでしょう?ビズモンドが引き受けてくれれば、オルバル帝国の管理して居る高ランクの冒険者、魔法師達の力量も推し測れるので良いとは思うのですが・・・」


「一度ケント殿からビズモンドに依頼してもらえぬだろうか?」


「わかりました、彼の今いる場所はわかっているので『遠距離通話器』で連絡を取って話をしてみます」


「ところで王様、もしハヤトが気にせず自分が出ると言い出したらどうします?彼なら、オルバル帝国のSSクラスの人間が来ても対処出来ますが、後々鬱陶しい事にはなりますが!」


「彼には知らせないでもし分かっても観客として試合を見学する様にして貰う」と王様が答えた。


「わかりました、それでは早速ビズモンドに連絡します」とケントは王宮をあとにした。


その頃、そんな話が持ち上がっているとは知らず、ハヤト達5人は”幻のダンジョン”5階層の平原ステージの魔物と対峙していた。


ファングボアの群れ5匹を確認し、


「皆んな、一人1頭ずつ刈り取りましょう!」とハヤトが言い、【瞬足】で一瞬にして5人はファングボアに肉薄し、戦い始める。


アレンは硬いファングボアの体を物ともせず一瞬で首を切り落とし、ドリスはハヤトから教わった体術で腹を正拳で2発放って腹に穴を開け、セリーヌは皆と離れた後方から”連射の弓”の矢に魔力を流し込み1頭の眉間目掛けて矢を放ち頭を砕いて瞬殺し、ハヤトはいつもの掌底破で真正面から頭を狙い撃ちして即死させる。


最後にはガードマンが盾であのすごい突進力を軽く受け止めて、硬い体毛を物ともせず首を切り落として仕留めた。


更に進むとアースモールが3匹地中から彼らに突進して来る。


【探索(サーチ)】で全員が認識しているのでセリーヌが土の精霊ノームの力でアースモールの行く手を妨害し、アースモールが地表に顔を出した瞬間を狙いすましてアレンとドリス、ガードマンが一斉に【ファイヤーウォール】を放ち苦しがって全身を地上に現したところをハヤトが『白兎』で3匹を瞬殺してしまう。


6階層は薄暗い洞窟のステージだ。


生臭い死臭が漂う洞窟で、前方からスケルトンが30体程向かって来る。


ガードマンが出て、盾を構えて物凄い勢いでスケルトンに向かっていき10体程粉々にした。


アレンはガードマンの後ろに付いて行き、潰しきれないスケルトンの首と胴を剣で切り刻んでいく。


残りはセリーヌが【聖魔法】で浄化して消し去った。


しかし、後ろに控えていたスケルトンキングがセリーヌの【聖魔法】を持っている盾で防いで襲って来る。


ガードマンが盾を前に突っ込んでいくが、ガードマンの突進力を跳ね返し、壁に激突させて、進んでアレンと剣で渡り合っている。


アレンがスケルトンキングの頚椎をきり頭蓋骨を落としてもすぐにまた頭蓋骨がついて戻って来る。


セリーヌが二つ有る心臓と魔石を4本の矢に魔力を込めて放ち、魔石ごと心臓を全て破壊して灰にしてやっと倒した。


吹っ飛ばされたガードマンは問題なく隊列に戻って来た。


「ガードマン、恐ろしいほどの馬力のあるスケルトンキングだったね!君が跳ね飛ばされるとは考えもしなかったよ」とハヤトが驚いていた。


7階層は廃墟跡の廃屋が2棟程建っているステージだ。


悪霊のレイスが最初の廃屋の1階にいる。


セリーヌが【聖魔法】を放つとぎやぁーと言って2階に消えて行った。


セリーヌはドリスを先頭に2階まで上がり、先ほどよりも強烈な【聖魔法】を放つと2階に居る他の悪霊と共に、レイスが霧の様に黒い靄となって霧散して行った。


もう一つの廃屋にはバンパイアジェネラルがいた。


【鑑定(アプレイザル)】とハヤトが見ると耐魔法、耐物理打撃、剣技レベル80とかなり強敵だ。


ハヤトは弱点は心臓に銀の弾丸を打ち込めば消えると昔映画でみたので、弾丸の代わりに銀の玉を数発準備するまで、ドリスに時間稼ぎに剣で相手してくれと頼み、

【モデリング】で銀の玉を数発作り上げ、弾丸のスピードでバンパイアジェネラルの心臓に放った。


それまではドリスに何度も切られても再生して死ななかったバンパイアジェネラルは口からどす黒い血を吐き前のめりに膝をつきながら倒れて着ていた軍服の様な洋服だけを残して黒い霧となって消えて行った。


やっと8階層にたどり着いた。


「しかし旦那様、このダンジョンは結構手強い相手ばかりですよね」


「そうだね、今までで一番手強い相手達が集まったダンジョンかもしれないね!」


8階層は岩場ステージでそこにはロックトカゲが7匹ほど群れで居る。


ロックトカゲは尻尾で岩を飛ばすのが攻撃パターンでその尻尾の力は1メートルほどの木の幹をへし折るほどの力でセリーヌやハヤトが当たれば即死だろう。


当然二人は【シールド】で身を守って居るので問題はないが・・・。


体が硬く通常の剣では通らないがドリス達だったら問題ないだろう。


アレン、ドリス、ガードマンが出て行こうとした時、”僕にも出番を下さい”とそれまでハヤトの肩で小さくなっていた銀龍が30メートル程に調整した大きさになり、3人のアンドロイドを制止させた。


数メートル飛んで上空から炎の息吹を7匹目掛けて放った。


一瞬で7匹は骨だけ残して丸焼けに溶けてしまった。


”ご主人様魔石はちゃんと溶かさない程度に温度調節しておきましたから!”と言うのでハヤトは何も言えなく苦笑いをするだけだった。


9階層は火山ステージでキマイラが1匹にワイバーンが1匹居る。


ドリスがキマイラを、アレンがワイバーンを対処すると言って近づいていく。


キマイラは火を履いてドリスを威嚇するがドリスの体は耐熱温度10000度なので全く動じず一閃した剣はキマイラの硬い首さえも一撃で切り落とした。


一方ワイバーンに向かったアレンは先ず空に飛び立たれるのを防ぐためレーザービームで羽を撃ち抜いて飛ばなくさせてから首を切りに詰め寄っていった。


ワイバーンはアレンに向かって口から強烈な炎を吐いて倒そうとするがアレンの耐火温度も10000度なので全く怯まずにワイバーンに肉薄して首を切り落としにいく。


ワイバーンは恐怖に陥り尻尾を振り回してアレンを蹴散らそうとするが、アレンがそれさえも容易に跳ね返し、首めがけて剣を一閃すると、首は綺麗に胴体から離れて地面に落ちて行った。


ついに10階層に到達した。


ボス部屋の様で、扉をゆっくりドリスが開けるとそこには通常の赤龍より1、5倍ほどの大きさの赤龍が唸り声をあげてドリス達を見下ろして居る。


銀龍がハヤトの肩から飛び出して、赤龍と同じ程度に変化し、およそ30メートルを超える大きさになって翼をバタつかせ赤龍と向かい合った。


赤龍が何やら龍語で叫んで居る。


銀龍も龍語で嘯きながら返答を返している。


赤龍は口に灼熱の息吹を貯め始め銀龍に向かって放とうとして居るが、それよりも早く銀龍は口を開けて”炎の咆哮”を放った。


「ギャアアア・・・!」赤龍の体が炎に包まれて溶けていく。


残ったのは赤龍の魔石と骨と尻尾の一部が皮膚ごと残ったが、他は全て溶けて骨だけになって居る。


脇にダンジョンコアと宝箱が置かれて居るのでハヤトは罠を【サーチ】しながら慎重に開けると、箱には『闇魔法全書』と古代文字で書かれた本が出て来た。


ハヤトはあまり闇魔法は使わないが今後魔王達と戦うときに相手の魔法を熟知して居る方が有利だし、しっかりマスターしておくのもいいので【次元収納ボックス】に入れて、転移盤に皆で乗り入って来た1階層に戻って出て来た。


『万能乗用車』に乗って冒険者ギルドの素材置き場に先ず討伐した魔物達を置いて食堂で5人で待つこと30分ほど、納品書が出来上がったので受付嬢に”幻のダンジョン”制覇の証としてダンジョンコアを納品して納品書と冒険者カードを提出する。


受付嬢がダンジョン制覇と聞いて慌てて2階にダンジョンコアを持って上がり、ギルドマスターに報告しにいく。


数分して受付嬢とギルドマスターが降りて来て、ハヤト達に握手を求めてくる。


「初めまして、私はここアストリアのギルドマスターをして居るベルモンドと申します。以後お見知り置きください」


「初めまして、我々はブルネリア王国の冒険者ハヤトと妻のセリーヌにアレン、ドリス、ガードマンです」


「ブルネリア王国のハヤト様でいらっしゃいましたか?あなた様のお噂はここアルトリアの国まで聞こえて来てます。なるほど、その方達であれば”幻のダンジョン”制覇も納得できます」と言ってダンジョンコアを受付カウンターに持って行き、彼ら5人の冒険者カードとダンジョン制覇の清算金をくれた。


ハヤトは受付嬢に「すみません、僕のカードに入金してください」と言って白金35枚金貨78枚銀貨65枚、銅貨90枚をハヤトのカードに入れてもらった。


「セリーヌ、この後王都の方にいく?それとももう一つのダンジョンを制覇してみる?」


「宿を2泊予約して居るので戻って明日早朝からもう一つのダンジョンを制覇してから王都を目指しませんか?」


「そうだね、せっかくもう1泊残って居るから明日の早朝から行って、そのあとに王都に向かおう」そう言ってハヤト達は宿に戻って行った。


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